これまで、いろいろ右脳について見てきました。右脳を取り巻く状況は急速に変化しています。右脳というキーワードもそこそこはやっていますし、共感や物語、スピリチュアル、宗教など、実は右脳に関連するキーワードも含めると、相当な注目度です。
これらのキーワードは今のところ独立していますが、いまにその関連性が広く共有されるでしょう。その時には「右脳革命」とでも呼ばれる大変化が起こることでしょう。その大変化に主に20代はどう備えておけばいいのかが、今回のテーマです。
まずは、これまでの内容を踏まえてもう一度右脳について考えます。
1. 見えて来た右脳
右脳と言えば、これまでも感情を司るとか直感力や創造力の元とかいろいろ言われていて、右脳を鍛えようなんて話もたくさんあります。でも、遥か過去「読み書きそろばん」の頃から培われてきた左脳的な教育とは違って、右脳的な教育や訓練はまだ確立された体系があるわけではありません。例えば創造力を鍛えるといっても、その方法は玉石混交に乱立している状態です。一つの原因は左脳に比べ右脳はまだよく分かっていないからでしょう。特に右脳の前頭葉連合野はその役割がいまだはっきりとは分かっていないそうです。前頭葉連合野は人間の脳を他の哺乳類と比べた時に最も発達している部分と言われるにも関わらず。
そんな中、脳卒中を起こし一時左脳を失った脳科学者ジル・ボルト・テイラーさんが、その貴重な体験を克明に報告しました。そのTEDプレゼンは世界中の人に衝撃を与え、その再生数はすでに1000万回を超えています。
左脳が麻痺している間の彼女の体験は主に次のようなものでした。
・言葉や文字が使えなくなった。
・体は流体のように感じられ、周りの世界との境界はなくなり、一体感があった。
・その感覚は幸福感で満たされていた。
・人と会話はできないが、相手の態度や表情で考えていることは感じ取れた。(これはプレゼンでなく著書奇跡の脳: 脳科学者の脳が壊れたとき に書かれています)
この体験は、いわゆる神秘的な体験と呼ばれるものと極めて良く一致します。最近良く聞くインドのヴィパッサナー瞑想に行かれた方に話を伺ったら、大地との一体感を感じたとのこと。祈りのクライマックスで神との一体感が得られるとも聞きます。座禅は「論理的思考回路を切る」スイッチだそうです。
これらのことから、どうやら右脳には右脳なりの価値観・感じ方があるものの、私たち人間がそのイメージを体験するには、「論理的思考回路を切る」という困難な作業が必要なようです。テイラーさんはそれを左脳の脳卒中という死の直前まで行ってようやく体験しました。
さらに問題なのは、その体験は言語化が難しいということです。言語できちんと記述できるなら、数千年前にされていたことでしょう。でもその価値観・感じ方は言語化が難しく、21世紀の今でも「神秘的な」あるいは「スピリチュアルな」体験と表現されています。
しかし、言語化は難しいとはいえ、どうやらそれらの体験はかなり一致しているようです。決して得体の知れないものではなさそうです。
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