こんにちは。梶原真由美です。
今回は私たち個人投資家にも影響があるであろう、最近の金融業界の動向についてお話したいと思います。
先日、ある大手アセットマネジメント会社が開催したIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)との情報交換会へIFAとして出席してきました。
米国では低コストの投資信託やETFを独立系アドバイザー経由で顧客に販売するサービスが広く定着しているが、なぜ伝統的な証券営業からそのような流れになったのか。
その事実が日本へ示唆するものは何か?
といった事を共有し、意見交換する内容でした。
私としては「あの」大手金融機関が、金融機関に所属しないいわば真逆といえる立場にいるIFAとの意見交換会を開催する事に驚きましたが、実は最近、このような金融機関の動きが活発になってきているのを強く感じています。
その理由のひとつは行政の動きにありました。
■金融庁からの強いメッセージ
現在、金融庁は「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)」を掲げ、各金融機関業界団体と意見交換会を開催し各業界団体へ向け問題提議を行っています。
業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点(金融庁)
http://www.fsa.go.jp/common/ronten/index.html
その内容は「具体的」に「厳しく」改善点を指摘していますが、
なぜ、金融庁はここまで本気になっているのでしょうか?
発端は安倍内閣の成長戦略「日本再興戦略2016」の中にありました。
日本再興戦略2016 ―第4次産業革命に向けて―
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/2016_zentaihombun.pdf
P153からの「活力ある金融・資本市場の実現」へ向けた具体的施策として、「フィデューシャリー・デューティーの徹底」とし、以下の内容が記載されていました。
(本文引用)
・商品開発・販売・運用・資産管理といった顧客の資産形成に携わる全ての業
者において、フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の
徹底が図られるよう、必要な対応について、金融審議会において検討を行う。
・顧客のニーズや利益に真に適う商品の提供の観点から、投資信託や貯蓄性保
険などのリスク性商品にかかる手数料の透明化・適切化に向けた取組を進め
る。
(引用終)
個人金融資産を「貯蓄から投資へ」はもう随分前から言われていますが、全く進展を見せない原因には日本の金融業界が「顧客本位ではない営業」をしているからだと行政は判断したのではないでしょうか。
もっと言えば、金融機関で利ザヤを抜きすぎている為に、本来個人投資家が金融商品から得る利益を不当に圧迫している。だから個人投資家は「投資をしてもお金が増えない」と感じてしまい日本では「貯蓄から投資へ」が進展しないのです。
■保険業界への指摘
ひとつの例として保険業界に向けられた指摘をクローズアップしてみます。
業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点(金融庁)生命保険業界(平成29年6月9日)
http://www.fsa.go.jp/common/ronten/201706/04.pdf
概要は以下の通りです。
1)収益構造について
・事業費に占める固定費(販売手数料・人件費等)の割合が高い
・利差益等の内部留保を適正に契約者へ配当すべき
2)顧客利益について
・顧客が真に必要な保障を意識した時、現在の販売(複数の保障を重ね売する)が継続可能かと考えるべき
3)代理店販売について
・顧客に対し、代理店へ支払う手数料率開示をすすめるべき
・変額保険では、顧客本位の観点から運用委託先や運用スキームの選定を十分に比較検討すべき
・変額保険では、顧客が負担するコストの開示を定量的にすべき
・保険募集手数料について、販売量の多寡に応じたものではなく、顧客対応やアフターフォローなどの「質」も反映すべき
■顧客の立場から今出来ること
金融庁の指摘は、顧客側にとってはメリットが多いものです。
低コストの金融商品がより多く流通したり、金融商品の情報開示が進み商品選択の肢が増えます。
その結果、私たち顧客が金融商品から得る利益も上昇することでしょう。
しかし金融機関にとっては収益構造を大きくシフトチェンジする必要があり、容易には受け難いのも事実です。
この歓迎すべき流れを加速するためのポイントは、私たち消費者が顧客本位で運営する(変革にチャレンジしている)金融機関を選択する形で支援していくことではないでしょうか。
・行政が変革の声をあげる
・消費者行動が変わる
こうなったら金融機関も変革せざるをえません。
「あの」大手アセットマネジメント会社が「顧客本位の業務運営」に近い形で営業するIFAと意見交換の場を持ったのは、顧客本位の体制に変革する為のヒントをIFAに求めている様に感じました。
少しずつですが金融業界が変わりつつある事を示唆しているのではないでしょうか。
株式会社マネーライフプランニング
CFP 梶原 真由美
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