岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/6/5
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2016/10/16配信「復活のM一夜限りのマンガ夜話~これを見れば『聲の形』だって『亜人』だって語れちゃう」の内容をご紹介します。
岡田斗司夫アーカイブチャンネルの会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。
サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。
(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「メルマガ専用 岡田斗司夫アーカイブ」、「岡田斗司夫 独演・講義チャンネル」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
2016/10/16の内容一覧
- 頭がいいと思われるマンガの語り方
- 九十九電機の「かわいいおっさん店員」たち
- 役割分担で成立していたマンガ夜話
- 『関ジャム 完全燃SHOW』とマンガ評論のむずかしさ
- 『マルドゥック・スクランブル』で大人がかっこよく描けるようになった大今良時
- まったく新しい漫符を作った『聲の形』と芥川賞
- 人間の心理の深いところに手を入れる『亜人』
- 心理デッサンと心理デフォルメ、絵のデッサンと絵のデフォルメ
- 『亜人』の論理パズルとキャラを立てるためのエピソード
- 『亜人』の落としどころと『ジャンプ流!』大場つぐみ・小畑健
- 『カリオストロの城』オープニング、クラリスの残酷さと身勝手さ、女帝安田さん
- 「悪い女」が描く、めちゃくくちゃ面白い『乙嫁語り』
- マンガ力が半端ない天才 羽海野チカの『3月のライオン』
- 単なる「ブラックジャックもの」でない『AIの遺電子』
- 次回告知と書画カメラ、バックミンスター・フラー
まったく新しい漫符を作った『聲の形』
さて、まず最初のマンガは、『聲の形』だね。これあのね、俺、電子で読んじゃったんだけども、紙がいいよね。というのは、この2人の関係が、全部表紙でわかるし、あと裏表紙とかの風景もジブリアニメのエンディングっぽくてめちゃくちゃ格好いいんだよ。それが1巻から7巻まで続いていて、表紙が並んでいくときの快感、本を揃える快感というのがあるから、すごい楽しいですね。
いちおうマンガ家夜話風的に作品全体の紹介もやってみようか。週刊少年マガジンに2013年の36.37号合併号から2014年の51号まで連載、つまり1年半くらい連載してたってことだね。小学校の頃、石田将也、主人公がいじめていたのは聴覚障害、いわゆる耳が聞こえない、聞こえにくい女の子西宮硝子。ところがある日を境に立場が一転して、石田がいじめられる立場になり、友達がみんな離れていく。高校生になった石田は硝子と会って、死ぬための、自殺しようと思って、罰を得ようと彼女のもとへ向かう。
硝子と石田、小学校の頃のみんな、硝子の家族みんなを巻き込んで拭い去れない過去と戦うっていうのが、この全7巻の構成ね。
(中略)
で、読んでて印象に残ったのが主人公の将也という男の子、一番最初は耳が聞こえない女の子、ヒロインを本当にいじめていじめていじめまくる、この1巻で気持ち悪くなって読めなくなっちゃう人が多いんだよ。と同時に1巻の後半で逆に自分がいじめられる立場になるんだよね。1巻の終わりでその女の子と再会して、高校生になってから再会して、関係を作り直す話なんだけども、もうここまで来たらラストのほうまで大体、見えちゃうわけじゃない。
結局、この男の子はわりとの関係を作りながら、この耳が聞こえない女の子をまわりとの関係を作り上げながら、最後はいじめというものが解決するのかなんなのか、そういうような話だろうなと思うんだけど、ここまでの想いを込めた全7巻、そんな単純なものじゃないんだよ。大枠は、ちゃんとハッピーエンドに向かうんだけど、すごい苦いハッピーエンドというのかな、いろんな意味合いを込めたハッピーエンドに向かっていくんだけど。やっぱりこのね、将也の主観世界が面白い。
俺が一番感動したのは将也がまわりにいじめられていて、まわりがどういうふうに見えてくるのかっていうのが、「うるせーよ」っていうふうに言ってまわりの人間の顔に「おまえなんかいらない」「おまえなんかどうでもいいやつだ」っていうふうに、顔にばーっと×がついていくシーンなんだよね。ここね。「うるせ-よ!」「まずお前、茶髪似合ってない」「お前たちも似合ってないのに恋愛話するな。気持ち悪い」「お前は美人アピールがうざい」「正しいアピールがうざい」「お前ら嫌いだ」「嫌いだ」って、顔の上に×がずーっと載り出す、このマンガなにがすごいかっていうとこの主人公の将也の見た目がほとんど最後まで続くから、ほとんど大半の人物の顔に×印がついているんだ。それで最後まですごく面白いんだよ。
ついにはクラス全員に×印が、後姿にまでついたものがぱーっと見えている。これが彼の主観世界なんだよね。べつに、いじめられてた人がそんなふうにまわりがホントに見えるかどうか別として、この×っていうのは俺、すごいなって思うんだよね。この×印っていうのは。まったく新しいマンガ記号が生まれた瞬間っていうふうに俺、書いたんだけども、顔の上に×を載せるのってさ、ちょっと変だと思わない? っというのはこれまでのマンガだったら、こういうふうに主人公が否定したい人っていうのはどういうふうになるのかっていうと、おそらく顔をモザイク処理にしたんだよね。
顔の上をモザイク処理にするか、もしくは少女マンガではよくある技法で、少女マンガでは昔から『エースをねらえ』とかそういうやつで主人公に対して冷たい人とかなんかは全員顔を描かない、のっぺらぼうとして描くんだ。のっぺらぼうとして描くというのが少女マンガ的技法、顔をモザイク処理風にして見えないふうにするっていうのは江川達也とかがよく使うんだ、つまりリアルな絵を基本としている。
どっちにしても、顔は見えないというのは人間の心理を現わしているし、モザイクをかけるのは現代の技術を表していると。しかし、顔の上に大きい×をつけるっていうのは完全な記号なんだよね。汗を描くときに昔のマンガはちゃんと汗をやってたんだけど、徐々にかわいいマンガとかの影響ででっかい汗を一つ描くようになったじゃん、あれを読み取るようになるまでアメリカの人、しばらくかかったんだって。意味がまったくわからない。なんでかっていうと、まったく新しい漫符、マンガの符号が生み出されたからなんだよ。この顔の上の×っていうのも、まったく新しいマンガ記号が生み出された瞬間だと思うんだけども、ところがこれだけじゃない、3巻になると更に進化してくるんだ。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
アーカイブサイトへのアクセス方法
限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画など、岡田斗司夫のコンテンツを下記のアーカイブサイトからご覧いただけます。
コメント
コメントを書く