日本にあって世界を見据えたビジネス展開を推進する企業は数多い。
コロナ禍で世界中でグローバル化が停滞する状況下で、敢えて一段と推進しようとする動きが日本の中で見出せる。
今年で創業110周年を迎えた日本を代表する優良企業、日立だ。
同社の歴史は日本経済の発展とともにある。
かつては重電の日立として知られた同社が総合電機メーカーに転身しこのところはエネルギーインフラ企業として歩みを続ける。
同社は7月2日に世界ナンバー1の送配電プロダクトサービスを展開する英国ABB社からパワーグリッド事業を買収(80%の株式を取得)し、新たに日立ABBパワーグリッド社を設立したことを表明した。
同社の説明では「これによって真のグローバル企業への変革を加速する」というのだから同社の社歴の中の一大イベントとなることは想像に難くない。
再生エネルギーの拡大も含めて分散化する電気エネルギーを効率よく末端に送配電するかは今後の大きなテーマである。
電源が多様化する中でその電源を良く知る日立が狙う戦略の中で不可欠なビジネスがグリッドとなる。その有力な世界的企業をグループ内に取り込んで社内の構造改革を一気進めるとの戦略をコロナ禍で具現化したことに驚きを感じる。
さすがに日立。なかなかやるじゃない。確かにインスパイヤしている。などいろいろな評価が出てきそうだが、これだけの買い物をする訳ですからお金の問題もある。
東芝のような失敗は許されない。
買収金額は80%で7400億円。コロナ禍で業績が悪化する中で、どうやって確保するのかとの疑問は既にグループ内の有力ケミカル会社である日立化成を昭和電工に売却し準備万端。事業価値が1.18兆円とされるABBパワーグリッドを取り込んだメリットの方が大きいとの見方もできる。
初年度はまだスタンドアローンの状況だが、2024年にはシナジー効果を拡大させ買収時の企業価値を2倍(2.4兆円)にするとの見方をオンライン説明会では質問者に答えていた。
コロナ禍での英断、思い切ったグローバル化推進の施策が吉と出るか凶と出るか。それは未来において明らかになる。呼び込んだ東原社長は敢えて英国ABBを黒船に喩え、黒船来航を呼び込んだとしている。
英国企業のM&Aという話ではソフトバンクグループ(9984)によるアーム社買収の事例があるが、その際の買収価格は2兆円だったと記憶しているが、その半分の金額で買収したABBパワーグリッドの財務内容は7月30日に予定している第1四半期決算の発表時に明らかになる。
日立の時価総額は現在、3.4兆円。投資事業の失敗で大幅赤字に転落したソフトバンクグループの時価総額が13.5兆円。業種が違うため単純な比較はできないものの、少なくとも日立の時価総額には評価不足の感(あくまで個人的な意見)がある。
(炎)
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