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教育は無償化するのか。3つのポイント

2013/07/04 11:55 投稿

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 大学の教育費はもっと下がるだろうという話をしていたら、教育は無償化に向かうという話が出てきたので、さらに考えてみようと思います。

 先日、【馬】どうなってる? 10年後の大学という記事で、大学費は価格破壊を起こすのではないかと考えました。

 とihayatoさんがちきりんさんのツイートを引用しながら、教育の無償化についてまとめています。

 子育て中のお父さんお母さん、安心してください。教育は無償化に向かいますよ 
教育無償化の動きは着々と進んでおり、特にテクノロジーを用いた取り組みが熱いです。これは重要なテーマですので、改めてまとめてみようと思います。
 果たして教育は無償化するのか、いくつかポイントをまとめてみました。

0 素晴らしいコンテンツは昔から増え続け、これからも増える。

 ちきりんさんとihayatoさんの紹介している内容の多くは、KhanAcadeny や東大の授業といった質の高いコンテンツがどんどん無料で出ているというものです。ここみらふつでも、1年以上前ですがあらゆる教材がどんどん出てくるで、取り上げました。

 この傾向は大変素晴らしいことですが、このこと自身は、遥か昔から着々と進んでいることです。つまり伝統的には教科書や参考書といったものです。教材は一度作ればずっと使えるので、年々レベルがあがります。本は基本的に有料ですが、図書館の利用や古本の利用など、工夫もできます。ネットに無料で公開されているテキストも増えていくことでしょう。

 それに加えて、授業の映像そのものも増えてきているのが現状です。派手な変化ではありますが、昔から勉強する人は、本でばりばりやっているわけで、教材の種類が増えて人によってはより学習しやすくなったという昔からの延長線上にある変化と言えます。

1 学習者に合わせて伸ばすには。

 しかし、いくら教材が増えて良くなったからといって、教育はそれだけではありません。

 たとえば、学習者が課題を修了する度、次なにをするべきか。もちろん教科書の順番でもいいのかもしれませんが、それだけが答えではないですよね。学習者の興味に合わせて、やりたいところをどんどん進めてもいいはずです。先の学年の参考書を入手してどんどんやってもいいでしょう。
 そこに良い指導者がいるとうまく水を向けられます。高校の頃数学が好きでしたが、塾の先生が高木貞治「解析概論」という大学生向けの教科書を薦めてくれました。全部はとても無理で微分の定義辺りまで読んだ記憶がありますが、とても面白かったのです。

 そういった学習者の知らない世界は自分で開拓するのは難しいですから、他人の力が必要です。たとえば良い先生などです。

 でも、ネットや教材が発達すれば、たとえば教材はリンクだらけで、興味があればどんどん深堀できるとか、勉強のソーシャルネットで、先生というか先輩の様子を見て、それを真似るとか、単にネットで興味あること検索してたら、どんどん発展できるとか、この項目についてもどんどん捗りそうです。

2 学習者がつまづいたら。

 うちの長男は公文をしています。基本自分で進めていますが、見ていると、たまにスランプに陥ります。1枚5分程度が標準かと思いますが、1時間かかったりします。やればなんとかできるのですが、手につかない時間が大半です。ただやれと言ってもうまくいかなくて、なにか手につかない障害があるのです。

 そんなときは、抜け出す方法をあれこれ考えてあげます。1問やったら一休み、次は2問やったら一休み、みたいなちょっとした工夫です。理論もやります。やる気はやり始めないとやる気が出ないから、とにかく目の前に宿題を出す、とか、簡単のから始めるとかです。そういうのを教え込むと、自分で工夫するようになりますが、それでもダメな時はまた新しい工夫を教えるなどです。

 これについて、良い先生がいて外からうまく手を差し伸べられれば学習者は大いに助かるでしょう。

 しかし、これもネットや教材が発展すれば、ソーシャルでお互い刺激しあったり、ゲーミフィケーションを取り入れた教材で、楽しんで学べるなど、この項目もどんどん捗りそうです。

 ガイドはどうでしょう。学習者がなかなかある項目を理解できないとき。優れた教材がたくさんあれば、それのどれかは、その学習者にぴたりと合うのがあるでしょう。でも、学習者がそれに当たるまで何度も違う教材を読むのは非効率です。良い先生なら、その学習者の「癖」を知っていて、この教材がよさそうだとあたりをつけた方がぐんと効率が上がります。

 これも、ソーシャルなつながりがあれば仲間でかなり補いあえそうです。

2.5 でも、資本主義だから教育費は下がらない?

