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■■■■■-ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-
■■■■
■■■ のりこえねっと通信 0019号 2014年2月26日発行
■■
■ ◆転送歓迎◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★メールアドレスのご変更等は、info@norikoenet.org までご連絡下さい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
賛同者の皆さま のりこえねっと通信をお読みの皆さま
関東南部は、2週間連続の大量降雪とうって変り、暖かくなりました。それ
とともにまた動き出すのが、ヘイトデモ。22日には銀座を舞台にまたして
も「日韓断交」と聞くに堪えないシュプレヒコールでデモが行われました。
しかし不思議なのは、ネトウヨから「特亜」とか言われている中国にも憎悪
が浴びせられているにもかかわらず、「日中断交」とは言わないこと。日本
経済が、中国抜きにしては生きていけないことはわかっているのでしょう。
ある意味とても正直でせこい考え方だと思います。
〈今号の目次〉
1.のりこえねっとTVのお知らせ
2.2月19日放映ののりこえねっとTV報告
3.第3回のりこえねっとセミナー報告(2/19)
4.差別落書き消し隊 3月2日 第一回大久保大掃除の日
5.新聞・雑誌・Webから~アンネの日記破損事件ほか
6.のりこえねっと公式ツイッター始めました!
7.編集後記
●1.「なぜ、「愛国者」が憂鬱になるのか 鈴木邦男×安田浩一」
のりこえねっとTVは毎週水曜日22時から生放送です!!ぜひご覧下さい。
◎放送日時 2/26(水) 22:00-23:00
◎ニコニコ生放送入口URL
http://live.nicovideo.jp/watch/lv169634308
◎放送内容
『週刊金曜日』とのコラボレーションです。
共同代表、鈴木邦男氏が坂本龍一氏との対談を実現させた本、『愛国者の憂
鬱』(週刊金曜日刊)をベースに本当の「愛国」とは何か、ヘイトスピーチ
を生み出す今の日本を覆う空気は何かなど、ジャーナリストの安田浩一氏と
じっくり話します。
ぜひご覧いただきますようお願い致します。
◆視聴方法についてあらためて記載します。
【視聴方法】
▼初回にニコニコ動画に会員登録が必要です。(一般会員は無料です)
http://www.nicovideo.jp/
▼メールアドレスとニックネーム、性別、年齢等のプロフィール、
パスワードを登録してください。
▼そして、以下にアクセスするとのりこえねっとTVをご覧いただけます。
http://ch.nicovideo.jp/norikoenet-tv
※ブロードバンドのインターネット環境、もしくはLTE通信環境のスマート
フォンなどからもご覧頂けます。あらかじめタイムシフト予約をしていると
放映後1週間以内はいつでも見ることができます。
●2.のりこえねっとTV報告
◆2月12日放送
◎「連続大量差別葉書事件から今を考える 」
出演:浦本誉至史(差別脅迫被害者)×辛淑玉共同代表
2003~04年、部落出身者やハンセン病患者に対し、数百回もの差別葉書の送
付など嫌がらせ・脅迫が行われました。被差別者同士をも陥れるような行為
もあり、関係者が必死に犯人を捜し、真相究明につとめた結果、2004年10月
に犯人が脅迫罪で逮捕されました。犯人は懲役2年の実刑判決を受け服役。
出獄後、2008年に行われた糾弾会では、「逮捕されて裁判などで被害者の生
の声を見聞きしなければ問題が理解できなかった……被害者に心から謝罪し、
二度と差別をしないことを誓う」と反省し謝罪の弁をのべています。今回は、
著しい脅迫被害を受けながら、差別者=犯人とその後関わりを持ってきた浦
本さんに、当時の心境・犯人との対話、ヘイトスピーチが街頭で広がるよう
