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相川伸夫の丸順IRセミナー報告&追加情報補足+ロンシール工業取材報告

2020/12/10 12:22 投稿

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■相川伸夫ピックアップ銘柄フォロー
 ※12月4日(金)執筆時点

・山王(3441)2016年12月19日配信
 株価560円⇒1501円(+168%)
・テノックス(1905)17年2月20日配信
 株価815円⇒836円(+3%)
・特殊電極(3437)17年6月12日配信
 株価1461円⇒2039円(+40%)
・東北特殊鋼(5484)17年9月4日配信
 株価1831円⇒1465円(-20%)
・新報国製鉄(5542)17年10月2日配信
 株価1577円⇒871円(-45%)
・パウダーテック(5695)18年2月19日配信
 株価4845円⇒2865円(-41%)
・東京エレクトロンデバイス(2760)18年4月6日配信
 株価1970円⇒3265円(+66%)
・アバント(3836)18年6月25日配信
 株価473円⇒1125円(+138%)
・神戸天然物化学(6568)18年8月13日配信
 株価2718円⇒1698円(-38%)
・丸順(3422)18年9月18日配信
 株価826円⇒888円(+8%)
・クロスフォー(7810)18年10月9日配信
 株価421円⇒281円(-33%)
・カンロ(2216)19年11月5日配信
 株価1665円⇒1550円(-7%)
・ロンシール工業(4224)20年4月24日配信
 株価1758円⇒1539円(―12%)
・中央自動車工業(8117)20年10月9日配信
 株価2020円⇒2285円(+13%)

※ピックアップ銘柄は買い推奨ではありません。
 私の目で面白い、アツイ要素がある!という理由で記事を執筆した企業の経過観察です。
 執筆から3年程度は継続ウォッチしていきたいと考えていますので、銘柄は今後さらに増える見込みです。また、銘柄には大化け狙いと堅実成長狙いの銘柄が混じっています。


●丸順IRセミナー報告


 先日11月7日に弊社リンクスリサーチと億の近道、個人投資家アイルさん共催で丸順の長時間IRセミナー(質疑含め3時間の長尺)を開催させて頂きました。参加者は80名以上で質疑応答は42問までで時間切れになる等お世辞抜きで大盛況の運びとなりました。

 当日セミナー動画は下記URLから視聴できます。
 ・丸順(3422)個人投資家向けIRセミナー+製品サンプル説明
  2020年11月7日開催
  https://youtu.be/CCNZxKztwcg
 当日の説明資料もYouTubeの概要欄から観ることが可能です。

 今回の丸順の個人投資家向けIRセミナー資料はこれまでとは全く異なる点が多く存在しています。

【これまでの資料との変化点】

 1)金型製造について『整備まで請負』も含め詳細な説明が追加
 2)中長期5か年ビジョンでの要の戦略事業の中身の数字を開示(3年平均で20%以上の成長率)
 3)有利子負債の数値計画の開示
 4)次期中長期へ向けた取組みの開示(水島拠点は出るのは決定で出方を検討中、トヨタ向けの受注拡大模索、世界2位の旧パナとの取引だけではなく世界1位のCATLへの受注獲得に向けた試作品納入の動き)
 5)配当は原則毎年増配していく事を約束

 私の執筆した企業レポートと企業との対話によってIR体制にも変化を引き起こせたことを嬉しく思います。

11月7日のIRセミナーでのアンケートは次の通りです

【アンケート概要】
 ・丸順株主の参加は32%、68%が丸順の株を購入歴無しの参加
 ・事業内容及び将来戦略を理解出来たのは98%以上
 ・将来性を感じた投資家は88%以上
という結果になりました。

 会場で感じた意外にも参加者の食い付いた部分はホットスタンプの環境負荷の高さ(CO2や熱エネルギー)についてでした。冷間スタンプの方がコストも環境負荷も少ない3分の1以下という点(2000度まで熱して製鉄した鉄板を成形する為にまた900度まで熱する無駄)でした。
 グローバル車種に関しては超ハイテンの鋼材そのものが海外では手に入らなかったり、金型の製造そのものであったり量産品質を叶えられないことからホットスタンプが発達してきました。しかし、日本の軽自動車のようにガラパゴスな市場においては冷間プレスができるなら高コストで高環境負荷のホットスタンプは好まれません。トヨタのカムリからはホットスタンプ⇒冷間プレスへの回帰した部品を丸順が受注しています。

 齊藤社長の経営方針は過去の反省を踏まえた『堅実経営』だと感じています。
 業績予想についても「下方修正をして株主に迷惑を掛けないようにストレスを掛けている」という発言がIRセミナーでは何回か出てきました。
 『脱エンジン、EV加速』が中国だけではなく欧州でも、米国でも、ついには日本でも加速する見通しになってきました。

