大人になると、ほとんどの人は常に「忙しい」と感じており、燃え尽き症候群になることも労働文化や日常生活の一部として受け入れられています。
しかし、そのせいで誰もが頑張り過ぎの「オーバーアチーバー(overachiever)」になるわけではありません。
「オーバーアチーバー」になる原因を正確に知るために、その分野の専門家数名から話を聞きました。その内容をシェアしたいと思います。
「オーバーアチーバー(いつも頑張りすぎてしまう人)」の兆候とは
その人が人生で何を一番大事にしているかによって、「達成」が意味するものは異なります。
ですから、以下は完全無欠のチェックリストとは言えませんが、知っていると役に立つこともあります。
1.公言していないものも含めて目標がたくさんある
もちろん、誰でも人生に何らかの目標を持っているはずですが、一般的に、「オーバーアチーバー」は複数の目標を抱えています。
Bridge Counseling Associatesの社長兼CEOであるDavid Robeckさんが説明しているように、「オーバーアチーバー」という言葉は、他人がちょうどいいと期待するレベル以上の目標を達成した人を揶揄するときによく使われています。
しかし、「オーバーアチーバー」と呼ばれる人にとっては、単に「目標を達成した」という意味でしかありません。
目標の中には周囲の人たちに知られているものもあります。
たとえば、友だちや家族なら、あなたが本を出版したり、マラソンをしたり、飛行機恐怖症を克服しようとしているのを知っているかもしれません。
しかし、「オーバーアチーバー」は公言していない目標も持っていることが多いようです。
Robeckさんは、自分だけの秘密にしておけば、他人から話題にされることもなければ、余計な邪魔をされてそれを乗り越える苦労をさせられることもないと言います。
オーバーアチーバーは、達成できていない課題を何時間もかけて検討し、何とか達成するために新しい方法や独自の方法を編み出します。
公な目標と個人的な目標の2つに関しては、スポーツ界に目を向ければ最もわかりやすい例が見つかるとして、Robeckさんは次のように説明しています。
スポーツの世界で、アスリートが誰よりも速く走り、誰よりも高く飛び、誰よりも多くのポイントを獲得したいと思うときに、ありがちなことです。
まず、スポーツの基準では達成不可能と思われる目標を見つけることから始めます。新しい運動器具や新しいスタンスを試したり、さまざまな筋肉を強化します。
そして、自分の目標を達成したり、それ以上のレベルに達すると、「オーバーアチーバー」のラベルを貼られるのですが、当のアスリートにとっては、それは単に1つのマイルストーンでしかなく、すぐに新しい目標を設定します。
常人は、オーバーアチーバーによって「達成可能」であることが証明された目標の達成に励むことになります。
1マイルを4分間で走る、フィギュアスケートの3回転ジャンプや4回転ジャンプ、スキー板を従来通りまっすぐに保たず、初めて外側に向けることで揚力を高めてライバルたちを蹴散らしたスキージャンプの選手。
スポーツを根本的に変えたのは、こうしたオーバーアチーバーたちです。
2.目標を達成すると、すぐ次の目標を立てる
一般的に、「オーバーアチーバー」は必ずしも関連性があるとは言えない複数の目標やプロジェクトを同時進行させています。
たとえば、終身雇用の仕事を見つける、水泳を習う、辛い子ども時代の記憶を克服するためにセラピーを受ける、地元の市議会に立候補する、といった具合に関連性の無い目標を複数抱えていることがあります。
このような場合、精神科医で地域精神医学の地域医療責任者であるLeela R. Magavi博士は、「オーバーアチーバーは人生のあらゆる面で目標を設定して卓越するように努力することにコミットし続ける」と言います。
そして、こうした目標のどれかを達成すると、すぐに次の新しい目標に取り組みます。
オーバーアチーバーのエネルギーは、将来さらに多くを、あるいはより良いものを獲得するためのビジョンであり、信念です。
オーバーアチーバーの成果は、新しい戦略を検討して導入し、それに取り組み、他者に力を与えながら、あるいは、必要に応じて、達成不可能な目標を現実に達成できるものとして独りで考えながら決めていきます。
その後は、到底達成できないと思われるような目標を実際に達成するまで、途中であれこれ調整しながら、辿るべき手順を見極め、管理しながら進んでいきます。
3.自分に厳しいが批判を避けようとする
多くのオーバーアチーバーがオーバーアチーバーになっている一番の原因は、「不安」(英文)です。
これは、さまざまな形で顕在化するとMagaviさんは説明しています。まず、オーバーアチーバーは失敗すると自分を責めることが多く、非現実的な高い水準を自分に課すこともあります。
「オーバーアチーバーは、結果を重視します」とMagaviさんは米Lifehackerに語っています。
彼らは完璧主義者で、厳格に考えるのかもしれません。
ですから、オーバーアチーバーは自分に対する期待値が高く(他人に対しても高いことがありますが)、勤勉でストレスにさらされると成功する傾向があります。
しかし、コインには必ず表と裏があります。Magaviさんによれば、オーバーアチーバーは建設的な批判を受け入れることが苦手です。
もちろん、自分の欠点や改善方法を聞かされて気分が良い人はほとんどいませんが、オーバーアチーバーはこの性質がことさら強いようです。