になった日本社会への警鐘などを辛淑玉共同代表が伺いました。
浦本さんは差別葉書が毎日送りつけられた540日間、それこそ生き地獄で布
団の中で泣いたと語ります。本人だけでなく、周辺住民にも追い出すよう扇
動する手紙が送りつけられました。差別の扇動に乗った住民は、「被差別部
落を知らないので差別しようがないし、差別しようと思ったこともなく他意
はないが、被差別部落出身者は出ていってほしい」と主張したそうです。こ
れについて視聴者から、悪気がなかったから差別じゃないとの主張は在特会
にも通じるとのコメントが寄せられました。
加害者は法廷で、偶然触れた本とネットに書かれた被差別部落像に接し差別
することが正義と考えた、たまたま見た「浦本誉至史」という名前が気にい
らず差別しようと葉書を送ったが、脅迫などの法は犯していないと主張しま
した。そもそも表現の自由として差別が憲法で保障されているとも。浦本さ
んとは一面識もない普通の若者だったそうです。
浦本さんは加害者と1年間手紙をやり取りしました。加害者は、最後の法廷
で浦本さんが苦しみや心情を述べたときに初めて生身の浦本さんに触れ、す
まないと思ったと書いてきたそうです。大卒後10年も就職できず、派遣で働
いても3か月で打ち切られ、友人もなく家でも孤独だった加害者にも誇りや
理解を求める気持ちがあり、利害も面識もない他者を差別することで一時的
に生きる力を得るという歪んだ自己表現に陥ってしまっていたのだろうと浦
本さんは言います。
構造的な差別を強いられた人々に対する憎悪の扇動=ヘイトスピーチが昨年
は500件を超えた現状について、経験を踏まえてどう見るかとの問いに、浦
本さんは「社会の中に断絶があり若者のおかれた状況を中高年世代がわかっ
てない、若者がなぜこんな事件を起こすのか理解しようとしてないようだ。
当事者の自分が加害者と話して初めて、仕事に就けても不安定就労に苦しみ、
個人のプライドもあるのに踏みにじられる若者の置かれた立場を理解した。
一方で加害者は被害者がどんなに苦しむか知る機会がないので、差別問題を
意識できない」と語ります。ここで「被害者の立場で赦すことの意味は?」
とのコメントに、「赦すとか赦さないというのではなく、なぜそうなったの
か真実を知りたい、被害者のトラウマを癒やすのに重要だから」と答えまし
た。
続けて浦本さんは「孤立して誰にも理解してもらえない彼には、面識もない
私を傷つけることが唯一の自己主張になったようだ。存在を主張しようとし
ているので被害者が黙ってしまうと自分が無視されたと思う身勝手さがあり、
無視や泣き寝入りはむしろ事態を悪化させる。見えない相手に声を出し続け
るのは逃げたいほど苦しいが、勇気をもって声を上げると仲間ができ、主張
すれば必ず理解者が生まれる。理解者がいること自体が勇気となり実際に頑
張れたりする。加害者になくて、私にあったのはそのつながりだった。」
「現在のヘイトについては一概には言えないが、なにがしかの孤独や無知な
どがなければああした行動にはならないような気がする。つながりだけで勝
てるのかわからないが、なければ必ず負ける。見えないところで中傷し出自
を叩くことは人を殺すことなのに、それがなかなか理解されない。理解でき
ない相手側も種々の問題を抱えていると述べ、被害者ばかりが頑張らなくて
はならない状況はつらいが、残念ながら現状はそうだ」とも語りました。辛
さんは、被害者・加害者・第三者を切り分け、第三者は代弁者になるのでは
なく、再発防止に努力すべきと指摘しました。
現在の加害者について「反省してくれてありがたく、早く生活を再建してほ
しい。厳しい生活状況が変わらなければストレス自体は続くので彼も苦しい
だろう。被害者の状況も気持ちも知ることがなかったので何も感じなかった
という無知の克服が重要な課題」と強調しました。「今回は解決できた希有
の事例だが、『差別と思わなかった。教えられなかった』では済まされず、
それを伝え切れなかったことを既成世代は反省すべき」と述べ、辛さんが差
別は自分自身をも壊していくと締めて終わりました
