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為替市場動向~すべては米中次第?~

2019/05/31 02:09 投稿

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 米中貿易問題、EU議会選挙、BREXIT関連のニュースがヘッドラインで目立つ中、長期金利の低下が主要各国で進んでいます。


 米国債10年もの利回りは、2.3%を割り込み、直近では2.24%まで低下。これは、2017年10月以降の水準。これは、政策金利の実効レベルである2.4%を下回り、ここだけ見ると逆イールド状態になっています。
 一般的には、景気後退予兆のサインとしては2年物vs10年物利回り(直近は、+0.13BP)とされてきましたが、ここへ来て、超短期金利と長期金利の比較も取りざたされるようになっているのは、利下げ期待に加えて、昨今の長期金利の低下の背景には、やはり景気後退入りが近いのでは?という心理が見え隠れしているのかもしれません。

 先週5月22日に、5月のFOMC議事録が公開されました。
 注目されたのは、金利面のことよりもFRBのバランスシートにある国債ポートフォリオの再構築についての議論だったようです。二案のうちの一案は、残存3年以下の短期債のみでの構成という短期化案です。もし、ポート短期化で今年10月からの再投資再開で短期化が実行されると、利下げをせずとも市場の短期金利の低下に影響し、これが大統領選での再選を目指すトランプ大統領の望む低金利へと繋がるのではないかとも見られます。政府への配慮でしょうか。


 その他の主要国金利は、ドイツ国債10年もの利回りが-0.16%、同期間の日本国債は-0.10%とマイナス幅を広げ、利下げ期待のあるオーストラリアでは10年国債利回りが1.49%と今年に入ってから最も低い水準です。

 今後、どの国も経済指標の好転が多少あったとしても、米中貿易問題のこう着、メイ首相辞任後のBREXIT問題の行方、EU議会選挙後の各重要ポスト人事など不透明な材料のもとで、当面は金利が上昇するような動きにはならないのでは、と推測します。


 そんな中でのドル円相場は、5月連休以降、上値の重い展開が続いています。
 先週、一時、米国側が中国のファーウエイ社への米企業からの禁輸措置を、ユーザー保護を理由に90日間猶予するとの報道があり、一時的に110円台半ばまで上昇する場面もありましたが、その後、中国製の監視カメラ関連の会社の禁輸リストへの追加報道が伝えられ、発表された経済指標の弱さも重なり、ドル円相場は109円台まで反落。その後は、109円台の往来です。

 米国の対中措置に対して、中国は「レアアースの禁輸を検討」なんてニュースが今朝は報じられました。今週も幾つかの米国発の重要経済指標発表はあり、来週は5月の雇用統計という注目指標が予定されていますが、市場の関心は指標よりも、米中通商問題の行方にあり、気分晴れない相場が続きそうです。


 米中問題ショックで実質的に幕が開いた5月。月初来の為替相場は、今のところ、典型的なリスクオフでした。
 というのも、対米ドルで上昇したのは、円とスイスフラン。他の主要通貨は対米ドルで下落しました。円高&スイスフラン高&ドル高です。因みに、最も下落したのは、英ポンドの2.8%でした。
 米ドルの相対的価値を示すドル指数は、月初97.52、直近は97.92と上昇しています。
 最も比率の高いユーロも月初来、0.5%近い下落。ユーロの下落背景は、ユーロ経済悪化、また、直近では、イタリアの財政赤字への懸念があります。


 主要通貨以外で注目されたのが、人民元の動きでした。

 中国以外の海外で取引されるオフショア人民元は、米中協議決裂以来の5月に入り、下落が続いています。
 5月20日には、1米ドル=6.9514をつけ昨年の11月以来の安値をつけました。直近では6.9270水準。4月末が6.7370でしたから、約2.8%の下落になります。

 かつては米政府から輸出促進のための通貨安誘導を指摘されたものですが、今回は為替操作というよりも、市場による売り圧力という見方で捉えられていると思います。
 27日に中国通貨当局者は、人為的な元安を否定、人民元売りによる将来の損失を警告するようなコメントをしています。
 下落メドは1ドル=7.0と見られ、この防衛ラインに近づけば、政府による様々な規制の方策がとられる可能性大だと想像します。
 人民元安による国内経済への影響、中国企業が抱える膨大なドル建て債務への影響も看過できないところだと思われます。また、中国からのマネー逃避も中国政府は懸念するでしょうから、防衛ラインを越える人民元安は阻止するものとは思います。人民元相場も、今後の米中通商問題の進展により大きく左右されることになると思われます。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


※5月29日東京時間午後3時執筆
 本号の情報は5月29日東京市場始値ベースを参照しています。
 なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。


式町 みどり拝


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)

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