マイナス金利の導入に踏み込んだ日銀の施策がなかなか効果を見せないと一部メディアからはアベノミクスへの批判が巻き起こりつつある状況下で株式相場は着実に方向感を見出しつつあります。

 円安メリット株を避け、内需系の銘柄には着実な買いが入り始めています。

 指数をみると日経平均が頭重いのに対してマザーズ指数は堅調。それに刺激を受けたJASDAQや東証2部が堅調になってきました。


 JASDAQや東証2部という市場には地味ながら着実な業績拡大が見られる銘柄が多く、低PER、低PBR、高配当利回りのバリュー株が数多く含まれているため見直し人気が高まっていると言えます。

 中には前期の業績を上方修正したことでPERが5倍以下に低下した銘柄もあり、そうした銘柄が増配を発表し投資家にアピールを開始するものですから、俄然として地味目の株が人気を集め出したと推察されます。

 マザーズ指数の値上がりは限られた値がさ株が中心で個人投資家はついていくのが大変なのですが、JASDAQや東証2部の銘柄なら上場歴や社歴も比較的 長く、親しみもあり、しかも個人投資家にとって関心事の一つである配当も充実。ゼロ金利状態の銀行に預けた利子のつかないお金を株式投資に振り向けるにお いて、年間3%~4%の高配当利回り銘柄でキャピタルゲインも狙えるとあっては関心が高まるのもうなずけます。


 これから株主になろうという投資家も既に株主となっている投資家も投資した企業の配当金は気になるものです。例えば今600円の株価で買うことのできる銘柄があり、それが前期も増配し1株25円、今期も増配で1株30円にするという発表をしたらどうでしょう。

 しかも前期の配当性向が10%に留まっている企業なら、配当余力は大きく配当性向を高めただけで利益が減少したとしても増配となって配当利回りは大きくなるとしたら投資家の関心は高まるに違いありません。


 配当性向については期間利益の中からどれだけ配当に振り向けているのかの比率であることは皆様もよくご存じかと思います。

 時に配当性向は0%だったり、100%を超えたりすることもありますが一般的には10%~30%だろうと思います。長期安定配当を指向してきた日本企業は配当性向主義を掲げつつ、利益が多少減っても配当の充実に努めようとしています。
 投資家の狙いは利益成長とそこから得られる配当金の増加がメインだろうと思います。企業側からすれば成長資金を得るために配当性向をできるだけ少なくし て内部留保を確保しながら更に成長を目指すか、利益成長をあきらめて内部留保をため込むより配当金を増やして多くの投資家に支持してもらうことで株価の安 定化を目指す方が良いのか選択に迫られているのではないでしょうか。


 既にどこかの地銀下位行並みに自己資金をため込んでいる製造メーカーやIT系企業、サービス企業など現在の株式市場にはあふれています。過去10年間、 バランスシート上の現預金は減ることなくたまっていく企業の言い分は時には緊急に備えているだとか、将来の損失発生への備えやM&Aのための資金だとか言 いながら、一向に活用する気配のないキャッシュリッチ企業に投資家はそれでも変な投資に回すよりはとあきらめの境地になっているように思われます。


 この際、企業は金庫に眠ったままの現預金の有効活用を行うべきではないかと思われます。この際、現預金をため込んでいる企業は配当性向を思い切って引き上げ配当の充実に努めるべきではないでしょうか。
 投資先がないならそのお金は株主に戻すのが筋でしょう。

 折しも来月は株主総会シーズン。株主の主張を本来はすべき株主総会は大半が形式的ですが、コーポレートガバナンスの時代で徐々に企業側が聞く耳を持ち始めた点は朗報です。
 明らかに配当性向が低すぎる企業には株主として声を出して要求すべきです。

 マイナス金利の時代だからこそ、企業は内部留保し続けることなく、期間利益を先行投資に回して将来の利益向上に努める必要があります。それができないのであれば株主に利益をもっと還元し消費に回してもらうことが必要です。


 株主は企業の利益向上を待ち望んでいますが、現実的にそうならないとして、安定した収益確保が可能なら増配を待ち望んでいます。できれば増益基調が見込まれる企業にこそ配当性向を高めて株主との利益共有化を図るべきだろうと思われます。


 本来資金を提供する側の銀行にも大いに問題があります。銀行は融資することで収益を稼ぐ事業者なので、成長を目指すための資金をもっと供給していく使命がありますが、ため込んだキャッシュを国債で運用している現在の銀行自体が限界となっています。

 キャッシュリッチ企業も企業に融資しない銀行も日本国の経済成長を妨げている要因です。せめてキャッシュリッチ企業は株主への利益還元を通じて国家の経済成長に貢献してくれるものと期待されます。


 国民もいつまでも銀行や郵貯にお金を預けたままではなく企業への投資に関心を寄せるべきです。それは上場企業でも構いませんし投資案件を抱えるベンチャー企業でも構いません。
 お金の好循環を日銀にばかり頼らず、自分たちで創出していくことが求められています。


 配当性向の考え方を改めて株主本位に見直すことで経済成長に貢献する企業の在り方を問いたいと思います。


【配当性向と配当利回りの関係】

例:現在600円の株価のA社(BPS1400円)が予想EPSを100円として公表している場合、今期予想PER6倍、PBR0.43倍ですが配当性向をどうするかも株価に影響をもたらします。

 MM理論では配当金は株価に影響をしないという説がありますが、マインドからは配当利回りが高い銘柄に投資家はリスクマネーを余分に投じようとします。
 配当性向は企業の経営者が自由に決められる要因です。
 現にいくつかの企業では配当性向100%主義を貫いています。

 配当性向は一般的には10%から30%ですが、A社の経営者が100%でも良いとして施策を打ち出すと株価はどのように変動するでしょうか。

 現状が10%だと配当金は10円で配当利回りは1.66%にしか過ぎませんが20%だと20円で、3.3%となります。30%だと30円で5%となります。
 企業経営では30%でも全く継続的な運営に支障がないと考えられますが、ここまでの配当利回りを投資家はほっておくことはありません。

 自然に投資マネーが入り、株価は700円、800円と上昇していくに違いありません。

 さて、これを100%とすると配当金は100円となり株価が600円のままだと配当利回りは16.7%にもなってしまいます。当然配当金を目当てにした ニューマネーが押し寄せ株価は市場が期待する3%~5%の水準(株価は2000円から3300円)まで押し上がると考えられます。
 これでPBRも1.4倍から2.4倍にまでアップします。これを発表するタイミングによっては連日のストップ高となり市場は活況を呈す筈です。

 A社だけでなくこうした可能性のある銘柄が一斉に同様の施策を打ち出すと市場は活況を呈すことになるでしょう。配当性向100%ではなくても50%でも 株価にインパクトがあるかと思います。実現不可能なことではなく株式市場で地味に沈んできた有望企業の配当性向見直しに期待したいと思います。


(炎)


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