周囲から出産に関するプレッシャーを受けたり、一人産んでも「もう一人は?」と言われたり。仕事をがんばっているのに、産まないことで罪悪感さえ感じてしまう。そんなときに励ましてくれるのが、古代ギリシャの哲学者・プラトンの「饗宴」です。
作中では、巫女がソクラテスにこのような話をしました。
「魂が懐妊している人は、美しく気高い魂を持つ人との出会いを喜びます。
その人のそばにいようと、離れていようと、その人のことを記憶にとどめながら
はらんでいた知恵を産みつけ、出産するのです」
そして「魂の出産」により生まれたものは、不滅の命を持つ「知恵の子」であるとも言っています。たとえば、プラトンが書いた「饗宴」という本が、出産した「知恵の子」だとすれば、親はプラトンとなり、登場人物のプラトンも親といえるのです。
人生は、誰もが何かを生み出している尊いもの
技術者や芸術家、法律家、教育者などは、形や言葉にかかわりなく、人は仕事やライフワークでなにかを生み出しているといえます。それが魂の出産であり、人生にとって尊いものだと説いているのです。
赤ちゃんを産むのも素晴らしいことだけど、ほかにやりたいことがある人もいて、生き方は人それぞれ。「素晴らしいものを残したい」そう覚悟を決めた人が、やっとの思いで生み出すものが「魂の出産」であるならば、人はその出産をするために生まれてきたのかもしれません。
[NHK「100分de名著」古代ギリシャの哲学者・プラトンの「饗宴」]
photo by Thinkstock/Getty Images
(知恵子)
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