夏休みの最中、米北対立の地政学的リスクの高まり、加えて、米国の最もデリケート問題に大統領が絡み政権の重要な人事問題に至った等のやや過剰な騒音報道も手伝い、市場はリスクに敏感な動きとなりました。
高値圏でボックス相場を続けていた株式市場は、ボックス底割れの動きが続きました。米国の対アフガン政策の変更表明や米国の税制改革の進展報道を好感する等の相場小反発の動きはあるものの、株価指数の動きや為替相場は元気がない印象です。
市場の様子見の背景をジャクソンホールでの経済フォーラムでの主要国要人講演待ち、と挙げる向きも見かけますが、ジャクソンホールでサプライズ発言があるという期待もできないそうです。
因みに、ジャクソンホールは米国のワイオミング州にあるリゾート地で、壁のように立ちはだかる非常に高い山の間に位置し、まるでホール(穴)に入ったかのように感じる土地だそうです。近くには景観を誇る国立公園も二つあるという有数の観光地で今年も行われる経済政策シンポジウム(ジャクソンホール会議)には、世界各国から中央銀行の総裁や政治家達、学者等が参加し、会議もさることながら、避暑地での交流が重要視されるのでしょう。
カンサス連銀の主催するジャクソンホールでの会議が注目されるのは、3年前の同会議でのECBドラギ総裁の量的緩和発言、更に遡り、7年前の当時のFRBバーナンキ総裁によるQE2(量的緩和第二弾)発言等、市場に大きな影響を与えた経緯があるためです。
今年は、明日24日から26日まで開催される予定ですが、25日に登壇するECBのドラギ総裁が注目のECBによる量的緩和の出口の時期とか最近の通貨ユーロの相場反発等について言及するか?
同じく25日登壇のFRBイエレン議長が物価動向について触れるか?
その辺りが注目されています。黒田日銀総裁も出席されるようです。
夏休みをはさみ、9月に再開される両国の金融政策決定会合へに向かって、何かヒントを探りたいのが市場の本音でしょう。ただ、8月16日のロイター報道では、ドラギ総裁は金融政策に関する新たな見解は示さないと伝えられました。
前回のECB理事会後にも「QE出口については9月以降に議論する」とのことではありました。それでも、小粒でも何かヒントが欲しい、と市場参加者は耳をそばだてるのではないでしょうか。
既に、QE縮小方向を反映して通貨ユーロは対米ドルで、2015年年初の急落以来続いていた1.05~1.15のレンジ相場を上抜けして一時1.19台をつけ、現在は1.17ドル水準でスピード調整中です。
ユーロを対米ドルで急速に上抜けさせたのは、ECBの金融政策の方向の変化、米国の状況(政治、金融政策)の二つの要因に加えて、北朝鮮絡みの地政学的リスクが背景にあるでしょう。
対円においても、今年は安値115円水準から直近高値131円をつけるなど、今年のドル安はユーロ独歩高で引っ張られてきました。
2年半に渡るユーロの下落圧力で累積したエネルギーを考えると、スピード調整が済ませた後、本格的な反発はこれかららかもしれません。現在の1ユーロ=1.17台から1.20を通過、1.25~1.30ゾーンまでの反発の可能性は中期的には否定できないと思っています。
地政学的リスクも孕む円が(円高に)伸び悩む一方で、ユーロ円相場も上値を試していく潜在性が高いように思います。
一方、米国の物価動向については、7月の金融政策決定会合(FOMC)の議事録から、インフレの低レベル状態が一過性なのかどうかについて、理事たちが判断に時間を要している様子が伝わりました。
年内の米国の利上げの確率は更に低下、9月のFOMCでは99%程度利上げ無しの予想。12月でも65%程度の確率とみられ、来年早々の会合でも同じ程度の予想です。今後も引き続き、物価動向に注目が集まりそうです。
最後に、ドル円相場です。
8月に入ってからのリスク回避モードの市場でも円相場は108円をキープ、一方で16日に反発した際には110円95銭まで上昇しながらも、111円が今の重石になり、ドル反落。108円~111円のレンジ内での動きに終始しています。
ドル安基調ではありながら、日本の金融政策の状況(異次元緩和の出口は見えていない)も、地政学的リスクへの意識が働き、ドル安の受皿通貨としては難しいように思います。
来週から9月に入り、金融政策への関心も高まるでしょう。一方で、引き続き、諸々の政治的な騒音も続くでしょう。経済動向をしっかり見て、相場の背骨を見失わないようにして行きたいと思っています。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございます。
※8月23日東京時間13:00執筆
本号の情報は8月22日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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