産業新潮
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10月号連載記事
■その6 資本主義と自由と民主主義
●共産主義は終わったのでは無かったのか?
1989年、べルリンの壁が打ち壊される映像は世界中に配信され多くの人々の脳裏に焼き付いた。それまで「冷戦」が続き、東西両陣営のどちらが先に核ミサイルのボタンを押すのか、戦々恐々としていた世界中の多くの人々にとってそれは朗報でもあった。また1991年のソ連邦の崩壊で共産主義陣営の敗北が明らかとなった。
しかしソ連邦はロシアとなり存続(普通選挙が行われているが)しているし、中国も共産党一党独裁のまま経済的な成長を遂げた。その他にも、ベトナムをはじめ共産主義独裁国家はまだまだたくさん存在する。
それはなぜか?
一つには、(共産主義一党独裁の指導による)いわゆる計画経済を捨て、「市場経済」を受け入れたからである。特に客家(はっか)の鄧小平が推進した「改革・解放」という大胆な市場化は中国を大繁栄に導いた。
しかし、習近平によって鄧小平以前、つまり毛沢東時代への回帰が行われたことによって、「中国の時代」は終わった。トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争は、共産主義中国衰退のきっかけにしか過ぎない。
ロシアでも、ゴルバチョフが始め西欧諸国から絶賛された「ペレストロイカ」が失敗し、それがソ連邦崩壊の原因の一つにもなっている。また、その後のロシア経済は名目上市場化されたとはいえ、政府の介入が激しくあまり発展していない。収入の大半を原油などの資源に頼っている産油国のままである。
確かにベルリンの壁崩壊から30年以上経過しても共産主義国家は生き残っているが、それは見せかけの「自由化」でごまかしているに過ぎない。
●市場が機能するのなら共産党は必要ない
ペレストロイカや改革・解放がまさに「革命」であったのは、市場化というものが共産主義や共産党を否定するからである。バリの民衆がフランス革命で「これから私たちが国を治めるからもうあなた達は必要無い」と言って国王たちの首をはねるのと同じである。だから、共産党員たちは、自分たちの首がはねられないように国民を強権で監視・弾圧しながら市場化を進めざるを得ない。
しばらくはそのような矛盾に満ちた行為も機能するように見える。共産主義中国の発展がその好例だが、いずれは壁にぶつかる。市場化で経済が発展するのなら、共産党の一党独裁で苦しめられる必要がどこにある?と、中国人民が考え始めるからである。
そして、二者択一を迫られた共産党は、自国の繁栄と人民の幸福を捨て、一党独裁の甘い汁を吸うことを選ぶ。それが現在習近平政権で起こっていることであり、それほど遠くない将来に、改革・解放前の北朝鮮よりも貧しい国に戻るであろう。
●資本主義は勝者か
英国の宰相ウィンストン・チャーチルは「民主主義は最低の仕組みだが、これまでの歴史でそれを上回るシステムが生まれたことが無い」という皮肉を述べている。私も全く同感だ。
民主主義と資本主義は密接に結びついている(私有財産の保障が民主主義の基盤)が、「強いものが弱いものを押しのけて成りあがる」資本主義が「理想的」だと考える人はほとんどいないであろう。
しかし、チャールズ・ダーウィンの「進化論」に戻るまでも無く、生物は「適者生存」の原理によって、勝者と敗者がはっきり決められるからこそ進化を遂げ、人類はその頂点(過大評価かも知れないが・・・)に立つ。そして、
現在の社会に生きるすべての人々(先祖)が「適者生存」したからこそ生存しているのだ。だから、資本主義的競争(適者者生存)は、人類発展のための基本原理である。
(続く)
続きは「産業新潮」
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10月号をご参照ください。
(大原 浩)
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