今日は機械学習のお話ですが、機械学習と言えば機械学習によって一気に強くなった将棋ソフトがニコニコ動画の電王戦でプロをばったばったと倒して大変な騒ぎになっています。
そんな中で、昨日は(私の)将棋ソフトも読めない鬼手が飛び出る対局があり大興奮でした。王位戦第6局、羽生善治王位 対 木村一基八段です。
詳しくは、本家で。
木村八段の放った鬼手が、将棋ソフトにも鬼手だった件
さて、そんな将棋ソフトの天才プログラマが、機械学習の登場に嘆いているという記事が出ました。
[機械学習革命1]嘆く天才プログラマー
過去の将棋プログラムのアルゴリズムは、プログラマーが将棋の知識と経験を駆使して手作りしていた。鶴岡准教授はそれを「プログラムに魂を込める作業だった」と表現する。しかし、今のコンピュータ将棋には、プログラマーの魂は入っていない。にもかかわらず強い。だから嘆いているのだ。
機械やロボットに知性を与える仕事、つまりアルゴリズムを作り出す作業までもが、コンピュータに取って代わられているという事実だ。人間の考えるアルゴリズムよりコンピュータの計算するアルゴリズムが強くなったことに嘆いているとのことですが、確かに少しさみしいことかもしれませんが、そんな感傷に浸っている暇はありません。
機械学習の革命によって、今後様々な分野で激しい競争が繰り広げられることになります。
もっとも注目しているのは農業です。
農業の分野では今アメリカの遺伝子組み換え作物が席巻しています。これは畑を工場のように管理して、特定の農薬に強い作物を育てることで効率よく生産をしています。
その一方で、無農薬農法とか地域固有の伝統野菜の地産地消とかつつましい農業は、心のこもった物作りではありますが、効率から言えばまったく太刀打ちできていません。
でも、機械学習を使えば、もしかしたら対抗できるかもしれないのです。
市民農園とかやったことある人なら体験あるかと思いますが、土地にびたっと合う品種を植えるとほとんどなんにもしなくても、立派においしいものが育つことがあります。伝統野菜などは、そうやってその土地に合うものを長い時間をかけて育て上げられた品種なのです。そういうぴたっと合う作物を育てれば、肥料や農薬や手間はぐっと減らすことができます。
しかし、毎年天候は変わりますし、畑によっても向いている作物が違っていますから、そのとき何が合うかを見定めることは容易なことではありません。
そこで機械学習です。いろんな気候のいろんな場所のいろんな品種の成育データを取り学習させるのです。そうすることで、この土地では今年何を育てればいいか、そして育てている時、いつどんな世話をすればいいかを最適化していくことができるのです。
そうすれば、耕作放棄地でも、少ない手間で作物を作れるようになります。遺伝子組み換え作物を効率よく育てるには、畑自体も工場としての仕様を満たすように作り替えていかなければなりませんが、そんな負担もいりません。ほとんどあるがままの状態で育つものを育てればいいのです。無理にハウスにする必要もありません。
しかも、現代は温暖化によって毎年のように気象条件が変わって行きます。農家は柔軟に作る作物を変えていかなければなりません。機械学習の知識があれば、それも楽になることでしょう。
この方法では多様な品種が育てられることになります。そのこと自体、私たちがいろんな品種を楽しめるという豊かさも享受できますし、より生産が安定します。バナナは事実上世界で一種しか流通しておらず、その品種が病気になると一気に全滅して供給できなくなるという問題を抱えてます。
同じように遺伝子組み換え作物は、問題がないうちはいいですが、問題が出るとダメージが大きくなります。既に農薬に耐える雑草が生まれているという問題が顕在化しています。(例えば、深刻化する除草剤耐性雑草~傾向と対策 | FOOCOM.NET )
その問題のために大企業が莫大な費用をかけて、次なる対策を行っていきますが、一方機械学習ではどうでしょう。全国の農家が、片手間にいろんな品種を少量ずつデータを取りながら育てればいいのです。もともと家族や近隣向け(道の駅など)にいろいろ育ててますから、手間はほとんど変わりません。データを取ることに何らかのインセンティブを働かせてもいいでしょう。そうやって集めた膨大なデータを機械学習にかけて、どこで何をどう育てるのがいいか提案できるようにするのです。
機械学習は人間よりも優れたアルゴリズムを作れるようになりましたが、ではこの農業に導入して行く過程で機械学習の天才プログラマーたちは、なにもすることはないでしょうか。
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