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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『攻殻機動隊』解説:「攻性防壁」っていったい何?」

2019/07/04 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/04

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/06/16配信「『攻殻機動隊』講座・第2話徹底解説(後半)」の内容をご紹介します。
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2019/06/16の内容一覧


『攻殻機動隊』エピソード2解説

(パネルを見せる。32ページ)


草薙素子:何してる、敵の攻性防壁にやられるぞ!
オペレーター:ロ、固定(ロック)されてますう! ……きゃッ!


 ということで、この女の子が目を開いたまま倒れます。これは「死んだ」という表現ですね。


草薙素子:行くぞバトー。そいつはただのスピーカーだ。公安部が修理するさ。
バトー:新しい模擬人格(プログラム)を注入してか? ゴーストがないお人形(ロボット)は悲しいね。


 わかりにくい表現なんですけど、これは「今までずっと普通に会話してたこの女の子は、人工知能のロボット」だったというわけですね。
 なので、「死んだんじゃなくて、壊れただけだ」と。だから、草薙素子は「こいつはただのスピーカー、機械に過ぎない。公安部が修理する。感情を動かすな」と、バトーに言っているんです。

 この「攻性防壁」というのは、これ以降もこのマンガの中に何度も出てくるんですけど、これはそれが初めて使われたシーンです。
 僕ら読者側も、この時点までは「攻性防壁」というのが何のことか全然わからないんですよ。「攻性」は「攻撃性」、「防壁」というのは「護る壁」ということで、言葉としても矛盾しているんですよ。護る壁なのに、なんで攻撃性なのか? それが、ここで初めてわかるんです。
 「ネットワークに侵入して情報を探っている側まで遡ってきて、侵入者を殺してしまうようなものだ」と。

 例えば、ここにスマホみたいなものがある思ってください。このスマホにはカメラがついています。
 よくあるハッキングのイメージでは、ハッカーである僕が、自分の部屋でパソコンをカチャカチャといじって、ハッキング成功。このスマホの中に侵入して、そのカメラを通して、盗撮する、と。こういうハッキングのイメージって、よく出てきますよね? 『攻殻機動隊』でのハッキングというのも、こういうイメージで出来ています。
 ただ、侵入されたスマホを使っている側も、上手く操作をすれば、逆に、侵入している僕のパソコンをフリーズさせたり、逆に操作して、僕のパソコンの側のカメラから僕を見張ったりできる。
 そういうのが、『攻殻機動隊』で描かれる相互にハッキングできる世界なんです。

 『攻殻機動隊』というのは、こういうのを、もう当たり前のこととして描いてしまっているので、すごく複雑なんです。
 最初に言いました通り、30年後くらいの未来予想なので、まあ、かなり難しいは難しいんですよ。このマンガが発表された当時は、まだスマホなんて概念すらなかったんですから。
 「この作品の世界では、そういうものが脳の中でリンクされていて、そんな中で相互にハッキングしたり、されたりしている」という、何か1つの新しい技術を見せるだけでなく、それが当たり前になった場合、その上にどんな技術が積み重なっていくのかというのを予想している、なかなかすごいシーンです。
 なので、この「攻性防壁にやられる」という状況を、絵として見せているこのページのことくらいは覚えておいてください。

 では、次のページです。
(パネルを見せる。33ページ)

 敵のガードマンが、「変だ……。ゴーストが焼ける時の抵抗感がなかった……。俺が焼いたのは人工知能(AI)か!? 敵は遊び半分のハッカーじゃない。プロだ!」ということで、双方、敵がプロだということがわかりました。

 次のコマは、逃げている最中のトグサ君が描かれます。
 「なんで排水路だとわかったんだよ!? 情報漏れ(リーク)か? やっぱりワナか!?」と言っていますね。
 しかし、排水路の出口が、大きい金属製のロックで「ゴゴッ」と塞がれていき、トグサ君の乗っているフチコマというロボットは、ガーンとそれにぶつかって壊れてしまいます。
 それに対して、「おい、どうした、トグサ、ト、いてて……。くそォ、肝心な時にこの不良聴覚素子め!」と、草薙素子が言います。
 トグサの声を聞こうとしているのに、冒頭にも出てきた聴覚素子の不良のために、よく聴こえない、と。

 このページで見るべきは、このトグサ君の判断ですね。
 トグサ君が排水路にいると敵にバレた原因は、実は自分のミスなんですよ。このエピソードの最後にも描かれている通り、後でトグサ君は反省を強いられるんですけども。
 トグサが子供にプログラムを仕込んだ時、マンホールからそーっと出て、そーっと帰ったんですけども。その時に、もう少し慎重に、周りの草を巻き込まないようにしていれば、警備員は気付かなかったんですね。
 そして、ここで気付かれなければ、同業プロの警備員に、子供の首から遡って逆侵入されて、チーム全体を危機に陥れることもなかったんですよ。
 でも、この時点でのトグサは、自分がそんなミスをしたとは全く気がついてない。「全員撤退! トグサすぐに脱出しろ!」と言われたのが、自分のミスが原因だと思ってない。
 自分がマンホールの蓋を閉める時にミスしたということをわかってないから、「なんで排水路だとわかったんだよ!?」と罵りながら、「情報漏れか? やっぱりワナか?」と言ってるんです。
 「チーム内の自分以外のメンバーに裏切り者がいるのか? それとも、これは、自分たちを公安に引き入れるための、サルと呼ばれる公安部長のワナか?」というふうに他人を疑ってます。
 ちなみに「そんなトグサ君が徐々に徐々に成長する」というのも、『攻殻機動隊』のマンガ版全体での裏テーマになっています。
 このトグサ君というのは、かつては刑事だった。それも、たぶん、それなりに敏腕刑事だったんですね。そんな自分が引き抜かれたんだから、自分では出来るつもりになってるんですよ。
 でも、それ故に、こういう勝手な判断しちゃうわけですね。

 で、排水路にロックをかけられて、ガーンと壊れる。
 草薙素子がトグサから話を聞こうとしても、聴覚素子の不良で役に立たない。
 ようやっと草薙とバトーの2人のフチコマが排水路から出てきて、これから助けに行ける態勢になりました。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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