●3. 第3回のりこえねっと連続セミナー報告(2月19日)
「連続大量差別葉書事件から今を考える」
講師:浦本誉至史(研究者・連続大量差別はがき事件被害者)
セミナーの内容は、のりこえねっとTVの放送と重なる部分も多いので、割愛
しますが、犯人逮捕までに至る経緯や中高年世代と若者世代との隔絶につい
て、より詳しく話をされました。
参加された方より感想が寄せられましたので、掲載します。
「生まれ育った町に小さな『部落』があり、在日もまた少なくなかった。労
組の闘士だった父には差別者の一面もあり、根拠のない漠然とした左翼意識
と差別意識とを空気のごとく吸って育った。頭で理解する「差別=いけない
こと」と潜在意識に潜む差別意識とのギャップはいまなお静かな葛藤を繰り
広げる。韓国語は、生計の資であると同時にそのギャップを乗り越えるため
の手段なのかもしれない」 (韓国語翻訳家 52歳)
「浦本さんのお話は、本当に想像を超える厳しさと驚きの日本の現実を目の
当たりにする時間でした。そして、今の日本の若者に対する深い思いやりに
感じ入りました。本当に若者の未来はどうなってしまうのでしょう。確かに
東京に住んでいると、同和や部落という言葉に触れることはありませんね。
私が同和問題に始めて直面したのは、風水の師匠の差別発言でした『同和地
区は陰陽道だから風水は出来ない』とか『怪しい? 不思議な神社があると
ころは同和地区』『御師、先達地区は同和地区だから言葉に気をつけなさい』
。今にして思うと、まったく的外れと思われる同和地区への知識でした。」
●4.「差別らくがき消し隊」のご案内 3月2日(日)
2013年のヘイトデモは360件にのぼり、その他のレイシズムの活動を
加えると年間500件以上になります。他者を侮蔑する言葉や恐怖に陥れる
差別の扇動は、司法で有罪がくだされた今も、「倍返し」との掛け声と共に、
現在も止む気配がありません。その延長線上に差別落書きがあります。
今年2月の有志による現地調査では、新大久保の駅周辺で53件の差別落書
きが発見されました。心痛めた多くの人が、個別に落書きを消して来ました
が、残念ながらイタチごっこが繰り返されています。それでも、私達は、こ
のまま放置することは、レイシズムを認め、常態化することであり、被差別
者への脅迫であると考えます。
現地調査を行った有志から、3月2日の日曜日に差別らくがきを消す、差別
らくがき消し隊」の活動が下記のように行われるとの連絡をいただきました。
私たちはこの活動を全面的に支援すると同時に、この差別落書きを消す行動
への参加を呼びかけます。残念ながら差別落書きは一度消したからと終わら
ず、また書かれることが予想されます。私たちはこの粘り強くこの活動を支
援していきます。
【第一回 新大久保大掃除の日】
■日時:2014年3月2日(日)10:00~13:00
■集合場所:新大久保改札を右に出て、ガードの横にある喫煙所
「差別らくがき消し隊」のぼりが目印
■準備物:主催者の方で、ビニール手袋とマスクなどを準備します。
■参加者:50名(予定)
5~6グループに分けて、らくがきを消していきます。
■主催:差別らくがき消し隊
■当日の問合せ:のりこえねっと 副事務局長 川原栄一
Mail: kawaharaeiichi01@gmail.com
Tel: 090-7802-2700
新大久保駅周辺 差別らくがき発見箇所マップ:http://goo.gl/TyBDUI
発見された差別らくがきの記録写真:http://goo.gl/2Da5a8
●5.新聞・雑誌記事より
1)図書館:「アンネ」193冊次々破損 都内3区で毎日新聞 2月21日
山本浩資
世界的ベストセラー「アンネの日記」の著者、アンネ・フランク(192
9~45)の関連図書のページが東京都内の公立図書館で次々と破られ、少
くとも練馬、新宿、杉並の3区で計193冊の被害が確認された。さらに増
える可能性もあり、図書館側は器物損壊に当たるとして警視庁に被害届を出
すなど警戒している。
http://mainichi.jp/select/news/20140221k0000m040152000c.html