 丸順にとってEV化の加速は追い風そのものと言って良いでしょう。
 トヨタハイブリッドやマツダに向けて使用されるバッテリーモジュールはGSユアサ経由と旧パナ経由で納入していきます。今後、このバッテリーモジュールが標準仕様になればHVではなくEVになった場合にはHVの時と比較して1台当たりの売上は数倍になることも期待できますし、さらなる超ハイテン化やバッテリ―ケース等の納入も加速が期待できます。

 これからが一番面白くなってくるタイミングだと私は期待しています。


●追加情報補足

・11月30日にユニプレス株式会社のIRにて
1.5GPa級超ハイテン材車体骨格部品の量産化に成功―日産として初の採用、新型「ノート」に搭載ー
https://www.unipres.co.jp/asset/51279/view

 丸順がホンダに納めている1180MPaの超ハイテン材と言えばN-Boxの準外板センターピラーが代表格ですが、このIRを詳しくない人が見るとユニプレスに先を越されたように感じる方も居るかと思います。これについて私なりの補足をさせて頂きます。
 結論から先に申し上げると、あまり関係ないかと考えます。むしろ超ハイテンで冷間プレス加工が加速しているのでこれは丸順にとっても良い風だと感じます。

 まず、丸順に確認したところ1.5GPaの金型製造については丸順で受注していないとの回答でした。それ以外の超ハイテン骨格部品では金型受注している事をIRに確認できました。
 丸順は試作品として1470MPaセンターピラー金型は2年前の時点ですでに完成させていましたが、未だ実車採用に至っていない理由は『遅れ破壊』懸念です。
 日産向けが主であるユニプレスが1.5GPaをクリアできたとの発表ですが、部材名は『セカンドクロスレインフォース』とあります。形状などの発表も無いので一概には言えませんがおそらくはフロア下に使われる筋交い(クロス)補強材(レインフォース)ではないか?と思われます。
 複雑な形状ではないでしょうが、ホットスタンプではなく冷間プレスでこの強度の物を採用されたことは業界の流れとして丸順にもプラスに感じました。
 丸順が世界初の1180MPaセンターピラー(外板)として新型N-Boxへの採用IRをした時には発表の時期こそズレていましたが日本製鉄からもホンダからも技術アピールとしてIRが出されています。
 もし、今回のユニプレスの超ハイテンが日本製鉄等での新開発超ハイテンであれば今後IRがどこかで出てくるかと思います(現状はそうした発表は見当たらない)。遅れ破壊懸念をクリアできる超ハイテンならば製鉄企業としても受注拡大の好機ですので何か動きがあるでしょう。もし、動きが無ければ既存の超ハイテンで形状が複雑ではない骨格部品であろう推測します。

―ワンポイント―

 補足しておきたい大事なところとして『1470Mpaなど高強度の冷間プレス金型を丸順以外の企業が製造することができない』というのは間違った解釈です。
 【利益が出せない】というのが実情で【作れない】とはイコールにはなりません。
 現在進行形で超ハイテン採用の記事を目にする機会が増加しています。
 その際にはどこの部材に冷間プレスで1180Mpa以上の超ハイテンが使われているのか?という点をよくご確認ください。
 単純な形状(3次元の大きな曲げや絞りの有無)であればホットスタンプ同等の1470Mpaでの成形も比較的簡単です。丸順が量産しているN-Boxの1180MPa準外板センターピラーは複雑な3次元形状であり、金型製造難易度も高いですが、量産で品質管理できるところもかなりの能力だと思います。ミルシート(鋼材検査表)で材料の伸びに合わせて2型で回してやっと品質が出せる(不良率が高いと金を捨てるだけの行為)訳ですね。
 出来る事と、それで儲けられるかは全く別次元の話です。
 ここら辺については私のレポートでも色々と書かせて頂きました。興味があれば読んで頂ければと思います。

 やっと私が初めて丸順を億の近道で取り上げた時の株価まで戻ってきましたがあの時よりもかなり状況が良くなっているにも関わらずこの株価位置というのは内心複雑そのものです(苦笑)。
 製造業を触る投資家が少ないのが淋しい限りですが、私は今後も変わらず応援していきます。


◆ロンシール工業(4224)取材報告


 コロナで相場が暴落した後の反発すぐの2020年4月27日配信時に取り上げたロンシール工業についても取材ができましたので続報です。

 最初のピックアップ記事はこちらになります。
相川伸夫のコロナ相場見通し&ピックアップ ロンシール工業(4224)
 http://okuchika.net/?eid=9152

 丸順のIRセミナーであったり中央自動車工業のピックアップ記事掲載であったりとロンシール工業について執筆するのが遅れてしまい申し訳ありませんでした。
 ロンシール工業には専任IRはおらず総務部での対応になるのですが、テレワークに伴う人の異動や目まぐるしく変わるコロナ対応によって中々取材は実現せず、やっと10月にZOOM取材で行うことができました。
 なので、少し古い情報にはなりますがロンシール工業自体の情報がほとんど無いので中々に貴重な情報になるかもしれませんね!

