「脳の老化は40代から」──そう語るのは、認知症治療の専門医・新井平伊教授(アルツクリニック東京院長、順天堂大学医学部名誉教授)。
「えっ、40代から!?」
認知症は自分とは遠い話だと思っている方も多いでしょう。9月は世界アルツハイマー月間。先日開催されたオンラインメディアセミナー「脳寿命を延ばす いまの状態を把握し、対策を考える ~脳と腸からはじめる認知症予防の可能性~」から、認知症予防や対策を紹介します。
脳との関係が深い腸内細菌に関しては、注目の最新情報も! これから40代を迎える方も必読です。
なぜ40代から?早期に認知症予防が必要な理由
認知症とは、「いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたためにさまざまな障害が起こり、生活する上で支障が出ている状態」を指す脳の病気のこと。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると言われています。
その中で7割を占めているのがアルツハイマー型認知症です。老齢期に発症しますが、症状の進行はその15〜20年前に始まると新井教授は話します。
「認知症が60代後半で発症するならば、40代にはすでに病気の芽は出てきているということです。この段階からアクションを起こして、発症リスクを減らすことが大切です」
今までは、認知症になったら最後、進行を見守るしかないと考えられてきました。ですが近年、発症や進行を遅らせる予防や対策が明らかになってきています。
40代になったら、意識的に認知症の発症リスクを減らす対応を始めてみましょう。
対人ゲームやながら運動も!今日からできる認知症対策
認知症リスクの低減のために、新井教授が教えてくれた5つの対策を紹介します。
1.まずは生活習慣病を改善する
糖尿病、高血圧、歯周病などの生活習慣病は、認知症と密接に関わりがあります。生活習慣病を改善することで、確実に脳寿命を延ばすことができるそう。今、血圧や肥満など、自分の体に不安を感じている人は、まずはそれに向き合うことから始めましょう。
2.ゲームは脳が活性化する「対人ゲーム」を選んで
「楽しくなければ脳の活性化につながらない」「脳トレよりも対人ゲームが有効」と新井教授。対人ゲームは、相手とのコミュニケーションになり、変化に富んでいるのが特徴。相手の手を読んで判断を下す作業が連続するため、前頭葉の活性化につながると言います。そして「勝ちたい」という意欲も脳によいそう。
3.運動は頭も動かしながら
認知症の予防策として「デュアルタスク(二重課題)」が注目されています。これは、運動をするときは同時に頭を働かせるということ。体操や散歩をしながら、歌を歌ったり会話をしたり、計算をしたり。「体と同時に脳を使うことで、認知機能の低下を防ぐことが期待できる」と新井教授。ケガに気をつけながら、デュアルな運動にぜひトライを!
4.質の良い睡眠は脳を守る
新井教授いわく、睡眠不足は、アルツハイマー病の元となるたんぱく質『アミロイドβ』を脳に溜め込む原因なるそう。質の良い睡眠は認知症の予防にも大切なのです。 ポイントは、睡眠リズムや環境を整えることや時間と気持ちに余裕を持つこと。寝酒はNGで、最適な睡眠時間は6.5〜7時間とのこと。改めて睡眠を見直したいですね。
5.おすすめは日本食。お酒は物忘れが出てきたら控えたい
日々の食事は認知症予防にも大切です。基本はバランスのよい食事で、まさに日本食はたんぱく質も野菜もバランスよく食べられる最適な食事。積極的に選びたいところです。そのほか、「お酒は物忘れが心配な人、物忘れの症状が出てきた人は避けましょう」と新井教授。日ごろから、自身の体調や記憶力に目を向けることも大切です。
5つの対策は、今日から無理なく始められることばかり。ぜひ日常に取り入れてみましょう。
「脳腸相関」。認知症と腸内細菌の研究は進んでいます
「脳腸相関」の言葉の通り、脳と腸は互いに影響を及ぼしあう関係にあります。脳の病気である認知症に腸がどのように関係しているか、世界中で注目されています。
国立長寿医療研究センターもの忘れセンター副センター長の佐治直樹先生は、「腸内細菌」と認知症の関係についてさまざまな研究報告がされている状況を解説。アルツハイマー病やビフィズス菌に着目した報告もあることから、「腸内細菌は認知症予防の新しい視点や糸口になりそう」という見解を示しました。
健康長寿のカギとされている「腸」の健康。腸内環境や腸内細菌への関心が高まる今、認知症との関連の研究については、ますます期待が膨らみます。
認知機能に関わる「ビフィズス菌MCC1274」、商品化はもう間もなく!
身近な腸内細菌といえば、ビフィズス菌。
森永乳業の研究本部、清水金忠さんからは「ビフィズス菌と認知機能改善効果」として、認知症予防に関わるビフィズス菌の菌株を特定したという期待が高まる内容で講演が行われました。
森永乳業は、赤ちゃんのおなかにいるビフィズス菌に着目し、50年以上に渡ってビフィズス菌の研究と商品開発を重ねてきた企業。
「脳腸相関」にも注目し、認知症の予防や進行を抑制するビフィズス菌の研究が進められてきました。そんななかで、森永乳業が保有するビフィズス菌株から、アルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性がある菌株の特定に成功。それが「ビフィズス菌MCC1274」です。
さまざまな臨床試験を経て、「ビフィズス菌MCC1274が軽度認知機能障害の疑いのある方に対して認知機能の維持・改善効果が示唆された」ことが判明したそう。
今世の中では、機能性表示食品として、認知機能や記憶力に関する商品は続々と発表されています。ただ、「『菌体』を関与成分とするものは今までありませんでした」と清水さん。「この度、機能性表示食品届出が消費者庁に受理され、ビフィズス菌MCC1274が社会課題に貢献できる可能性が高まっています。商品は近日中にお知らせできそうです」。
新井教授からも「これほど学術的に検討されて有意差を持った結果はない」とお墨付きのビフィズス菌MCC1274。商品の発売が楽しみです。
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超高齢化社会のなかで、認知症は社会課題。予防や対策は、40代という早期から始めることが大切です。日々の生活のなかで楽しみながら認知症の予防をしていきましょう。これからも研究がすすむ脳腸相関やビフィズス菌にも注目です。
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[森永乳業]