日本株相場の乱高下の傍らで、為替相場は比較的限られた動きではありましたが、12月の米利上げ期待を先取りして9月から上昇してきたドル相場が先週央から反落。
特に、昨日14日は、中国景気鈍化の見方、米長短金利のフラット化(米国景気への先行きへのネガティブな見方)、またユーロ圏GDPの予想以上の数字を材料に、ユーロ主導でドル指数は10月中旬の水準まで反落しました。
米国の金利動向の中でも、今後近い将来の金融政策の行方を示す2年債と長いスパンで予想される景気やインフレ動向への期待が入る10年債の利回り格差は、2007年以来の低いスプレッド(直近0.67%)です。
2-10年債スプレッドは、ここ10年で最大2.80%(2010年3月)、その後は2%を挟んだ動きが続き、FRBの金融政策正常化が始まると、2年債が上昇に転じた一方で低インフレによる長期金利の限定的な上昇でフラット化が進んできました。
2-10年債スプレッドは、今後の景気を見る上で注目されます。特に逆転は、株式相場がピークアウトする可能性を示唆しているとも言われるので、要注目しておく必要があります。2000年、2006年に逆転した時期がありました。
さて、FRBの新しい人事では議長にパウエル氏が決定したことで、やや安心感あったようで、市場の反応は冷静でした。
ただ、一部でパウエル氏が久しぶりの経済学博士出身ではないので、金融政策の理論武装に疑問符を出す向きもあります。
FRBでは、フィッシャー副議長の退任、更に市場で一目置かれるダドリー理事(ニューヨーク連銀総裁)の2018年任期終了もあり、副議長人事に注目が集まりました。そんな中、昨日の報道では、モハメド・エラリアン氏(現ドイツ・アリアンツ社の首席経済顧問)がトランプ政権による候補の一人になったと伝えられました。リーマンショックによる金融危機後の低成長を≪ニューノーマル≫と呼んだことで知られ、最近のインタビューの記事も興味深いです。↓
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-28/ONJ6RK6S972901
冒頭で記したように、昨日は通貨ユーロを筆頭にドル相場が頭打ちと思われる動きを見せました。
そんな中で、ドル円に関しては、かなり限定的な動きです。
11月に入り、114円70銭台をトライするも、米国の税制改正実現への疑問符から113円台へ反落。その後は113円台の往来が続いています。
先日の上値トライでも、115円は今のところ重い蓋のようです。
ただ、日銀・黒田総裁は2%実現まで大規模緩和続行すると数日前に欧州にて表明していて、一方でアメリカの金融正常化は金利の上げとバランスシート縮小開始で進んでいるという事実を踏まえるとドル円相場の下値は限定的であろうかと推測します。
一方、通貨ユーロは、10月26日のECB理事会後のドラギ総裁のコメントから、テーパリング期待が薄れたのをきっかけに対米ドル1.18台から1.15台半ばまで下落したユーロでしたが、徐々に底打ちして、ドル相場下落を先導して昨日は1.18台まで戻してきました。
今後、ドル下落の受け皿はユーロが担う可能性が高いように思います。
スペインの国内問題(カタルーニュ独立)やイタリアの総選挙関連も今のところ落ち着いて、ネガティブ要因としては働きづらいと思います。材料としては、16日に発表されるユーロ圏の消費者物価指数が注目されます。
一方、英国は、10月のBOE理事会で、10年ぶり利上げ(前回は2007年の7月)を行いました。ポンド安による物価上昇(目標2%に対して直近は3%)が主因です。
ただ、BOE総裁カーニー氏からの発言からは、今後の利上げは当面ないニュアンスが伝わったことで金利先高観による通貨高は薄れたうえ、政局トラブル(BREXIT交渉が上手くいってないための現政権への批判や内部でのドタバタやスキャンダル)でポンドは下落傾向が続いています。
英連邦がらみでは、オセアニア通貨が政局不安から弱い傾向が続いています。
ニュージーランドでは、選挙で過半数とれた政党がなく、少数政党同士の連立により、重要な政策決定への不安によりニュージーランド・ドルは下落が続いています。
政治がらみでの下落はオーストラリアでもありました。
副首相の2重国籍問題による議員辞任により第一党の過半数割れとなったことや消費者物価動向の低迷も背景になっているようです。
豪ドルは、ドル・ユーロ、円に続く準主要通貨とされ、外貨資産のポートフォリオにも多く入っていますので、豪ドル下落の資産運用への影響は小さくありません。好金利通貨として日本でも根強い人気の通貨です。
ただ、豪ドルと円通貨ペアは、豪ドルが商品相場などとの相関性高い傾向にありリスク・オン相場で買わる一方、円はリスク・オン相場では売られる傾向の避難通貨とされるため、ポートフォリオへの豪ドル保有比率は調整する必要があります。
11月も中旬を迎え、ファンドの決算や年末を意識した動きも加わり、ワイルドな動きも予想されますので、慎重な姿勢が必要かと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※11月15日東京時間13:00執筆
本号の情報は11月14日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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