他人からの否定的な意見を先回りして回避しようとして数え切れないほど多くのタスクに余分な時間とエネルギーを投じることがあります。その中には全く必要がないタスクもあります。
たくさんのタスクをこなしておけば、仕事ぶりを評価されるとき、一種の緩衝材になるという考えです。
たとえば、上司から、ある特定の分野の組織を20個リストアップして欲しいと頼まれたとしましょう。
オーバーアチーバーは、喜んでそのタスクを引き受け、すぐにやり方を検討して、誰も失望させたくないし、他人の仕事を増やしたくないと考えます。
ですから、「念のために」50の組織をリストアップすることで、頼まれたタスクを仕上げただけでなく、それ以上の情報を集めたことで、批判をかわそうとします。
当然のことながら、こんなことをしているとストレスレベルと不安が高くなる可能性があり、言うまでもなく、頻繁に長時間労働をすることになり、健康や幸福感や人間関係など、他の重要なことがないがしろになるとMagaviさんは言います。
4.あるボディーランゲージを使っている
ボディーランゲージの専門家であるAlison Hendersonさんによると、動作や歩き方で、オーバーアチーバーかどうかわかることがあります。
ボディランゲージを見れば、脳で何が起こっているかわかります。存在感や動作が大きくて目立つ人は、脳が一度に多くのプロジェクトに取り組んでいるために、そうなるのです。
Hendersonさんのような動作のパターンを分析する専門家は、潜在意識による行動を観察して、その人がどのように考え、特定の状況に対する反応の仕方を評価したり予測したりします。
過度のストレスを感じながら同じ動きをすばやく繰り返すようなら、脳の複数の機能が同時に働いている印です。
Tony Robbinsさん(アメリカの自己啓発作家)がステージ上で炸裂するのは、その良い例です。多くの場合、動作が大きい人は、多くのプロジェクトを同時進行しているときに最も実力を発揮します。
自分がオーバーアチーバーだと思うなら
上述の項目のどれかに当てはまっても、自分をオーバーアチーバーだと判断するのは難しいかもしれません。
「オーバーアチーバーは、単にやるべきことをしているだけだと思っていて、計算してオーバーアチーバーと呼ばれるようにしているわけではありません」とLee Davenport博士は言います。
Davenport 博士は『Profit with Your Personality: How Top Producers Win at Lead Generation, and How You Can Too』の著者でありRealEstateBees.comの戦略的コーチング・コンサルタントでもあります。
何であれ「過剰(オーバー)」「余分」「多すぎる」と言われるのは不愉快なので、「オーバーアチーバー」と呼ばれても嬉しくないのです。
Davenportさんは、「オーバーアチーバー」に該当するかもしれない人には、別のアプローチを取ってみること、中立的なDISCパーソナリティ・プロファイルでの属性を診断を推奨しています。
DISCとは、心理学に基づき人間の行動を「Dominant」=主導型、「Influencer」=感化型、「Steady」=安定型、「Conscientious」=慎重型に分類して捉える組織力を高めるためのコミュニケーションツール。
人間は、どんな性格にも社会に役立つ長所があると同時に、改善すべきところもあります。
これまでDISCテストを受けたことがない場合は、無料のサイトでお試しください。
Davenportさんは、「主導型」の性格の人が、「オーバーアチーバー」と呼ばれることが多いとして、次のように説明しています。
「D(主導型)」タイプは、すぐに結果を出すことが大事で(たとえば、「時は金なり!」と言う自分に気付いたことがありますか)、困難に挑戦しながら自分を鞭打って行動しています。
もしかしたら、他人にもそうさせているかもしれません(パフォーマンス向上のために自分や他人にコーチングしていますか?)。
また、「D(主導型)」のタイプは、勝利、成功、古き良き時代の競争がモチベーションに火をつけます。
他人から見ると、自信があり、力強く、はっきり物を言い(短気で思いやりがなく、無神経だと誤解されているかもしれません)、リスクを取れる人に見えます。
上記に思い当たる節があるなら、あなたは「D(主導型)」タイプかもしれません。
その場合は、「退屈」と「手持ち無沙汰」が最大の敵であることを認識することが重要だとDavenportさんは言います。
また、自分の強みを最大限に発揮して、ストレスが多く無神経なところがなるべく出ないようにするためには、(現実的な)目標を設定して、退屈しないように(友好的な)競争環境を作ることを提案しています。
さらに、このタイプの人はなるべく手持ち無沙汰にならないように、自発的に行動できる人を身近にたくさん置くことを推奨しています。
Image: Shutterstock
Source: David Robeck,Leela R. Magavi博士,Alison Henderson,Lee Davenport博士,DISCパーソナリティ・プロファイル
Elizabeth Yuko – Lifehacker US[原文]
訳:春野ユリ
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