【編集部より】

 本日より隔週火曜日で掲載となる新コラム「投資家Sの注目銘柄」。
 そのリサーチ姿勢に感動し、お願いして掲載となりました。
 エッセンスをお楽しみください。


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 皆様こんにちは、投資家Sと申します。
 本日から億の近道火曜版に、「投資家Sの今週の注目銘柄」を掲載させて頂く事になりました。本連載は、投資日報社が毎週月曜日に発行を行っております、”週刊投資日報 金融版”に掲載しております。
 今回は、2020年12月に掲載を行った、2銘柄について取り上げさせて頂きます。


■エレコム【6750】


 PC周辺機器のファブレスメーカーとなるエレコム【6750】は1986年に設立。2006年にジャスダック市場に上場。2013年から東証1部に上場している。

 この企業の魅力を一言で表すと” 安定した成長 “となる。

 手ごろな価格帯のPC周辺機器や、体重計などの生活関連用、テレビチューナーの販売も行っており、筆者の周りにもエレコム製品が溢れている。
 同社の商品は、価格に見合った耐久性となっており、2年程度使っていると、壊れる事も珍しく無いが、その時には後継の新製品が発売されている為、壊れたら次の新しい商品が欲しくなるという、好循環を生んでいる。

 ところで、来年の金融市場におけるテーマの一つは「ドル安・円高」の流れとなると考えており、ここ最近は“円高メリット”銘柄を探していた。いくつか候補はあったが、コロナ禍でも堅調に業績を伸ばしてきた、エレコムを取り上げる事とした。
 先日発売となった、会社四季報2021新春号記載の数値によると、エレコムの今期想定為替レートは106.50円となっており、現状の103円台前半の水準よりも、約3円の円安水準で設定している。同社は、“円高メリット銘柄”となる為、ドル円レートが1円円高に振れると、2億円の増益に繋がる事となる。
 単純に考えても、下期103円でドル円の手当てが出来れば、(7億円×3.50円)÷2(下期分)=3.5億円の増益効果が生まれる事となる。同社は、中間期に業績予想の変更を行っていない為、直近の円高による増益幅は、今期予想経常利益142億円の2.5%に相当する。

 ここまでの想定は、現状の為替水準での控え目な業績インパクトとなっているが、筆者の見立てでは、来年は1$=100円を優に割り込む場面が訪れると考えており、1$=100円の前提でエレコムの為替差益を考えれば、今期程度の売上で13億円の増益効果がある。という事は、来期の売上高が大幅に伸びなくても、“円高”によって、約9%の増益が見込める事となり、過去最高益更新が見えて来る事となる。

 現在の株価水準は、5,000円処での一進一退の値動きとなっているが、円高を懸念して、日経平均株価を大きく下落する局面が、年始に訪れた場合には、円高メリット銘柄となる、エレコムの仕込み場面到来になると想定している。
 また同社は、株主優待も充実。年2回(3月・9月)の株主優待が実施されている。来年3月末の権利では、複数ある同社製品の中から好きな商品を選ぶ事が出来る、“自社カタログギフト”的な優待が行われる予定となっている。
 優待投資家の筆者は、エレコムの優待を毎年楽しみにしており、新製品が年を追う毎に増えている。

 「安定成長」・「円高メリット」・「株主優待」の3つが揃ったエレコムは、令和3年も注目銘柄となりそうである。

(投資日報金融版 2020年12月21日号 掲載)



■ウエルスナビ【7342】


 資産運用を全自動化したロボアドバイザーサービスの提供を生業とする【7342】ウェルスナビは2015年に設立、2020年12月22日(火)にマザーズ市場に上場。
 簡潔に同社の事業を表すと、「資産運用の大衆化」。同社が上場時に公表した資料では、国内の個人金融資産は未だに預貯金が52.8%。その高い預貯金比率が、今後10年間でドイツ並みとなる41%まで低下すると、78兆円の資金が金融市場に流れ込み、この内の20~30%が長期投資に配分されると同社は仮定。この仮定から導き出される市場規模は16~23兆円。この大市場を相手に事業を行っている。

 同社が提供しているロボアドバイザーサービスは、年間1%の手数料で分散投資を行えるサービス。将来的に資産運用はしてみたいが、知識や経験の無さから中々踏み出せない初心者層には、優れたサービスであると言える。
 ただ同社資料を読む限りは、顧客が投資するポートフォリオの「中身」は、主に海外に上場されているETF(上場投資信託)に過ぎない。従って、ウェルスナビを利用せずとも、この手の金融商品はネット証券で直接購入が出来る。
 実際そうした方が無駄なコストも掛からずパフォーマンスは上がる-というロジックに帰結するのだが、これは投資や運用、金融商品に明るくないと出来ない。
 むしろETFの存在を知らない人達の方が一般的なのだ。

 逆に考えると、この“知らない人達”こそウェルスナビが対象としている顧客と言える。それは2019年に話題となった「老後2,000万円問題」で、定年後の生活資金が足りないと気付いた、現役20~40代の勤労者層で、仕事もプライベートも忙しい現役世代にとっては、年1%の運用報酬はさほど高く無いと思われる。
 同社が掲げている、「長期・積立・分散」の資産運用は、運用の世界では王道思考であり、預貯金として銀行に寝かせて置くより有意義なお金の使い方。

 時代のニーズを読んだサービスを提供している同社の業績は、2020年12月期の売上予想が、前年比56.1%増の24.2億円となっており、高成長を続けている。

 では、同社株はまだまだ上がるのかと言われると、そこにはバリエーション=価値が重要となってくる。筆者の計算では、現在の1,100億円を超える時価総額は、相当なプレミアムが乗っており、年30%成長を5期連続で続けて、ようやく見合う株価となっている。
 現在のウェルスナビの価格を形成している投資家層は、「短期・専業・集中投資のトレーダー層」が主体と推測。つまり同社がターゲットとする投資家層とは、真逆の投資家達による売買が中心になっていると思われる。

 10年後の2030年にどちらのパフォーマンスが良いのかは、ウェルスナビのロボアドバイザーに聞いても恐らく分かるまい。


 なお今回は、同社の企業価値を算出した動画を「投資日報公式YouTubeチャンネル」で公開しているので、そちらも合わせてご覧頂きたい。
 https://youtu.be/2Zi1ry1jLP4

(投資日報金融版 2020年12月28日号 掲載)


(投資家S)


[プロフィール]

 職業 投資系出版社 役員
 大学卒業後、2004年から証券会社にてFXの仕事に従事。
 以後、14年間に渡り、営業・企画・トレーディングの最前線で活躍。
 リーマン・ショック・ユーロ危機・Brexit等々の並居る大相場の中、裏方として市場の最前線で指揮を取り、FXの表も裏も知り尽くす。
 2018年秋、11年間勤めた証券会社を退社して、暗号資産(仮想通貨)の交換業者との立ち上げメンバーに加わる。
 2020年5月に、相場道を究める為に同社を退職。個人投資家として株式投資を行いながら、投資に掛ける時間が限られる兼業投資家の方に有益な情報を届ける為、株式について日夜分析を行っている。
 日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト(CMTA)
 相場に対するモットーは、「利食いたくなったら乗せろ」


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