7月中旬からレンジを上抜けして、上昇したドル円相場。一時は113円18銭の高値までつけ、年初来高値に迫る勢いでした。17日~18日の上下院議会証言でのパウエルFRB議長の『当面利上げ継続』発言もサポートになりました。
しかし、その動きを、ひっくり返したのは、トランプ大統領の「利上げはうれしくない」「ドル高けん制」等の水かけ発言でした。ドル円相場は、110円後半まで、一時反落。
通常、FRBは政治圧力からは独立しているはずで、大統領が口を出すのはあり得ないことと認識していましたが、何でも本音を口にするトランプ氏。最近では、誰もが慣らされた感もあります。トランプ氏の本音は、FRBに金融政策は任せているけれども、継続が予想される利上げが行き過ぎになったときの悪影響が自分の政策で積み上げてきた実績に悪影響を及ばすことが心配なのでしょう。しかし、FRB関係者への圧力とも取られかねない発言、今後、どう影響していくでしょう。
今回、ドル円が高値から反落した背景は、トランプ氏発言だけではありませんでした。
来週の「日銀政策決定会合で緩和長期化の悪影響が議論される」との報道が先週あり、10年国債の利回り目標(現在0%程度)を上げるのではないか、との憶測も追従しました。
日本国債10年物は、先週0.02%~0.03%で推移していましたが、報道を受けて、一時0.08%水準に上昇。利回り上昇を受けて、日銀による「指値オペ」(金利上昇を抑え込む目的で行われる)が実施されました。また日銀幹部関係者による「寝耳に水」発言もあり、やや沈静化。ここで、報道への疑問符は残るのですが、10年債利回り誘導目標を若干上方に変更するのでは?という見方と日銀展望レポートで物価見通しが引き下げられることもあり、物価目標での行っている超緩和政策は変わらないだろうとする見方が市場では混在しています。
そんな中、来週の日銀政策決定会合が久しぶりに注目されています。30~31日開催予定です。
欧米が夏休みに入る前の今週来週には、欧州中銀(7月26日)、米FRB(7月31日~8月1日)の政策決定会合が予定されています。
欧州中銀ECB理事会での政策決定は見込まれていませんが、QEの再投資をする際に長期の債券を購入するなど、年限の長期化による、量的緩和終了後でも緩和効果を維持する政策を議論するのではないかという憶測もあります。通貨ユーロは、このところ膠着状態。理事会後には、動くかどうか注目。
米国FOMCも、政策変更は見込まれていませんが、利回り曲線の平坦化や雇用における賃金上昇率など細かい点について議論が行われるのではないかとも推測されています。
ドル円相場に戻りますと、貿易戦争が懸念される中で、これまでなら円高に動く傾向が強かった相場が、このところ逆のドル高円安に動いています。今週になって、トランプ、日銀ネタで一時110円台後半に反落したとはいえ、一時は年初来高値に迫る勢いでもありました。
米景気の堅調さによるドル高という背景もありますが、引き続き日本企業の海外直接投資が活発であること、また、一部では中国人民元売りとの関連を指摘する声もあります。
中国人民元は、米中の貿易問題が起こってから下落を続けています。
春頃には、1ドル=6.2~6.3台だったのですが、直近6.80まで下落。7.00台を予想向きも出てきています。
最近、中国人民銀行は大型の資金供給を行い話題になりました。更なる金融緩和への動きとも取れます。元安を放置すると、米国から、またまた、為替操作国の指摘を受ける可能性もありますが、それよりも、貿易戦争による国内経済への刺激としての緩和を優先するでしょう。しばらく、元安方向で行く可能性が高いように思われます。
今週は、EU首脳と米大統領の会談(貿易関連でしょう)、ECB理事会、来週には日銀政策決定会合、米国FOMCが注目されます。
欧米が夏休みに入るとはいえ、今年は油断できない夏になりそうです。
猛暑が続きます。 どうぞ、体調管理にはお気を付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
※7月25日東京時間12時執筆
本号の情報は7月24日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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