 ということで、教材以外の要素1、2についても、ネットや教材の有機的な進化によって、低いコストで実現できそうです。今後勉強は多くの人にとってもっともっと楽しいものになるでしょう。それこそパズドラみたいにです。

 それでは本当に教育は無償になるのでしょうか。

 それはそんなに単純ではありません。上記の1、2でも書いたように、ネットや教材がいくら進化したところで、その分、それを超える先生も出てきます。学習者を適切に伸ばしたり、つまづいた時に手を差し伸べたり、どんぴしゃのタイミングで「いまでしょ」と言える指導者。

 資本主義である以上、そういう人に対価を払う親はいるでしょう。いくらネットや(無償の)教材が増えても、それをうまく活用する支援など、いくらでも新たな有償サービスが開発されるでしょう。つまり、それは、結局、親が教育費に払える分まで行われます。
 
 様々な学問を修めるのに必要な教材は、本が普及して図書館が普及された時点で、だいたい無償で揃えることが可能な時代に入りました。でも親はそれ以上に教育費を工面して有償のより良い教育を子に与えようとするのです。

 先日の【馬】どうなってる? 10年後の大学という記事で大学費の価格破壊が起こるのではという視点は、それとはちょっと違って、高い学費を払って大学に行っても、それをカバーできる分給料の良いところに行けるわけではなくなってきたというものです。大学は就職に直結しているので、シビアにならざるを得ません。費用対効果が見込めるところまでは下がるだろうということです。

3 教育費を押し下げる真の要因

 ではやはり教育費は下がらず、家計を圧迫するのでしょうか。

 なぜそんなに教育費をかけなければならないのか。それは単一基準の競争社会だからです。日本の全学生は画一的な試験による偏差値で一列に並べられ、トップの人から順にいい大学に行き、いい会社に入り、いい給料をもらえるからです。最終的にはそこまで単純ではないですが、子どもに20年のオーダーで育てるには、その仕組み前提に動かざるを得ませんでした。

 単一基準ですから、教育手法が高度に発達し、つまりお金をかければかけるだけ成果が出せるサービスが産まれます。親がぶちこめる金の量で、単一基準のどこまであがれるかが決まって来るわけです。ですから、親は自分が苦しいぎりぎりまで教育費をかけなければならないし、ですから、それぞれの親にとってそれぞれ教育費は高いものになってしまいます。

 でもそんな世界は過去になりつつあります。

 範囲の決まった学習範囲の中から作られる試験でいくら卒なく点を稼いでも、実社会で求められる真の実力になりません。いま求められている能力はそういうものではなくなってきています。逆に言えば、そういう型にはまった方法で高められる能力でできることは、高度成長期に大いに発展し、とりあえずできるところまでやってしまったのです。

 今求められるものは、そういうものではなくなってきました。たとえば、

 「ニッポンは“使えない人”だらけ?」 過熱するグローバル人材狂想曲 

に、
だが、その一方で、グローバル時代における新卒社員に求められる能力はというと、上位3位を、「主体性」「規律性」「好奇心・チャレンジ精神」が占めた。
とあります。「規律性」は古典的な教育で育ちそうですが、「主体性」「好奇心・チャレンジ精神」を育てようと思ったとき、お金をかければかける程育つでしょうか。そこまで、成熟した分野ではありません。

 そもそも、何を育てればいいかというのは、今社会全体で共有しているわけでもなく、仮にお金をかけて「主体性」「好奇心・チャレンジ精神」を育てたところで、「おお、この子は大人になったら安定して高給な職につけるね」という社会的なコンセンサスもありません。単なる親の教育方針です。言葉を変えればステータスになりません。有名塾に行った、有名中高や大学に行ってるというような効果はないのです。そういうことに高いお金をかけるのは割とリスクです。お金かけるとしてもほどほどに、たとえばサマースクールに行かせて「主体性」「好奇心・チャレンジ精神」が育ってほしいくらいが、多くの親の感覚ではないでしょうか。

 つまり、お金のかけようが難しいのです。

 さらに、そんなことより、親として社会をどのように捉え、どういう能力を伸ばしておくかの方が遥かに難しい問題です。大枚はたいて有名塾にいれて、子がそれについていければ将来安泰なんてことはありません。その塾で生活時間が忙殺されることで、「主体性」「好奇心・チャレンジ精神」はあまり育たないかもしれません。そのリスクすら考えなければならないのです。

 教育サービスがリストに並んで、お金のある人から順番に上から選び、それがその子の将来の給料を決めるという時代ではありません。

 これこそが真に教育費を下げる要因です。お金ではなく知恵を絞らないといけません。お金はかからないかもしれませんが、それはむしろ親にとって、より「困難」な時代なのです。
 
・併せてどうぞ
【馬】どうなってる? 10年後の大学

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