投資家には様々なタイプがお見えになりますが、この億の近道の読者にも数多くのベテラン投資家が存在し経験に裏打ちされた運用に努めておられます。ベテラン投資家とは言え、山あり谷ありの株式相場の変動に時に戸惑い、時に思案を重ねながら中長期スタンスで取り組んでおられると思われます。
セミナーなどで縁あってご交流頂いたある読者の方もそうしたベテラン投資家の一人。
このところのコロナによる外出自粛で2か月余りお目にかかっておりませんが、先日メールでの連絡が入りました。私の中長期的な注目銘柄の一つに投資されていて、コロナクラッシュで大きくを値を下げているけどそろそろどうだろうかとの問い合わせであった。
私はその問いかけに素直にそのヒントとなる情報をお答えしたのだが、その問いかけのタイミングは絶妙なものとなった。
その銘柄は実を言うとリンクバル(6046・5月26日現在309円)。
昨年12月の中目黒でのオクチカ20周年イベントでお話させて頂いた際に同じマザーズ銘柄で業績好調なギフティ(4449・同1585円)との比較をした銘柄だ。
残念ながらコロナの影響もあり今期減益見通しの同社株の方が株価の戻りはやや鈍いのかも知れません。今期から来期にかけ業績拡大が見込まれるギフティの株価が比較的下値が堅く下げ始めの水準まであと一歩のところまで戻っている。
これについてはまた改めてコメントさせて頂きたいが本日はリンクバルの動きを追ってみたい。
今から5年前の2015年4月にマザーズ市場に上場したリンクバル(6046・公開価格2400円・6分割換算で400円)の株価は全体相場とともにこのところ上昇傾向を辿っている。
未婚の男女向けに街コンなどのイベント情報をECサイト上で提供してイベントに参加希望の登録者から参加費用を頂くというサービスを展開する同社は今回のコロナの影響を受けている企業の一つでもある。
同社の設立は2011年12月。東日本大震災後に元気のない世の中に元気を提供しようと少子高齢化社会の中で意義のある未婚男女の出会いの場を提供するというビジネスがメディアで有名となり一気に登録会員数(今期1Q現在195万人)が大きく増えたことでビジネスが本格化。現在はコト消費サービスの幅広い分野で成長を目指している。
実は同社の業績は上場直後の2015年9月期では売上高17億22百万円、経常利益2億82百万円だったが前9月期に売上高27億19百万円、経常利益10億28百万円となり4年で売上高が58%増となり、経常利益は3.6倍に拡大。つまり成長企業というイメージから株価も上場直後の安値から12倍にもなったという経緯がある。
2018年11月には株式を6分割したが、その後につけた高値が1765円である。
この高値時の時価総額は329億円となる。
その高値から株価は本年3月の安値154円(時価総額29億円)まで1年4カ月で11分の1にまで下落した。他の銘柄と同様に投げが出てしまい、多くの投資家は損切の憂き目にあったと推察される。
一方では新たな投資家の買いが入り154円の安値をつけたあとの急上昇時(200円から320円)では出来高が大きく膨らんだ。5月7日には333円までつけたが、特徴的なのは商いが極めて活発なこと。他の中小型銘柄と同様に戻り歩調が続くが、同社の場合は流動性が伴っており、一定のリズムで上げ下げを演じつつ徐々に上値を追っている状況が見られる。
今期の予想PERは25倍台、PBRも2.5倍台と特段割安感がある訳ではないが、この点からは敢えてこの株に興味を持つ必要はないのかも知れません。ただ筆者としては以下の理由でしばらく追ってみることにした。
【同社への注目点】
1.2018年高値1765円から3月安値154円まで1年4カ月にわたり下落して反転上昇の局面に入った。
2.自社主催のイベントではなく他社イベントのチケットのEコマースで身軽なビジネス。前期の売上高経常利益率38%、ROE36%の実績。
3.会員数(リンクID)195万人の経営資源を持つ。また年間イベント掲載数24万件、年間100万人のイベント参加者数。
4.会員の中心は20歳から39歳の独身男女。結婚後も会員として登録され趣味や体験、習い事、セミナー、旅行などのコト消費を促すことによるビジネスチャンスを取り込む。
5.新たな会員の年代として就活中の学生に加え40歳から50歳代も取り込む計画。
6.リアルなイベント参加が困難な状況下でオンライン化を推進。コロナ自粛期間中に新たにスタートしたオンラインビデオチャットサービス「VBAR(ブイバー)」には開始後の利用回数が1か月で5万回を突破した。
7.こうした新たなシステムはオンライン飲み会やオンラインヨガ教室などにも活用されているほか海外と日本をつなぐオンライン飲み会の開催(22日から28日)など先進的な試みが見られる。日本だけではなくグローバルな世界とのつながりがネット上で実現する仕組みを提供することでビジネスの広がりが感じられる。
8.今期の業績は成長に向けた先行費用(広告宣伝費や人件費などで通期6.7億円)の計上とコロナのもたらす影響もあって大幅な減益(経常利益5.3億円)が予想されるがそれぞれ一過性で中長期的な成長性について否定するものではない。コロナの影響を見ながら下期の成功費用を抑制する可能性も想定される。中間期(10-3月期)の経常利益2億83百万円は通期見通しに対する進捗率は53.7%となっている。
9.自粛期間に止まっていたイベントの開催情報も掲載され始めており下期は6-9月分の業績復元も想定されるほか新たなオンラインサービスも業績貢献が見込まれる。
10.社長の持ち株が59.1%(1154万株)を占めるオーナー経営。推定浮動株は社長の保有株や自己株(85万株)以外の株数711万株のうちの180万株(金額は5.6億円)にしか過ぎない。
11.4月20日の出来高445万株(株価レンジ253円~328円)を契機に比較的まとまった出来高が続くようになってきた。
3月の出来高合計312万株(154-281円)、4月1391万株(166-328円)、5月(26日まで)1114万株(250-333円)で浮動株が少ないにも関わらず活発な売り買いが見られ個人投資家の入れ替わりが起きているものと推察される。
12.保有キャッシュ22億円の無借金経営でオーナーは安定成長指向。前期末の従業員数は72名の少数精鋭。新規事業企画室を創設して新たなビジネス展開を模索し始めた。
13.相次ぐニュースリリースは低迷してきた株価や時価総額を意識したものと推察。
ベンチャー企業としての意識が強い同社は上場後5年を経過してもまだ無配を継続している。
このため配当金目当ての投資家にとっては投資の対象にならないかも知れませんが、以上のようなポイントを踏まえて同社の株価評価と変動に注目して頂きたい。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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