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論文はスポーツ化し、本来の役目を失いつつある〜未来の研究成果発表の形〜 (2/2)

2014/05/02 22:45 投稿

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 前回は、学術界の論文が本来科学における「発見」とその「効果」を促進するための存在であったものが、自己目的化してしまったためにスポーツ化し、過剰なルールに縛られている現状を考えました。

 それは健全な状態ではありませんが、悲観的になる必要はありません。なぜならそれを横目に、どんどん新しい研究の姿が立ち現れているからです。

 たとえば、前回も紹介しましたが、V-Sido というニコニコ動画発のロボット制御技術は、ニコニコ動画をきっかけにクラタスという人間が乗れる大型ロボットとして製品化されました。野生の研究者がその成果を論文を通ることなく実用化にできる世の中です。

 このように、研究の分野は大学や研究所に閉じていません。もはや研究は誰にでもできるものだからです。そういえば、先日、小学生が自由研究でウニに視覚があることを見つけたことが紹介されていました。今調べてみたら、海外では2011年に先行研究があるようで、世界初というわけではなかったようですが、これもすごいことです。

 今問題になっている実験ノート、もしその小学生の実験ノートがずさんだからといって、その研究に価値はないでしょうか。あるいは、ここニコニコ動画のニコニコ技術部やニコニコ学会などで発表される多様で素晴らしい研究、これらの研究でも、綿密な実験ノートがあるかどうかというのはあまり重要ではありません。

 さらに、これらの研究にとって、それが権威ある論文になっているかどうかもあまり重要ではありません。

 研究の成果とは、新たな「発見」があり、それがなにかの「効果」を生み出していくことです。大学や研究所に縛られない人たちは、この「発見」と「効果」という成果に集中しています。

 論文はとても権威のあるものではありますが、その権威を守るために、どんどん厳格なレギュレーションを高めていっても、「発見」と「効果」が増えるわけではありません。あまり行き過ぎては、いつか論文に縛られない立ち場で自由に研究する人たちの成果から見劣りすることにもなりかねません。

 そんな状況に、科学者達も敏感に反応しています。

 前回も触れましたが、研究成果を youtube で公開することは海外を含めもはやごく普通です。それを見たドイツの学生が、日本の研究室に来るきっかけになったりなんてことも珍しくなく、youtube は人材を集めるという点では、論文に匹敵するところまできていると思います。それをきっかけに共同研究や実用化につながることもあるでしょう。研究者同士だって、動画は助けになるはずです。

 ニコニコ学会で発表するプロの研究者だっています。「発見」と「効果」を上手に伝えることについて、研究者は柔軟に対応しています。

 研究費獲得には、特許出願が重要なものも出ています。

 まだまだ例外的だと思いますが、今後論文以外の実績で採用が行われるようになれば、論文はいよいよ数ある成果発表の手段の一つに過ぎなくなるでしょう。
 
 分野によっては、まったく論文がなくても必要なことはできます。たとえば、動画を自身のサイトで公開した上で、 

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