2)アンネの日記破損 警視庁が捜査本部
NHK 2月24日17時57分
東京都内の公立図書館で、「アンネの日記」や関連する本のページが破られ
ているのが相次いで見つかった事件で、被害は8つの区と市で少なくとも3
06冊に上り、警視庁は器物損壊などの疑いで捜査本部を設置し本格的な捜
査を始めました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140224/k10015493181000.html
3)はだしのゲン 都内で撤去請願 教委・議会に14件
東京新聞 2月21日 朝刊 (飯田孝幸、樋口薫、大平樹)
原爆投下後の広島を描いた漫画「はだしのゲン」を教育現場から撤去するよ
う求める請願や陳情が昨年九月以降、東京都と都内の区市の教育委員会・議
会に計十四件提出されたことが、東京新聞の調査で分かった。松江市の小中
学校で閲覧制限問題が発覚して以降、作品を子どもたちから遠ざけようとい
う動きが浮かび上がる。全国の道府県教委も調べたところ、都以外では請願
は出されていない。東京での議論が全国の平和教育のありように影響を与え
る可能性もある。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014022102000111.html
●6.のりこえねっと公式Twitter始めました! @norikoenet
https://twitter.com/norikoenet
のりこえねっと公式Twitter始めました。様々な情報を発信していきます。
ぜひ、多くの方々からのフォローをお待ちしております。
ご意見やのりこえねっとTVの感想、ヘイト情報、反レイシズムについてなど、
さまざまな意見をお寄せ下さい。ハッシュタグは #norikoenet です。
●7.編集後記
のりこえねっとTVとセミナーで浦本さんの話を伺いました。とても内容の濃
いお話で、そのためかTVのまとめをお願いしているMさんからとても長いま
とまった報告を頂きました。それでも時間の関係でお話できなかったことも
あるので、以前伺った時の話で一つだけ紹介します。400件以上の差別脅
迫事件を起こした加害者がなぜ反省し謝罪するに至ったのか、その一つに刑
務所での経験があったということです。雑居房でさまざまな罪を犯した人た
ちが収監されて集まってくるわけですが、収監初日に自分が犯した罪につい
て話すのだそうです。そこで加害者の彼が自分のやったことを言うと、周り
の受刑者が「俺たちも悪いことをいろいろしてきたが、おまえのやったこと
は許せない。一番ひどい奴だ」といじめられたそうです。エリート意識を持
つ加害者が、たぶん刑務所という、一番社会の中で虐げられてきた層の人々
が多いところで、そういうように指弾されることは想像もできなかったので
しょう。そこで自分のやったことのひどさを初めて意識したのだとしたら、
彼は刑務所の同房の人々に感謝しなければならないと思います。まさに刑務
所が彼にとっての「私の大学」だったのです。
今度の日曜日は「差別落書き消し隊」による第一回新大久保大掃除の日が行
われます。のりこえねっとも参加します。お時間がある方はぜひご一緒して
いただければ幸いです。(か)
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■のりこえねっと通信 0019号 2014年2月26日発行
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発行:のりこえねっと事務局
運営団体:のりこえねっと
〒169-0072
東京都新宿区大久保2-7-1大久保フジ
ビル 311 ペンの事務所気付
Tel.03-5155-0385/Fax.03-5155-0383
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(C) のりこえねっと All rights reserved.
