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ファンダメンタルズ分析入門(7)

2020/02/05 15:22 投稿

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※このコラムは、2005年10月11日に掲載されたものです。
 当時の経済的背景に基づいていますので、ご留意の上お読み下さい。


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★投資タイミングは決算発表後すぐにやってくる(その3)


 第3のカーブと第4のカーブは、業績や景気のピークアウトから、再度、ボトムをつけるまでの局面です。この局面の前半部分が第3のカーブです。ピークアウトから下降局面の途中までです。

この第3のカーブで起こることは、
(1)増益企業が一気に減益に転じてしまう
(2)減益になった企業はさらに減益率が悪化してしまう
(3)黒字化を果たした企業が赤字に転落してしまう
(4)赤字企業は赤字を拡大してしまう
散々なことが起こるのです。悲劇の連続です。

この右肩下がりの急カーブでは、キャッシュポジション・オンリーとするべきで、株という株はすべて売却して、現金のみのポジションが好ましい局面です。株価が急落するのはこんな局面です。もし、ピークアウトを経験して、業績が下降トレンド入りしてしまえば、将来の業績見通しがどんどん切り下がってしまいます。

この局面では、企業側は、業績の下方修正を連発します。PER10倍で安いと思っていた株が、下方修正に見舞われ、PER跳ね上がります。場合によってはPER30倍以上になってしまうのです。たとえば、3000円の価値があると自分で思い込んでいたものが1000円以下の価値にしか見えなくなる、そんな怖い局面です。バリエーション・トラップの犠牲者が続出する、悪夢のような時期なのです。ほとんどの投資家は茫然自失となります。

昨今は、空売りも容易にできますから、こういう局面では売りのポジションを持つことによって、相場の流れに乗って、大儲けすることもできます。そんな人はまだ少数ですが、きっちりと存在しています。

最後の第4のカーブは、業績下降の途中からボトムまでの局面です。
ここで生じる業績の変化は
(1)減益基調が続いているものの、減益率が縮小している
(2)赤字拡大は続いているが、赤字の拡大に歯止めがかかりそうである
(3)「半年先や一年先は業績は回復するかもしれない」と企業が言い始める
ということです。最悪期をこれから迎えるフェーズとしては、明るい材料も期待できる局面なのです。

第4のカーブ(減益だが減益率は改善の展開)で起こることは、「きっかけ待ち」です。株価は安くなっています。でも、上がるきっかけがすぐには見当たらない。業績はよくなる可能性を示唆されても、実際の業績は尚ボトムアウトしていない。でも、この段階で、さらに株価が安くなる企業があれば、絶好の「拾い場」(バーゲンセールのような安い価格で株を買える局面)となります。

「麦藁帽子は冬に買え」という相場の格言があります。これは、いまとりあえず人気のないもの(=冬の麦藁帽子)は、不人気がゆえに安く手に入る。だから、人気が出てくる夏に買うよりも、人気のない時期に買う方が賢いという意味です。状態の悪い企業をあえて状態の悪いときに買えという意味なのです。
その格言が生きるのが、第4のカーブです。ここでは、買いたい銘柄のリストをつくって準備をしておく時期です。そして、じっくりと買うタイミングを伺う局面なのです。

90年に土地バブルが崩壊してから、本格的なデフレの時代に突入しました。
全国の地価はまだ下がり続けています。しかし、不動産関連株は、2003年に地価の再度の上昇を待たずに底打ちしました。そして、都心の地価が上がったことを確認すると、不動産株はその後一気に上昇基調に入りました。このように、減益傾向は続いていても、減益率が縮小すれば、投資家にとってはそれは悪いニュースではないのです。たとえ減益であっても、よいニュースとなるのです。減益企業が増益に転じ、さらに増益率が拡大する局面は、第4と第1のカーブです。第4のカーブのできるだけ最後のボトムで買うか、あるいは、第1のカーブに入ったことを確認してから買うかは難しいところです。
ですが、わたしは、株価が相当落ちていて、PBRという後ほど説明するバリエーション指標が1倍を大きく割り込んでいるならば、第4のカーブでも買いに行きます。第4のカーブで買えるようになれば、株は覚えたも同然です。
ところが、普通は、第1のカーブの初期段階で買うこともなかなかできないものです。なぜならば、第3や第4のカーブを経てきて、第1のカーブにすでに入っていても、世間のその会社に対する評価は著しく低いのです。
「あの会社、増益を予想してきた。ああ、また嘘いってらー」と市場から相手にされません。ただし、あきらかな循環株、たとえば、シリコンサイクルに連動する半導体製造装置株などは、この4つのカーブの鉄則をアナリストも投資家もよく知っていて、ベテラン営業マンがしたり顔で自慢するような株なのです。

「株っていうのは、PERが高いときにあえて買うもんだよ」と。

「麦藁帽子は冬に買え」という格言は、カタリストを無視して、株価が一番安いときに買えという意味です。カタリストとは、株価が再評価されるような材料やニュースのことをいいます。第4のカーブは減益基調の真っ只中です。
これまで、悪いニュースばかりがあって、投資家がその株にうんざりしている局面です。こんなとき、相場関係者は、この企業は、「株価は安いが、カタリストがない」と表現します。カタリストがないとは、「すぐには上がりそうなニュースがない」という意味です。

