今回は日経新聞に掲載され、話題となった新手法によるGDP統計についてご紹介します。
日本経済新聞2016年8月6日付の朝刊にこんな記事が掲載されました。
「14年度GDP、実はプラス成長? 日銀、税務情報で独自試算 内閣府は反論」
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO05753450V00C16A8EE8000/
(記事の内容を一部引用)
『2014年度の名目GDPは内閣府の公表額(490兆円)より約30兆円
多い519兆円、実質2.4%のプラス成長だったという内容だ。GDP算出を担当する内閣府は14年度の実質成長率をマイナス0.9%としている。』
(引用終わり)
話題の原因となった日銀の金融研究所が出しているワーキング・ペーパーがこちらです。
「税務データを用いた分配側GDPの試算」
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j09.pdf
内容を簡単に説明すると、
現行GDP統計は「GDPにおける三面等価の原則」に従い生産側から算出しています。
「GDPにおける三面等価の原則」とは、経済をマクロ的に見るときの基本原則であり、国の経済は「生産(または付加価値)」「分配(または所得)」「支出」のどの側面からみても、理論的にはその額は等しくなる、というものです。
生産側GDPと支出側GDPに大きなかい離は無く、分配側は支出側、生産側GDPに等しくなるように、営業余剰・混合所得を調整しています。
しかし、分配側GDPを直接推計している米国の事例をみると、基礎統計のカバレッジ(網羅率)や推計誤差の問題から、支出側GDP、生産側GDPとは必ずしも同じ額にならないことが知られています。
米国では、分配側GDPの推計には、主に税務データ等の行政記録情報を利用していることから、今回の論文では、日本でも住民税データ、法人税収データ、申告所得データを利用し、営業余剰・混合所得の直接推計を試みていました。
すると、日経記事にあるように現行GDPより今回試算GDPのほうが上振れしました。
しかも2014年度においては大きくかい離しています。
結果詳細をみてみると、
・雇用者報酬、営業余剰が近年にかけて大きく上振れしている。
・混合所得にはかい離がみられなかった。
・2014年度は特にかい離が大きくなっている。
以上の理由から、推測される現行GDPに対しての指摘がされました。
・各種統計調査において十分なカバレッジ(網羅率)を持っていないのでは?
・統計計数に消費税抜きデータが多数混入している可能性があるのでは?
現在のGDP統計は、国の政策を考える上での重要経済指標として、内閣府で作成されていますが、今回の発表の指摘が万が一正しいとなった場合、
「今までのGDP統計が間違っていた」
という事になるので、内閣府としては大慌てでしょう。
そして「統計データには消費税込の記入を促している」と反論しています。
今後、今回日銀の試みた手法を確立すべきかというと、税務データを引用した分配側GDPは、必要な税務データが揃うまでに時間がかることから、実用的ではないという弱点もあります。
世間では様々な憶測を呼び、
・なぜ日銀は今、今回の様な新手法でのGDP論文を出してきたのか?
・9月の金融政策決定会合で行う「総括的な検証」に向けての準備ではないか?
などと言われていますが、何が正しいかは今後の行方を見守るしかないように思います。
どちらが正しいかの結論はすぐに出るものではないでしょう。
しかし、重要なのは今回話題になって終わり、ではなく双方十分に議論をしてほしい内容であると思っています。
そして必要であれば統計改善をし、有効な経済政策の為の根拠となって欲しいものですね。
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