『NEWSを疑え!』第365号(2015年1月26日特別号)

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【価格】1,000円/月(購読料のうち半分は、研究所の活動に対する維持会費とお考えいただき、ご理解をいただければ幸いに存じます。) 
【発行日】2015/1/26
【発行周期】毎週月曜日、木曜日
【次回配信予定】1/29

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【今回の目次】 
◎テクノ・アイ(Techno Eye) 
・東大が定義する「軍事研究」の曖昧さ
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之) 
◎編集後記 
・「イスラム国」との接触ルートは(小川和久)

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◎テクノ・アイ(Techno Eye) 
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・東大が定義する「軍事研究」の曖昧さ

(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)

 東京大学(濱田純一総長)大学院情報理工学系研究科は昨年末、「科学研究ガイドライン」から「さらに、東京大学では軍事研究も禁止されています。」という文を削除した。

 これを受けて産経新聞などは1月16日、「東大が軍事研究解禁 軍民両用技術研究容認」と報道した。

 改訂版ガイドラインでは、「成果が非公開となる機密性の高い軍事を目的とする研究」を引き続き禁止したうえで、「軍事利用・平和利用の両義性(略)を深く意識しながら、個々の研究を進める」という方針が示されている。

 報道に敏感に反応した東大は同じ1月16日、軍民両用(デュアル・ユース)技術の研究を容認するともしないともとれる曖昧な内容の声明を発表した。

 学問研究の成果が軍事目的にも非軍事目的にも利用される可能性は、三通りある。

1)基礎研究によって解明された世界の基本原理が、軍事目的に応用される。東京大学は日本報道検証機構の質問に対し、「基礎研究については、ほとんどの研究について両義性がある」という認識を示している。

2)非軍事目的の研究成果が製品化された後、兵器開発に利用される(商用オフザシェルフ、COTS)。東大大学院情報理工学系研究科の科学研究ガイドラインが、意識するように研究者に求めているのは、この意味での両義性だろう。このガイドラインは、平和利用を隠れ蓑としていることが明らかな軍事研究を拒否するためには有効である。

しかしながら、非軍事目的の研究開発を、軍事利用される可能性を理由に禁止すると、文明社会は成り立たない。この現実は、世界中の軍事組織が日本製のトラックや船外機を採用していることからも明らかだ。

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日本製トラックに乗ってイラク西部で活動する 
「イスラム国」の戦闘員(2014年1月)