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が浴びせられているにもかかわらず、「日中断交」とは言わないこと。日本
経済が、中国抜きにしては生きていけないことはわかっているのでしょう。
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2.2月19日放映ののりこえねっとTV報告
3.第3回のりこえねっとセミナー報告(2/19)
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5.新聞・雑誌・Webから~アンネの日記破損事件ほか
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●1.「なぜ、「愛国者」が憂鬱になるのか 鈴木邦男×安田浩一」
のりこえねっとTVは毎週水曜日22時から生放送です!!ぜひご覧下さい。
◎放送日時 2/26(水) 22:00-23:00
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鬱』(週刊金曜日刊)をベースに本当の「愛国」とは何か、ヘイトスピーチ
を生み出す今の日本を覆う空気は何かなど、ジャーナリストの安田浩一氏と
じっくり話します。
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●2.のりこえねっとTV報告
◆2月12日放送
◎「連続大量差別葉書事件から今を考える 」
出演:浦本誉至史(差別脅迫被害者)×辛淑玉共同代表
2003~04年、部落出身者やハンセン病患者に対し、数百回もの差別葉書の送
付など嫌がらせ・脅迫が行われました。被差別者同士をも陥れるような行為
もあり、関係者が必死に犯人を捜し、真相究明につとめた結果、2004年10月
に犯人が脅迫罪で逮捕されました。犯人は懲役2年の実刑判決を受け服役。
出獄後、2008年に行われた糾弾会では、「逮捕されて裁判などで被害者の生
の声を見聞きしなければ問題が理解できなかった……被害者に心から謝罪し、
二度と差別をしないことを誓う」と反省し謝罪の弁をのべています。今回は、
著しい脅迫被害を受けながら、差別者=犯人とその後関わりを持ってきた浦
本さんに、当時の心境・犯人との対話、ヘイトスピーチが街頭で広がるよう
になった日本社会への警鐘などを辛淑玉共同代表が伺いました。
浦本さんは差別葉書が毎日送りつけられた540日間、それこそ生き地獄で布
団の中で泣いたと語ります。本人だけでなく、周辺住民にも追い出すよう扇
動する手紙が送りつけられました。差別の扇動に乗った住民は、「被差別部
落を知らないので差別しようがないし、差別しようと思ったこともなく他意
はないが、被差別部落出身者は出ていってほしい」と主張したそうです。こ
れについて視聴者から、悪気がなかったから差別じゃないとの主張は在特会
にも通じるとのコメントが寄せられました。
加害者は法廷で、偶然触れた本とネットに書かれた被差別部落像に接し差別
することが正義と考えた、たまたま見た「浦本誉至史」という名前が気にい
らず差別しようと葉書を送ったが、脅迫などの法は犯していないと主張しま
した。そもそも表現の自由として差別が憲法で保障されているとも。浦本さ
んとは一面識もない普通の若者だったそうです。
浦本さんは加害者と1年間手紙をやり取りしました。加害者は、最後の法廷
で浦本さんが苦しみや心情を述べたときに初めて生身の浦本さんに触れ、す
まないと思ったと書いてきたそうです。大卒後10年も就職できず、派遣で働
いても3か月で打ち切られ、友人もなく家でも孤独だった加害者にも誇りや
理解を求める気持ちがあり、利害も面識もない他者を差別することで一時的
に生きる力を得るという歪んだ自己表現に陥ってしまっていたのだろうと浦
本さんは言います。
構造的な差別を強いられた人々に対する憎悪の扇動=ヘイトスピーチが昨年
は500件を超えた現状について、経験を踏まえてどう見るかとの問いに、浦
本さんは「社会の中に断絶があり若者のおかれた状況を中高年世代がわかっ
てない、若者がなぜこんな事件を起こすのか理解しようとしてないようだ。
当事者の自分が加害者と話して初めて、仕事に就けても不安定就労に苦しみ、
個人のプライドもあるのに踏みにじられる若者の置かれた立場を理解した。
一方で加害者は被害者がどんなに苦しむか知る機会がないので、差別問題を
意識できない」と語ります。ここで「被害者の立場で赦すことの意味は?」
とのコメントに、「赦すとか赦さないというのではなく、なぜそうなったの
