TPPの大筋合意、結局日米共同宣言に盛り込まれませんでした。
首脳会談後も時間ギリギリまで交渉したとのことですが、結局「最後までかんばりました」という姿勢を見せるためのデモンストレーションで、合意に到達できる見込みはなかったように見えます。麻生さんもそうそうに中間選挙終わるまでは進展しないのではないかと、当面の棚上げ見通しを発言したようです。
長年の各国の努力によって自由貿易が進展し、私たちはとても便利な生活を手に入れました。食べ物・飲み物を取っても、世界中の食材を簡単に手に入れることができます。
しかし、それがある程度行き渡った今、それでも、完全な自由な貿易をと各国間で努力されていますが、なかなか進められなくなってきています。
もし、単純に経済的な効果だけを見れば、お互い得意なところを伸ばして、苦手なところを諦めていった方が経済成長できるかもしれません。いわゆるリカードの比較優位の法則です。全体の効果を見る民主主義的な考え方だと思います。
しかし、実際はこんな風に、お互い経済効果がマイナスであっても守るべきところは守りたいという部分が重要になってきています。単純に選挙の多数決だけを考えれば、通してもなんとかなるのではないかと感じますが、実際はそんな簡単な問題ではないのです。
もちろんTPPのデメリットを理詰めで説明することもできます。仮に国産の豚肉がなくなったら、今みたいにアメリカの豚肉が高騰したときに、もろに影響を受けてしまいます(今だって影響は受けますが)。つまり、リカードの比較優位の法則だけを考えてしまうと、どんどん地域・国が特化してしまいますが、実際には様々な問題が出てしまいますから、それも法則にして、それらのバランスを取ったところが落ち着くべき場所です。発展途上国などで、たとえばバナナといった単独の産業だけ起こしても人々の生活が全然豊かにならないこともその左証です。たとえば持続性という視点で見ると
学会の世界ではそういう議論もあるかもしれませんが、残念ながら政治の議論や私たちが触れるメディアではそのような議論は見当たりません。
それでも、つまり、そのような理論的背景がなくても、守らなくてはいけないもののため、全体の交渉が進まなくなっているのです。
これも先日
民主主義に隠れる「ネオ事なかれ主義」を身につける
で考えた「ネオ事なかれ主義」の一つの現れだと思います。悪く言えば、声の大きい業界団体の強い主張がまかり通っているという味方もできますが、逆に言えばきちんとロビー活動すれば多数派でなくても主張が通るということです。どの首相も民主主義の論理だけでは動けなくなっていますし、実際動かれて弱者切捨てを徹底されても困ります。
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