 ロンシール工業は日本で初めて塩化ビニールの製造をした企業(当時外国からの舶来品)です。
 事業として一番最初に始めたのはレインコートやサンダル製造で、塩ビの耐久性や対候性が良いということが分かってきてからは内装の床材に着手。今では学校や病院、工場や公共施設、新幹線や民間施設の床材に使われています。当時は塩ビはロンシール工業のみが製造していたのでシェア100%だったのですが、競合企業の参入や塩ビ以外の床材の誕生も進んでいきました。
 その結果、現在のロンシール工業の建築物における塩ビ床材でのシェアは10~15%程度とのことです。
 ザックリのイメージとして、ロンシール工業の売上の約7割程度が建築資材向けの塩化ビニール製品の売上であり、床材は新築工事向けが多く、別部門の防水床材は改修工事向け(主に屋上など)、他にもハウスメーカー向けの壁紙などもあります。壁紙に関しては大手問屋であるサンゲツやリリカラを通じて販売されており、ユーザーからはロンシール工業の存在を知ることは中々無い裏方企業です。
※ちなみに上記二社は有価証券報告書の株式の持ち合いにおいて取引関係があることが明記されています。

 私の前回の記事で「2013年から粗利益が上がっているのは、抗ウイルス機能が付加されたことで製品売価を上げれたのではないか!?」という見立てを持っていたのですが、こちらに関しては粗利益向上の主要因ではなく、セールスミックスの良化とコスト改善+原材料のナフサの価格の影響が大きいとの回答を頂きました。
 事業PFとしては官公庁向けの物件(学校・役所・病院など)の方が民間向けよりは多めであり、商品の販売方式に関しては直販も商社経由も様々な展開の仕方をしているとのことです。
 私が着目した抗ウイルス製品についてはSARSコロナをきっかけに開発が始まり、今では病院でもその実績からロンシール工業が選ばれています。ロンシール工業は現在創業93年目であり、100年目には抗ウイルス製品を主力級にまで引き上げたいという考えで商品開発とPRを進めているそうです。
 コロナ禍で抗ウイルス製品の需要が爆発すると共にスプレータイプなどの簡単に施工できるものが注目されました。
 ロンシール工業のIR担当いわく「他社様の製品に関しては詳細が分からないとはいえ、一般的にはスプレーは表面だけ抗ウイルス作用をもたらすだけだから剥がれたらそこで抗ウイルス作用が落ちると考えられる。しかし、弊社の製品に関しては材料に練り込んでいるから表面がすり減ろうが中も抗ウイルス作用があるので耐久性に富んでいる。病院や救急車、バスの床材や新幹線や山手線などでの実績でも自信はある。現状でも問い合わせは増えているので期待はしている」とのお話もありました。
 同社の強みは品質と技術力にあるとのことで、車両用の床材について約3mの横幅に対して25mほどの1枚物での製品を作れる企業はそんなにいないとのことでした。

 市場におけるベンチマークをピラミッドで表すとロンシール工業の製品は上位の高品質・高価格帯のポジションに位置しています。壁紙においてはユーザーの需要に合わせて低~高までのラインナップをそろえています。

 防水事業ではビルの屋上であったり、学校や屋上などの人が歩ける場所の雨ざらしの陸屋根に使う塩ビの防水を売っています。陸屋根の施工には同社のシート防水以外にもアスファルト防水やウレタン塗膜防水であったりと色々なものがあります。
 その中で同社の塩ビ防水が改修工事に選ばれるのは、音や臭いも出さない事で工事がしやすく対候性がよく、施工性の高さで選ばれていると伺いました。物件の改修工事で使われる特性から防水事業の売上は安定しているとのこと。ロンプルーフ防水事業組合を組織しており、業界のシェアは競合と1位と2位で拮抗状態です。

 取材の最後に「投資家に対して何かメッセージはありますか?」という質問には「長い目で見てもらえれば成長できる企業で、安定配当で還元していく」との回答でした。

 バリュー銘柄でありつつも期待できる部分もある企業ですので、これからも継続ウォッチしていきます。


 それではまた。


『全力全開全力前進!!!』


(相川伸夫)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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