か真実を知りたい、被害者のトラウマを癒やすのに重要だから」と答えまし
た。
続けて浦本さんは「孤立して誰にも理解してもらえない彼には、面識もない
私を傷つけることが唯一の自己主張になったようだ。存在を主張しようとし
ているので被害者が黙ってしまうと自分が無視されたと思う身勝手さがあり、
無視や泣き寝入りはむしろ事態を悪化させる。見えない相手に声を出し続け
るのは逃げたいほど苦しいが、勇気をもって声を上げると仲間ができ、主張
すれば必ず理解者が生まれる。理解者がいること自体が勇気となり実際に頑
張れたりする。加害者になくて、私にあったのはそのつながりだった。」
「現在のヘイトについては一概には言えないが、なにがしかの孤独や無知な
どがなければああした行動にはならないような気がする。つながりだけで勝
てるのかわからないが、なければ必ず負ける。見えないところで中傷し出自
を叩くことは人を殺すことなのに、それがなかなか理解されない。理解でき
ない相手側も種々の問題を抱えていると述べ、被害者ばかりが頑張らなくて
はならない状況はつらいが、残念ながら現状はそうだ」とも語りました。辛
さんは、被害者・加害者・第三者を切り分け、第三者は代弁者になるのでは
なく、再発防止に努力すべきと指摘しました。
現在の加害者について「反省してくれてありがたく、早く生活を再建してほ
しい。厳しい生活状況が変わらなければストレス自体は続くので彼も苦しい
だろう。被害者の状況も気持ちも知ることがなかったので何も感じなかった
という無知の克服が重要な課題」と強調しました。「今回は解決できた希有
の事例だが、『差別と思わなかった。教えられなかった』では済まされず、
それを伝え切れなかったことを既成世代は反省すべき」と述べ、辛さんが差
別は自分自身をも壊していくと締めて終わりました
●3. 第3回のりこえねっと連続セミナー報告(2月19日)
「連続大量差別葉書事件から今を考える」
講師:浦本誉至史(研究者・連続大量差別はがき事件被害者)
セミナーの内容は、のりこえねっとTVの放送と重なる部分も多いので、割愛
しますが、犯人逮捕までに至る経緯や中高年世代と若者世代との隔絶につい
て、より詳しく話をされました。
参加された方より感想が寄せられましたので、掲載します。
「生まれ育った町に小さな『部落』があり、在日もまた少なくなかった。労
組の闘士だった父には差別者の一面もあり、根拠のない漠然とした左翼意識
と差別意識とを空気のごとく吸って育った。頭で理解する「差別=いけない
こと」と潜在意識に潜む差別意識とのギャップはいまなお静かな葛藤を繰り
広げる。韓国語は、生計の資であると同時にそのギャップを乗り越えるため
の手段なのかもしれない」 (韓国語翻訳家 52歳)
「浦本さんのお話は、本当に想像を超える厳しさと驚きの日本の現実を目の
当たりにする時間でした。そして、今の日本の若者に対する深い思いやりに
感じ入りました。本当に若者の未来はどうなってしまうのでしょう。確かに
東京に住んでいると、同和や部落という言葉に触れることはありませんね。
私が同和問題に始めて直面したのは、風水の師匠の差別発言でした『同和地
区は陰陽道だから風水は出来ない』とか『怪しい? 不思議な神社があると
ころは同和地区』『御師、先達地区は同和地区だから言葉に気をつけなさい』
。今にして思うと、まったく的外れと思われる同和地区への知識でした。」
●4.「差別らくがき消し隊」のご案内 3月2日(日)
2013年のヘイトデモは360件にのぼり、その他のレイシズムの活動を
加えると年間500件以上になります。他者を侮蔑する言葉や恐怖に陥れる
差別の扇動は、司法で有罪がくだされた今も、「倍返し」との掛け声と共に、
現在も止む気配がありません。その延長線上に差別落書きがあります。
今年2月の有志による現地調査では、新大久保の駅周辺で53件の差別落書
きが発見されました。心痛めた多くの人が、個別に落書きを消して来ました
が、残念ながらイタチごっこが繰り返されています。それでも、私達は、こ
のまま放置することは、レイシズムを認め、常態化することであり、被差別
者への脅迫であると考えます。
現地調査を行った有志から、3月2日の日曜日に差別らくがきを消す、差別
らくがき消し隊」の活動が下記のように行われるとの連絡をいただきました。
私たちはこの活動を全面的に支援すると同時に、この差別落書きを消す行動
への参加を呼びかけます。残念ながら差別落書きは一度消したからと終わら
ず、また書かれることが予想されます。私たちはこの粘り強くこの活動を支
援していきます。
