暦が7月になった途端、京都の街では、あちらこちらに「コンチキチン♪」の祗園囃子が鳴り響き、一気にお祭ムードが漂いはじめます。祗園祭というと、山鉾巡行やその前日の宵山が有名ですが、じつは7月1日の「吉符入り」から31日の疫神社「夏越祓」まで丸1か月に渡る神事をさすのです。

そして、このお囃子にかき立てられるソワソワした心地とともに、じんわりと湿度の高い京都特有の「夏」が到来! 普段はなかなか着物でお出かけする余裕がないわたしも、夜のおでかけにはワンピースがわりに浴衣を着用する機会が多くなる季節です。

そこで今日は、オトナの浴衣姿を品よく引き立てる、つまみ細工の髪かざりをご紹介しましょう。


鉄線(クレマチス)のクリップ。キリッとしたシャープなシルエットがオトナにぴったり。


華やかなつまみ細工の髪飾りといえば、舞妓さんを思い出す方がいらっしゃるかもしれません。あるいは、七五三の女児。京都のことばだと「おぼこい」と表現される、うぶで未熟な女性の証。一方、オトナなら、塗りの櫛(くし)か玉かんざし......というところでしょうか。

けれど、ファッションも多様化する現代。職人の手仕事つくられるこの美しい細工を、こどもだけのためのものにしておくのはもったいない!と、「オトナ女子が使える」つまみ細工に昇華させたのが、京都・大徳寺のすぐそばにあるおはりばこ』です。

ポイントは、伝統的なつまみかんざしに使われる極薄の羽二重ではなく、同じ正絹でも瑞々しくふっくらとした質感を持つ、綸子(りんず)やちりめんなどの素材使い。それに、落ち着いた色使い、モチーフ選び。

裁断から仕上がりまですべて手づくり。
正方形に小さく切った薄い正絹の布を、ひとつひとつつまんで折り畳むようにつくる。

伝統的な手法のなかに、少しずつおはりばこならではの工夫がちりばめられています。


伝統的な手法はそのままに、決して奇をてらうことなく、ほんの少しのモダンと進化を添えてあたらしい商品を生み出しす手腕は、さすが京都ならでは。

さらにたのもしいのは、伝統的なつまみ細工職人である店主のお母さんのもとで、つくり手の若いスタッフたちが育ちはじめていること。未来への継承と担い手不足が懸念される伝統工芸の世界のなかで、これはとても画期的なこと。

日本女性の象徴のような下がり藤のかんざし。しっとりとしたオトナの艶やかさを演出してくれます。

下がりの先にチェコビーズがあしらってあるのは、揺れ方にまでこだわったから

かわいい髪飾りをひとつ身につけることが、伝統工芸の継承を応援することになるなんて、ちょっとステキです。

[おはりばこ]
鉄線(クレマチス)クリップ:3,360円 (税込)
下がり藤かんざし:4,200円 (税込)

(高橋マキ)

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