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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『攻殻機動隊』解説:登場人物が「はッ」としたワケを考えながら読むべし」

2019/07/03 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/03

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/06/16配信「『攻殻機動隊』講座・第2話徹底解説(後半)」の内容をご紹介します。
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2019/06/16の内容一覧


『攻殻機動隊』エピソード2解説

(本編再生開始)

 『攻殻機動隊講座』の……これは第何回になるのかな? 3回かな? 4回ですか?
 まあ、とりあえず、エピソード2「SUPER SPARTAN」の後半の解説をやっていきます。

 士郎正宗さんもなかなか大変で。1989年に2029年のことを考えるんだから、30年後のことを予想して、世界を描いてるんですね。
(パネルを見せる。第2話表紙)

「30年後の世界では、こういうロボットが実用化されていて、その背中に乗り込んで活躍する」という、そういうかなり思い切った未来像を見せています。

 この点、あんまり指摘する人がいないんだけど、こういう「30年くらい未来」って予想しにくいんですよ。
 というのも、5年後10年後の未来だったら、アイデア1つ、例えば『パトレイバー』だったら「作業用レイバーと呼ばれる人型の工作機械が実用化して、人々の生活に入ってきた」という1アイデアでいけるし、もしくは、100年後200年後だったら「人類はこの時、恒星間飛行を開発して宇宙世紀に突入した」みたいなことも言えるんだけど。
 しかし、30年後の未来というのは、リアリティを出すために「米ソ2大大国が対立していて~」みたいな、現実の社会背景も入れなきゃいけない。100年後200年後だったら「もうすでに、ドルとか円とかユーロなどの通貨が消滅している」としてもいいんだけど、30年後くらいの世界の中では、そういうものがとても消滅してるとは思えないし、ということで、メチャクチャ書きにくいは書きにくいんですね。
 だから、こういうのって、探してみたら珍しいんです。たぶん、30年後くらいを描いたSFで有名なのは『北斗の拳』くらいじゃないかな?
 でも、それにしたって「一度、世界が壊滅して、リビルドされた後の世界」を描いてるんです。そこでは、かつての文明社会を覚えている人がお爺さんみたいになっていて、「わしの若い頃はこういう世界があってのう。しかし、もうお前らは、生まれた時から核戦争の後じゃ」みたいな。こういうものは描きやすいんだけど。
 『攻殻機動隊』のような、現代の世界と繋がりながらの中未来、近未来と遠未来の間の中未来を描いた作品って、わりと珍しいです。

 さて、前回はここまでやりました。

(パネルを見せる。単行本30ページ)

 「全員突入用意! 洗脳装置が顔を出したら突っ込むぞ! やってやろうじゃないの! そうしろとささやくのよ。私のゴーストが」ということで、いよいよ突入することになりました。

 この「やってやろうじゃないの!」というコマで、草薙素子の身体から出ている「プシュッ、シュシュシュ」という効果音は何かというと、その前のコマの「ピ」という音に対応しているわけですね。

 この「ピ」という音、何をやってるのかと言うと、このプロテクターを身体に合うように調整したんですね。
 おそらく、このプロテクターというのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』で、主人公のマーティンが未来で履いていた靴みたいなものだと思ってください。あとは、未来で着る服。あれ、着たら自動的にサイズが調整されましたけど、たぶん、そういう装置なんですね。
 それまでは少佐が着けているプロテクターというのは、狭い狭い部屋の中で活動してたから、身体にピッタリくっついているレオタードみたいに見えていたんですけど。この「プシュッ」のコマからは、肩の厚みが明らかに増していますよね? これは、スイッチをいれることによって、おそらく、この中にゲルみたいな半液体を入れているのか、もしくは空気圧で膨らませて、防弾性能を持たせているんです。
 いわゆる「狭い車や飛行機の中では、ライフジャケット膨らませてはいけない」というのと同じですよね。この車の中ではしないんだけども、いよいよ外へ出るので、シュッと膨らます。
 ここらへんも、そういう連想が働く人にとっては、「ピ」と、「シュシュシュ」という効果音を見て、「おっ! いよいよアーマーを膨らませて突入準備だ!」とわかるんですけども。ちょっとSFを読み慣れていない人にはわかりにくいシーンなんです。

 次のページです。
(パネルを見せる。31ページ)

 前回の講座で説明した、トグサが子グモを仕込んだ子供ですね。政府の洗脳組織から逃げ出した子供が、警備員に捕まえられています。

 ここで、警備員の1人が、捕まえた子供の首筋を見て「はッ」としました。もう1人の警備員は気が付いてないんだけど、こいつだけは何かに気がついたわけですね。
 そして、辺りを見回して、マンホールを見つけると、「!」とビックリする。よく見ると、このマンホールの中に草が巻き込まれてるんですね。

 この辺が、『攻殻機動隊』を読む時のコツの一つなんです。
 基本的に、登場人物の誰かが「はッ!」という表情をしたら、何が「はッ!」なのかをよく観察しないと、そこから先を読んでもよくわからないんですよね。
 一応、その直後に「大至急、排水路を封鎖しろ! 枝がついてる!」というセリフはあるんですけど。もう1人はわけもわからずに「おッ……おう!」って言ってるだけです。
 この「枝がついてる!」というのは、つまり「誰かがここに来て、この子供に何かを仕掛けた」と言ってるんですね。「このマンホールの中から誰かが出てきて、閉めた」と。
 こいつがそう思った根拠は、「上手く隠したつもりだけども、マンホールの蓋を閉めた時に、敵はこの草を巻き込んだことに気付いていないということに、こいつだけは気が付いたから」です。なので、マンホールを見た時に「!」という表現があるんです。

 「気付かれた! トグサ、緊急脱出! 敵は同業のプロだ!」と、草薙素子が叫びます。

 彼女も彼女で「この程度のことで気付かれた」ということから、単なるガードマンじゃなくてプロだとわかったわけですね。前回も解説したように、どうもこいつらの装備というのは、自衛隊とかが使っている最新鋭のものだということで、ちょっと怪しんでいたんだけど、それが、ここで「同業のプロだ」という確信に変わったわけです。
 そして、「攻性防壁モードに切り替える」と、通信をより厳重なモードに切り替える。暗号とかの変換がより深いモードに切り替えることを指示します。
 「バズ、サイトー、トグサを連れ出せ。イシカワは援護! ボーマは退路を確保。私とバトーが援護する!」ということで、完全に逃げる態勢になって、何かのスイッチを入れます。

 この優秀な警備員は、この子供の中に「子グモ」という監視プログラムが仕込まれたことがわかったわけですね。なので、それを逆探知する仕掛けか何かを仕込むために、首の後ろからひっぱってきた線を子供の首筋に繋げています。
 前回も話した通り、この『攻殻機動隊』の第1巻では、まだこういうシーンに有線通信というのを使っています。
 ここから先の『攻殻機動隊』の2巻とかになってくると、こういう表現を全く使わなくなってきますけど。この「首の後ろからラインを引っ張ってきて繋ぐ」というのが、一番安全な回路という記号になっているので、ここに繋ぐわけですね。

 草薙素子が「トグサ、緊急脱出!」と言ったのは、「この作業を担当してヘマをしたトグサが一番危ない」からですね。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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