文章を書くだけでなく、「わこものスタイリスト」という肩書きで活動することもあって、この連載では、文筆家半分/スタイリスト半分の気分で、京都の伝統がきちんと息づく「わこもの」を紹介していきたいと思っています。
さて、記念すべき第1回に紹介するのは、「I am your YUZEN」という一風変わった名前がつけられたテキスタイルの商品です。
なにか分かりますか?
実はこれ、京友禅の職人さんが着物の制作過程でつくる「色見本」、いわばカラーパレット。これから描く着物に使えそうな色を思案しながら、色味、彩度、明度を微妙に変化させながら混色したもので、手描きならではのゆらぎやカラーグラデーションがなんともいえない愛おしさをかもし出しています。
京友禅伝統工芸士、細井智之さんの仕事場
つまり、友禅の着物が描かれるごとにひとつずつ表情を変えて生まれる水玉模様なのですが、なにしろ下描きのようなものですから、これまでは日の目をみることなく捨てられる運命にありました。
美しい京友禅の反物を仕上げるために、なくてはならない必要な工程。
これをアップサイクルし、プロダクトとしてあたらしい命を吹き込んだのは、本人も陶板画作家でありながら、デザイナーとして陶磁器やテキスタイルの商品プロデュースも手がける河原尚子さん。「I am your YUZEN」というネーミングには、「どこかで誰かを引き立たせている美しい友禅の着物と、ともにつくられてきた」という来歴と物語が込められています。
もちろん色の出方がすべてことなるため、どれも1点もの。
2012年のミラノサローネで発表されて以来、上の写真のポケットチーフやスカーフ、ネクタイ、蝶ネクタイ、名刺入れと、少しずつ商品アイテムも増えていますが、わたしが選んだのは「帛紗(ふくさ)」。どれも色の出方が異なる1点ものなので、いまのところWEBから購入することはできませんが、「FULLMARKS/sione京都新風館店」で購入することができます。
帛紗として使えるサイズの「I am your YUZEN」(15,750円)
6月に上賀茂神社で挙式、念願のジューンブライドになる友人への御祝儀包みとして、ハレの日のバッグにかわいく忍ばせていこうと思います。
[sione]
商品の問い合わせ先:info@sione.jp
(高橋マキ)