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トヨタにみる開発方針の大転換

2018/04/03 01:31 投稿

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 知財情報は貴重な一次情報だ。

 そして、検索エンジンは豊富に揃っている。

 ならば、投資家としてそれらを有効活用しないわけにはいかない。


 代表的な無料ツールとしてJ-PlatPatを前回のコラムで紹介した。

 今回は、水素燃料電池を開発のメインに掲げたトヨタのリチウム二次電池への開発の傾斜を公開された一次情報から確認していこうと思う。


 まず、IPC分類表から燃料電池(H01M8)と二次電池(H01M10)を確認。
 J-PlatPatの検索エンジンで上記IPCを指定。逆引きするだけだ。
 あとは、公開日を特定すればよい。
 前回のように内容までみなければ、3000件以内に絞る必要もなく、作業は一瞬で終わる。


-Toyota H01M8/00 燃料電池 特許公開の件数-

 2001-2005 1460件
 2006-2010 4800件 (ピーク)
 2011-2015 1505件
 2016-2018  571件
(2016年-2018年の公開件数は出願済みのものがこれから公開されるため、日を追う毎に増える事に注意。)


-Toyota H01M10/00 リチウム二次電池 特許公開の件数-

 2001-2005  571件
 2006-2010 1061件
 2011-2015 2086件
 2016-2018  903件
(2016年からの数字は直近2018年3月20日までの数字)


 上記の検索でわかるように、トヨタが明らかに燃料電池からリチウム二次電池に研究人員をシフトしている。



== 注目のトヨタ固体電池の特許公開の推移 ==


 市場の注目はトヨタの固体電池であろう。
 最近、右肩上がりで出願が増えている。
 2000年以降571件の公開が確認できる。

 二次電池の中の固体電池はH01M10/0562であるが、この数年、急速に公開件数が伸びている。

 逆にH01M10/0562固体電池のIPCで逆引きすると、同期間2100件程度の公開が確認できる。

 そうなると、トヨタはこのIPC H01M10/0562固体電池では公開特許の実に4分の1以上を抑えていることになる。


 ここでのライバル候補が以下の通り。

 まだ、内容については吟味していないが、住友電工(この5年間公開がない、諦めたか?)や出光(硫化物固体電解質、トヨタと共同出願している)などの意外な?名前が上がる。

 ただし、ライバル候補たちに3倍以上の件数の差をつけて圧倒していることがわかり、固体二次電池ではトヨタが権利化では先行しそうだな、と感触を持つことができる。
(トヨタ本体と共同出願などを合わせてグループで500件以上とっている)

 出光とトヨタとが共同出願している状況からは、トヨター出光を合わせ、さらに、住友がこの数年諦めている状況をみると、数字以上にトヨタが圧倒しているといえるのではないか。

 固体電解質が出光のように硫化物系になるのか、あるいは酸化物系、あるいはガラスセラミック系になるのか、注目されるところである。

 特開2016-081822などをみると、トヨタは固体電解質としては硫化物を主体にしながら、正極材はオハラと共同で出願。サイクル性向上のために正極材をガラス被覆するというものだ。こうなると、この三社は仲間内ではないかと疑わざるを得ない。



== 優先して読むもの ==


 投資家としてみるべき特許は、このH01M10/0562とH01M10/052の共通部分で、登録されたもの、出願と公開とが1年もないような出願してすぐに登録を行うとしたもの、を優先して読んでみると時間が節約できる。

 出光などのバリュー株がどんな特許を取っているかも参考にしてみるとよいだろう。
(これを書いた後に出光が中計を発表し、全固体電池について言及している。中計を見て、大多数の投資家は出光が固体電池の主要部材の供給者になりうることを知るのだろう。だが、わたしたちは、そんなことはもっと前にわかっていた。情報を正しく早く理解することは、投資においては、やはり、有利なのだ)


 これらは表面的なことであり、実際は、特許の請求項を読まなければならない。



== 具体的な固体電解質 ==


 これらは、トヨタの製造特許をみると網羅的に書いてある。
 本命はふたつかひとつにすでに絞られていると思うが、特許とは網羅的に書くものである。

 酸化物系非晶質固体電解質として、例えば、LiO2-B2O3-P2O5、Li2O-SiO2等を;

 硫化物系非晶質固体電解質として、例えば、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2O5等を;

 ハロゲン系固体電解質として、例えば、LiI等を;

 結晶質酸化物又は酸窒化物系固体電解質として、例えば、Li3N、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6BaLa2Ta2O12、Li3-PO(4-(3/2)w)Nw(wは0を超え1未満の数である)、Li3.6Si0.6P0.4O4等を;

 ガラスセラミックス系固体電解質として、例えば、Li7P3S11、Li3.25P0.75S4等を;

 硫化物系結晶質固体電解質として、例えば、Li3.24P0.24Ge0.76S4等を;

それぞれ挙げることができる。



== IPCやFタームについて ==


 特許庁に詳しい説明がある。

https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/kokusai_t/ipc8wk.htm

 エクセルベースでAからGまでIPC分類の参照がある。

 たとえば、H(=電気)を見てみると、以下のように分類されていて、H01M10が二次電池であり、そのサブクラスにリチウムイオン二次電池(H01M10/052)があることがわかる。



== IPC分類表に目を通そう! ==


 IPCやFタームを特許から見て、それをGoogleで検索する、というやり方でもよいのであるが、やはり、お勧めは、特許庁HPにはIPC分類表に、投資家ならば、ざっと目を通しておくべきだろう。

https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/kokusai_t/ipc8wk.htm

 そこには、検索がしやすいようにとの配慮からか、エクセルで分類ごとにファイルがある。直近の更新は2018年1月である。


 なお、 今回のコラムは以下のコラムの一部抜粋である。
https://double-growth.com/patent001/


リンクスリサーチ アナリスト 山本 潤


NPOイノベーターズフォーラム理事。
メルマガ「億の近道」執筆17年間継続。
1997-2003年年金運用の時代は1000億円の運用でフランク・ラッセル社調べ上位1%の成績を達成しました。
その後、2004年から2017年5月までの14年間、日本株ロング・ショート戦略ファンドマネジャー。
みんなの運用会議では、自分のおカネを10年100倍の資産運用を目指している。
コロンビア大学大学院修了。
法哲学・電気工学・数学の3つの修士号を持っています。


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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