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株の玉手箱 1000の用途をもつ粘土

2019/11/29 13:08 投稿

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 小学校低学年の頃、広場で友達と穴を掘ると粘土層が出現した。元々は稲作用の田んぼで、昭和30年代に埋め立てられた土地だった。丸めて投げ合ったり、外壁をパンダ模様にさせるため戸建住宅に向けたりとか。今では砂利を敷き詰め駐車場と片側は分譲住宅が建ってしまい、あの地で自然界の楽しい遊びが出来なくなったのは残念である??

 その粘土だがWikiによると造形材料として土粘土、砂粘土、油粘土など10種類以上もあるとか。小麦粉・パン粉粘土や、2007年にはドイツで世界初の食べられるヤミードーと呼ばれる粘土まであるとは知らなんだ。

 粘土とは字の如く粘り気のある土を指し、土壌学的には通常0.002mm以下の風化作用を受けた二次鉱物粒子というのが定義らしい。これに水が加わりレンガ・セメント・陶磁器の原料となる訳か。

 粘土の主体は層状珪酸塩鉱物で、カオリン鉱物、雲母粘土鉱物、スメクタイトなどが粘土中に広く産出される典型的な粘土鉱物らしい(九州大学理学部地球惑星科学教室の資料より)。


 このスメクタイト属のなかにモンモリロナイトと呼ばれる鉱物があり、“1000の用途”があると言われている。

 化学組成は(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2Oと滅茶苦茶長く沢山の元素からなっており、化学が苦手の私にとっては頭の痛い分野だ。記号の先頭にNa、Caの文字からナトリウムとカルシウムタイプに分かれ、世界中で産出されるが、Na型は日本と北米が有力な産地らしい。

 モンモリロナイトの厚みは約1nmと薄く、幅は100~1,000nmと非常に長い板状結晶が積層された形状で、1枚の結晶は4個の酸素原子を頂点として珪素が入り込んだ四面体構造、四面体のシート間に6個の水酸基を頂点にアルミニウムやマグネシウムが入り込んだ八面体構造と複雑ですな。

 そんでもって八面体構造中の3価のアルミが部分的に2価のマグネシウムにき換わっているそうで、結晶は電荷が不足する歪みが生じ、Na、K、Ca、Mgのようなアルカリ金属の陽イオンを吸着し電荷的に中性を保つ。

 モンモリロナイトは水と出会うと層間の交換性陽イオンに水分子が水和することで、結晶底面同士の間隔が拡大し膨潤すると言う。

 Naは1価の陽イオンから層同士の電気的引力が低いため水分子を層間に取り込み易く底面間隔が4nm以上に大きく膨潤するが、2価のCaタイプでは電気的引力が強く水分子の侵入が制限されることで、Naタイプ以下の膨潤性を示すそうだ(株ホージュン技術資料より)。

 膨潤性から水を吸収する用途や、他の陽イオンと交換することで有機溶媒との親和性を持たせるなど、多方面に利用されている。


 モンモリロナイトの利用で使用量が多いのは、エンジン用のシリンダブロック製造。日本の乗用車ガソリンエンジンではアルミブロックが主流だが、商用車や建機で使われるディーゼルエンジン用ブロックでは砂型による鋳物が中心だ。コード番号7315のIJTT等が手掛ける。

 溶けた鋳鉄を型に流し込むが、水路もあるエンジンブロックだけに砂型も中子を入れ複雑な形状となる。型は砂から出来ており当然サラサラ。そんでもって型を形成させるための粘結材としてモンモリロナイトを混ぜるわけです。
 顧客によって砂の成分が異なったりして、レシピ作りも大変そうです。


 猫のトイレで使う細かい粒のタイプ。あれにもモンモリロナイトを使う製品があります。他にトンネルや下水工事、建設現場での地盤保護安定剤、隙間を埋める止水性や、石油・天然ガス、温泉、地熱発電のボーリング時にも利用されていますね。

 アグリ用途では農薬の原体に。希釈する際の増量剤と、薬品のドラッグデリバリシステムのような徐放効果が得られるとか。


 粘土は過去から増粘剤として化粧品にも使用されてきました。高い粘性効果と安全性が特長で、最近ではモンモリロナイトの広い板状による被膜効果から保湿効果や界面活性剤を少なく刺激性を減少させる利用方法も。

 飲込んでも大丈夫な安全性と吸着性から家畜用飼料にも混合されている。
 一般にカビ毒と呼ばれ、カビが産出する二次代謝産物から家畜の食欲不振、嘔吐、消化器管粘膜の潰瘍、免疫障害などの症状も。このため飼料に混ぜたモンモリロナイトが消化器管を通過する際にカビ毒を吸着させ、体外に放出させる仕組みとか。
 O-157が流行する際、皆さん飲みますか? 私なら酒を呑むかな?


 原発で発生した使用済み核燃料でもモンモリロナイトが役に立ちます。
 低レベル廃棄物での埋設管理も始まり、地震の揺れやドラム缶廃棄物が腐食しないようモンモリロナイトを含ませた土で覆っている様ですね。

 蕎麦作りのような使用方法もされている。
 蕎麦粉に水を打つ際、水が多すぎると粘性が低く、少な過ぎなら捏ねるのが大変で、蕎麦打ち3年とも言われる職人技らしい。2人の蕎麦屋出身の知り合いから聞いた話だが、一人は二八(小麦2割、蕎麦粉8割)だったかな?つなぎの無い10割蕎麦は無理だと。
 もう一人は10割蕎麦の店で、つなぎを入れずに捏ねるテクニックがあるそうだ。その裏技を聞いたけど、たったそれだけと唖然としましたが、季節によっては出来ない時期もあるそうで、そんな時はこっそりと10割未満の蕎麦にしているとか。

 だがほとんどの蕎麦は小麦粉や、トロロ芋、新潟なら“へぎ蕎麦”が有名で、布乃利つまり海藻を“つなぎ”として利用している訳だね。


 しかし蕎麦と同様に水打ち・粘性が問題となる工業分野がある。
 セラミックスです。

 これだけ書いても終わりが見えない!
 1000の用途を書き上げたらキリがないですね。


 モンモリロナイト製品の価格は鉄のトン当たり7~8万円に比べ若干低い6万円程度と言われている。この安さも多様されている理由の一つだろうが、グレードによって価格は大きく異なる。

 純度を限りなく高めた高純度品の価格は3桁万円となり、化学合成の100%純度品では高純度品の2~3倍の価格だとか。


 大分先となろうが、高レベル廃棄物の埋設処理も日本で始まろう。膨大な粘土が使用される原子力関係者のコメントであった。


 モンモリロナイトという言葉が広く知り渡る時期がいずれ来よう。


(あすなろ産業調査部)


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