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投資アイデアの創出 最終回 スロー・インベスター

2019/11/13 01:55 投稿

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  • 山本潤
  • 2004年


■アイデアの生成過程についての連載を終わります■
※2004/3/30配信のコラムです。


 2004年1月6日から投資のアイデアの生成過程についての連載をしてきました。


 発端は、雑誌でした。
 日経エレクトロニクスの2004/1-5号を読んでアイデアを出しました。

 以下は、メルマガ「億の近道」バックナンバーの2004年1月6日号の抜粋です。

『以下 抜粋~

P53 Dellのテレビ参入。画像処理ICが台湾系がぞくぞくと参入してくる。いやな感じ。米国のファブレスIC設計会社であるGENESISやPixcelWorksなどを調べないとなあ。(アイデア1とします)

P71 インテリジェンスが忙しい。リアルタイムOSや回路など求人が上回っている。そうか。インテリジェンスはちょっと高かったな。それでかなんて思う。富士ソフトABCなんかはチェックしてみないと駄目かなとふとチェックリストに富士ソフトと書く。(アイデア2とします)

~中略~

P91 Pbフリー。
タムラは最近元気かな。ちょっと気になる。さっそくチェックリストに書いておく。RoHSで2006年の規制で恩恵なのかそれともコストアップの面もあるのか。チェックしたい。
そして、実装の部品で耐熱性が求められるということになると、いろいろあるけど、一時的に日系のシェアが上がるかもしれんなと漠然と思う。(アイデア3)

そして、タムラ製作所や富士ソフトにさっそく取材のアポをいれたのでした。』

以上、抜粋でした。


~アイデア1からの銘柄~


 その後、ラスベガスの家電ショーに行き、アイデア1を確認。

 ビクターという思いがけない銘柄(リアプロ)に出会いました。
 ビクターのプレゼンを見る。1月前半。
 購入の検討を開始。しかし、株価は反応。
 1月には、家電メーカーへ資金が流れました。
 IRを取材。2月まではそれでOKでした。
 株価が高値を更新している間は、買えません。
 じっくりと長期戦に持ち込むことにしました。

 3月前半。
 有沢製作所の子会社カラーリンクから主要部品を調達していることをチェック。
 有沢の子会社が赤字から黒字に転換予想をしていることを確認。
 それでも、まだ、買えません。

 3月の終わり。
 ようやく、歩留まりを確認。
 それでも、まだ、買えません。

 4月6日にビクターのリアプロの関係者がスモールミーティングをすることが決定。

 スモールを会社がやり、リアプロ関係者が出てくるということは、会社が目先の自信があるからだろうと推定しています。
 勝負としては、短期的(今後数ヶ月)は面白い銘柄になります。

 株価は1000円を固めてきました。買うなら今です。

 しかし、本当の長期はどうか。迷う今日この頃です。迷って迷って数ヶ月。
 判断はスローです。


■アイデア1の結論:アイデア1から、LG電子を購入。(1月後半)■


 1月の時点で、わたしは、LG電子を購入しました。理由は単純です。
 ハイスペックの日本。ロースペックの中国。韓国は世界的にブランドが認知し始めています。よい位置にいるわけです。
 松竹梅の竹。みんなの注文が集まる位置です。おまけにPERも一ケタ。
 政治の混乱は痛いのですが、短期的なものでしょう。

 その後、ビクターを買うかパイオニアを買うかで、迷いました。
 しかし、パイオニアは、買いの候補から落ちました。
 なぜなら、PDPの価格帯の中でももっとも高い価格をつけているパイオニアが、値下げのリスクが高いからです。

 ピクセルワークスやジェニシスという米国の会社のPERを見て、こういう画像エンジンのビジネスがこれだけの高い評価を得られるということを確認。
それならば、ビクターのもつ画像エンジンの技術に対して値段をはじきました。
 明らかに、ビクターに有利な条件です。
 ビクターは、液晶やPDPやCRTやリアプロのほとんどのプラットフォームで画像エンジンを供給できる。ピクセルワークスばりの評価を与えてもいいかもしれません。