これが株の難しいところですが、仮にカタリストがあるのであれば、株価は安値で放置されるはずがありません。しかし、株は安値で放置されている。それはカタリストがないためです。考えてみれば、当たり前のことです。「カタリストがない」ということと「株が安い」ということは同じ現象を言い表しているのです。カタリストがあろうがなかろうが、「株がとにかく安い」ということが投資家には重要なポイントです。

第3のカーブから第4のカーブの間は、基本的には減益関連のニュースが多発します。
そして第1のカーブから第2のカーブの間は、基本的には増益関連のニュースが期待できます。
市場関係者は、このことを「ごきぶりを一匹見かけたら、何十匹が隠れている」といいます。悪いニュースを最初に聞いたら、その後、またか、またか、というように次々と悪いニュースが訪れる傾向があるのです。大切なのは、最初の悪いニュースで売り、最初のよいニュースで買うということです。

第4のカーブ 結論: マイナス幅が縮小すると株価は反転する傾向にある
重要:モメンタムが改善しているかどうかが投資判断の材料となる

循環論の結論:
第1のカーブ:買い
第2のカーブ:売り
第3のカーブ:売り
第4のカーブ:買い
第2のカーブと第4のカーブの判断が難しいのです。

まとめ:増収か減収かよりも、増益率が改善しているか、減益率が改善しているかで投資のタイミングを計る。

例: 前年 実績営業利益 +30% y-y
   今年 営業利益予想 +10% y-y 
→第2のカーブ=モメンタム悪化=売り

例: 前年 30%減 y-y 今年 10%減の予想ならモメンタムは改善。
→第4のカーブ=買い

業績は循環します。循環を4つの局面にわけて説明しました。
自然の営みは、夜が来て朝が来て昼が来て夕方がくる、という循環です。
または、春夏秋冬という循環もあります。潮の満ち引きも循環です。
企業は人からなる組織です。組織にも循環があるかどうかは議論の分かれるところです。
どんな人間にも意識を高く持てる時期とそうではない時期があります。

人を財産とする企業は、やはり循環の上に成り立っている面があります。
まず、企業業績は景気循環の影響を受けます。
そして、経営者のやる気も変化していきます。
これをシステムとしてみれば、「フィードバックが働く」といいます。
フィードバックとは、好ましくない状態を好ましい状態に戻すために、修正をかけることです。

たとえば、赤字になった企業は、リストラをします。
そして、リストラをすれば固定費が下がり、ちょっとした外部環境の好転で利益が出るようになります。フィードバックが機能する場合で、これも一種の循環です。
また、儲かって儲かって仕方がないという企業には、必ずライバルが現れます。
競争がなかったため、儲かっていたのが、競争が激化することで儲からなくなります。これも循環です。
順調に業績を拡大している企業は、得た資金でさらに拡大路線に走る傾向があります。業績のピークに過大な設備投資をして、長い冬を迎える企業も多数あります。これも循環といえるでしょう。

ですから、投資タイミングを循環と結びつけるのは必然性があるとわたしは考えています。盛者必衰といいます。
逆にいえば、フィードバックがかからない会社や社会は暴走の結果、破滅に至るはずです。もし仮に増益率が鈍化しないような企業があったとすれば有限の資源しかないこの地球はどうなるのでしょうか。企業の暴走を許せばいつの日か、世界が消滅するような大惨事になるでしょう。

大きな循環の中に小さな循環があります。春夏秋冬の大きな循環に朝夕という小さな循環があります。しかし、よく見れば夏の夜は短く、冬の夜は長い。短い夜を夏というのであれば、短い夜を一日だけ取り出して、今日は夏だということが主張できます。そういう関係をフラクタルといいます。
株式市場には多くのフラクタル的な関係が混在しています。たとえば、長期と短期の業績判断がずれることです。長期とは、短期を複数並べてみたのです。
ですから、本来は、短期の「買い」の積み上げは、長期の「買い」となるべきなのです。
しかし、市場参加者の多くは、逃げのために、短期と長期を使い分けているのです。買いと思っていたのに短期的に下がると、「長期では買い」だというのです。長期の判断は、株価が外れたときの言い訳に成り下がってしまうのです。

短期が「売り」であれば、長期的にも「買い」である確率は低下すると考えるべきです。夜が短いのに冬だといっているのと同じなのです。
本来、投資は効率よく行うべきものです。麦藁帽子を夏に衝動買いしてしまった人は、どんなに強弁しても、投資の世界では「負け」なのです。同様に短期の株価を外す人は、長期の株価も外れる人だということです。

業績動向を循環論で4つの局面で定義するのは簡単です。
しかし、実際は、企業業績がどの局面にあるかを特定することさえ、難しいのです。
回復局面が長く、後退局面が短い企業も存在します。
企業によっては、10年増益を続ける企業もあれば、1年ごとに増益と減益と繰り返すような企業もあります。
循環の局面は、時間割ではありません。バスケットやサッカーのように前半や後半に時間で仕切られているわけではありません。むしろ、野球のように点が入れば試合時間が理論上永遠に続くようなイメージです。
できれば、業績のピークアウト感の出てこない企業を買うべきです。じわじわと業績が拡大をして余力がある。そういう企業は好かれます。そして長期保有の対象になります。
一方で、収益動向が定まらない企業は、トレーディングには向いていますが、長期の保有対象としては向かないのです。

(山本潤)

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)

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