【第一回 新大久保大掃除の日】
■日時:2014年3月2日(日)10:00~13:00
■集合場所:新大久保改札を右に出て、ガードの横にある喫煙所
「差別らくがき消し隊」のぼりが目印
■準備物:主催者の方で、ビニール手袋とマスクなどを準備します。
■参加者:50名(予定)
5~6グループに分けて、らくがきを消していきます。
■主催:差別らくがき消し隊
■当日の問合せ:のりこえねっと 副事務局長 川原栄一
Mail: kawaharaeiichi01@gmail.com
Tel: 090-7802-2700
新大久保駅周辺 差別らくがき発見箇所マップ:http://goo.gl/TyBDUI
発見された差別らくがきの記録写真:http://goo.gl/2Da5a8
●5.新聞・雑誌記事より
1)図書館:「アンネ」193冊次々破損 都内3区で毎日新聞 2月21日
山本浩資
世界的ベストセラー「アンネの日記」の著者、アンネ・フランク(192
9~45)の関連図書のページが東京都内の公立図書館で次々と破られ、少
くとも練馬、新宿、杉並の3区で計193冊の被害が確認された。さらに増
える可能性もあり、図書館側は器物損壊に当たるとして警視庁に被害届を出
すなど警戒している。
http://mainichi.jp/select/news/20140221k0000m040152000c.html
2)アンネの日記破損 警視庁が捜査本部
NHK 2月24日17時57分
東京都内の公立図書館で、「アンネの日記」や関連する本のページが破られ
ているのが相次いで見つかった事件で、被害は8つの区と市で少なくとも3
06冊に上り、警視庁は器物損壊などの疑いで捜査本部を設置し本格的な捜
査を始めました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140224/k10015493181000.html
3)はだしのゲン 都内で撤去請願 教委・議会に14件
東京新聞 2月21日 朝刊 (飯田孝幸、樋口薫、大平樹)
原爆投下後の広島を描いた漫画「はだしのゲン」を教育現場から撤去するよ
う求める請願や陳情が昨年九月以降、東京都と都内の区市の教育委員会・議
会に計十四件提出されたことが、東京新聞の調査で分かった。松江市の小中
学校で閲覧制限問題が発覚して以降、作品を子どもたちから遠ざけようとい
う動きが浮かび上がる。全国の道府県教委も調べたところ、都以外では請願
は出されていない。東京での議論が全国の平和教育のありように影響を与え
る可能性もある。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014022102000111.html
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●7.編集後記
のりこえねっとTVとセミナーで浦本さんの話を伺いました。とても内容の濃
いお話で、そのためかTVのまとめをお願いしているMさんからとても長いま
とまった報告を頂きました。それでも時間の関係でお話できなかったことも
あるので、以前伺った時の話で一つだけ紹介します。400件以上の差別脅
迫事件を起こした加害者がなぜ反省し謝罪するに至ったのか、その一つに刑
務所での経験があったということです。雑居房でさまざまな罪を犯した人た
ちが収監されて集まってくるわけですが、収監初日に自分が犯した罪につい
て話すのだそうです。そこで加害者の彼が自分のやったことを言うと、周り
の受刑者が「俺たちも悪いことをいろいろしてきたが、おまえのやったこと
は許せない。一番ひどい奴だ」といじめられたそうです。エリート意識を持
つ加害者が、たぶん刑務所という、一番社会の中で虐げられてきた層の人々
が多いところで、そういうように指弾されることは想像もできなかったので
しょう。そこで自分のやったことのひどさを初めて意識したのだとしたら、
彼は刑務所の同房の人々に感謝しなければならないと思います。まさに刑務
所が彼にとっての「私の大学」だったのです。
今度の日曜日は「差別落書き消し隊」による第一回新大久保大掃除の日が行
われます。のりこえねっとも参加します。お時間がある方はぜひご一緒して
いただければ幸いです。(か)
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■のりこえねっと通信 0019号 2014年2月26日発行
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