 まず、LG。それから、三星。今後、日本では、ひとつを選ぶつもりです。
 選ぶならビクターでしょうが、選ぶ意味があるのか、考えがまとまりません。


■アイデア2の投資判断に至る道のり■


 鉛フリーのアイデア。
 タムラ製作所フトは、1月に訪問。

 実際は、
1)アイデアのベースで、面白いと思った。
2)取材をしたら、思いがけず業績の見通しもビジネスの内容もよかった。

 鉛フリーで実装関係のビジネスが大きく伸びていました。
 さらに、圧電インバーターが液晶TVで採用が決まりそうだという。
 普通なら「買い」です。

 しかし、スロー・インベストメントのわたしは、買いませんでした。

 他の圧電インバーターの会社もチェックしたくなったからです。
 そこで、NECトーキンをチェック。

 ところが、圧電インバーターではなく、思いがけず、ブロードライザーという面白いコンデンサと出会った。
 ここまでが1月です。

 2月。研究者に頼んで、ブロードライザーの調査を依頼。レポートは1ヶ月近くかかって手元に届きました。
 外部のコンサルタントを使うのは、わたしのよくやる手です。

 トーキンかタムラか。

 悩みましたが、どちらも購入に至りませんでした。

 理由は、小型すぎるということ。
 そして、PERがそこそこ高いということ。
 さらに、それぞれに熱烈な支持者がいること。
 証券会社や機関投資家がすでにチェックをしているために、評価がすでに高かったのです。
 また、ハイテク株は、今年中にピークアウトする可能性があるため、2006年もいけるかどうかに自信がなかったためです。


 結論:アイデア2から、銘柄選択に至らなかった。


■アイデア3の投資判断までの道のり■


 1月に富士ソフトを訪問。

 取材は確認作業です。
 まず、携帯電話の多機能化、高機能化の流れで恩恵を受けることを確認。
 昨年の下方修正の大きな要因を分析。それが今後、起こる可能性が低いことを確認。

 アイデア。そして、取材。
 ここでよければ「買い」かというとそうではありません。

 富士ソフトの場合は、
1)人気がなかった。なぜなら、昨年、大きな下方修正を2度出しているため、投資家から嫌われていた。
2)しかし、会社計画は保守的だった。業績不安がなかった。
3)NECソフトなど大きな下方修正が相次いで起こり、つれ安してくれた。

 3500円を割り込んだとき、買い。

 その後、同じような会社をチェック。
 アクセス。
 システムプロ。
 NECシステムテクノロジー。

 以前は、ソフト開発は、企業向けのシステムが大きかったのですが、携帯が高機能、多機能化することで、携帯の膨大なソフト開発が問題になってきました。

 その開発の波に当たる第三世代の本格普及期を迎えて、組み込みソフト・アプリケーションソフトの需要が堅調に伸びると推定していました。

 3月の終わり。
 富士ソフトは出来高を伴って急騰。
 一部を利食いました。
 その利食いで出遅れていたNECシステムテクノロジーも勢いで購入しました。

 同じようなことをしているのに、PERが安いということがあります。

 なぜNECシステムテク3717を買ったのか。
1)人気がなかった。NECソフトが下方修正して、NECグループはどうなの?と疑問符がついている。
2)比較的新しい会社で、証券会社のアナリストがカバーできていないため、安値で放置されている。
3)PERが他の携帯ソフト関連銘柄と比べて安い。

 このように、ひとつのアイデアが当たると、芋づる式に銘柄が出てくるのです。
 こういうところでパフォーマンスを荒稼ぎするのです。


■雑誌値段は安かった■


 アイデアが沢山見つけることのできる専門誌は安いものですね。本の数百円か数千円ですごいアイデアが含まれている。

 アイデア3の富士ソフトは、20億円近く保有していますが、短期間に30%、6億円儲かりました。
 NECシステムテクノロジーは、買ったとたんに急騰。

 そして、アイデア1はすばらしかった。
 フラットパネルが今後数年は行けると判断したので、長期保有中の有沢製作所と日東電工を保有継続しました。

 日東電工は2000円台から保有しています。普通のマネージャーなら、手放しているはずです。

 有沢は1000円台からの付き合いです。普通ならもう売っているはずです。

 でも、まだまだこれから3年程度は保有する覚悟をしています。


 これでアイデア生成の過程に関する連載を終わりにしたいと思います。
 1月6日からの3ヶ月の連載。ありがとうございました。

 アイデアがよくても、それを吟味するには、数ヶ月の時間を要するというスロー・インベスター。

 スローでも、いいじゃないか。そう思う今日この頃です。


山本 潤
スロー・インベストメント2004
~ゆっくり考え ゆったり投資~


このコンテンツは、特定の銘柄を推奨するものではありません。アイデアというものは、単なる思い付きの部分も多く、投資判断を導くには未成熟・不十分・不正確なものです。ここで紹介しているようなレベルのアイデアでは、投資の役には立ちません。内容についても、関係者との立ち話が中心なので、わたしの取り間違いや聞き違いも含まれているかもしれません。内容の正確さを保証するものではありません。

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