ニューヨークに住む50歳のアリスは言語学者で大学教授。夫婦関係も良好、子どもたちも成長し、キャリアも安定、と幸せのただなかにいる彼女が、ある日、簡単な言葉が出なくなったり、大学のなかで道に迷ったり、と自分に悪いことが起きていることを実感。「若年性アルツハイマー病」の診断を受けます。
言語学という、言葉のプロフェッショナルが、言葉を失うことになるという苦しみは計り知れないもの。毎日「住んでいる場所は?」「娘の名前は?」といった自分への質問を繰り返すなど必死に病気の進行を遅らせようとするのですが、症状は重くなるいっぽうです。
アリスが自分へのメッセージに込めたもの自分の変化に戸惑いながら、抵抗するアリスが、未来の自分にあてたビデオメッセージを残すシーンはとても切ないものでした。
「若年性アルツハイマー病」というのはとても珍しい病気ですが、「アルツハイマー病」については、いまの日本全体が抱えている問題でもあります。症状の深刻さや介護の大変さが問題になっていますが、本人の苦しみや戸惑いの大きさも大変なものだということを、世代の違いがあるとはいえ、アリスがビデオメッセージに託した思いから感じました。
この作品で今年のアカデミー賞の主演女優賞を受賞したジュリアン・ムーアの演技はすばらしく、だからこそ感情移入できる部分も大きいと思います。
ひとは過去の幸せな記憶に慰められることが多いものです。モノを失うことはあっても、幸せな記憶はずっと持ち続けられると考えがちですが、そうとはかぎらない。
記憶を奪われてしまったら、何が残るのか。この映画に安易な答えは用意されていませんが、すっと納得させられる結末でした。
[アリスのままで]
監督&脚色:リチャード・グラッツァー&ウォッシュ・ウエストモアランド
出演:ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、クリステン・スチュワート、ケイト・ボスワース
原題:STILL ALICE
6月27日(土)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
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