じつはその努力が「うまく眠れない」状態を作り出し、睡眠不足の原因になっているかもしれません。
「『朝型』か『夜型』かはほぼ遺伝子で決まる」と話すのは、老舗寝具メーカー「昭和西川」の代表取締役副社長であり、睡眠研究家としても活躍する西川ユカコさん。
夜型を朝型に変えようとすることのリスクや、崩れがちな睡眠リズムを整えるメソッドについてうかがいました。
体内時計を粗末に扱っていませんか?
残念なことに現代人の多くが、自分の体内時計を「粗末に扱っている」という西川さん。睡眠になんらかの悩みを抱えている人は、もれなく体内時計を狂わせていると話します。
西川さん :
自分の体内時計を整えることは、睡眠の質を上げるための一丁目一番地です。
日本人の体内時計は1日24時間ぴったりではなく、平均で24時間10分だといわれています。10分ずれがあるということは、そのままだと夜眠くなる時間が10分ずつ遅くなるということ。
放っておくとどんどん夜更かしになってしまうんです。
いま、西川さんのもとにはもともと夜型の人から「在宅勤務になったことで夜更かししてしまい、昼夜逆転しそう」という相談が増えているとのこと。
西川さん :
夜型の人は朝型の人よりも、体内時計をリセットする行動がとりにくく、リセットが難しいという傾向があるのです。
リセットに不可欠なことは2つ。起床後に太陽の光を浴びることと、朝食をとることです。人間はそうすることで、自分の体内時計を地球の24時間に合わせることができます。
体内時計のリセットは、みなさんが考えるよりも厳密に行う必要があります。
とくに夜型の人は、朝型の人よりも少し大げさにやるくらいでちょうどいいと思います。
無理に「朝型」に変えるのはリスク
とはいえ、夜型の人が朝型に変えようと、早寝早起きを心がける必要はありません。
人間には自分に適した「寝つく時間」と「起きる時間」があり、無理に変えようとすることはリスクになると西川さん。
西川さん :
自分のリズムを知るためには、2週間くらい自分の睡眠日記をつけてみるといいでしょう。
就寝時刻と起床時刻、その日の体調などをノートに書いておくと、自分が元気になれるリズムがわかるはず。
とくに休日は目覚まし時計をかけずに、自然に起きた時刻を確認するようにしてください。
ミュンヘンクロノタイプでセルフチェック
自分の睡眠タイプをより厳密に調べたい人におすすめなのが、「ミュンヘンクロノタイプ」というセルフチェック。
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の睡眠・覚醒障害研究部が、研究の一環としてウェブサイト上で提供しているものです。
西川さん :
ウェブサイトの質問に回答し、研究への利用に同意すると、自分に最適な睡眠スケジュール(寝付く時刻、起きる時刻)や睡眠不足度などのデータをメールで送ってくれます。
これにより、自分がもっとも高いパフォーマンスを発揮できる就寝時刻や、起床時刻がわかります。
朝型・夜型は「個性」のようなもの
西川さんによると、クロノタイプが朝型の人は、休日であっても寝坊をしない人。朝9時から17時までといった、一般的なオフィスワーカーの勤務時間が合っている人でもあります。
逆に「夜型」の場合は出勤時刻に合わせて無理に早起きをしていることになり、「眠れない」「起きられない」といった悩みを抱えやすいといいます。
西川さん :
その人の体内時計のリズムは、50%程度遺伝で決まります。つまり朝型か夜型かは、ほとんど遺伝によるもの。
夜型の人は体温が上がり始める時間が遅いので、早起きしても能率は上がりません。むしろスペックダウンしてしまいます。
朝型・夜型は「個性」のようなもので、「早起きの人は勤勉」「朝寝坊は怠け者」といった決めつけはナンセンス。睡眠の努力のしどころは他にあると、ぜひ伝えたいですね。
まずはここから。6つの快眠メソッド
西川さんのいう「睡眠の努力のしどころ」とは、自分の睡眠タイプを知り、人間の構造に適した快眠法を実践すること。
とくに押さえておきたいメソッドは以下の6つです。
朝起きたらまず太陽の光を網膜に入れること。室内照明は明るくても500ルクスで、体内時計の調整に必要な朝の光(2500ルクス)には足りないため、窓を開けて太陽光を浴びる必要がある。「目覚めたら窓辺に直行」を習慣にするとよい。ただし、太陽の直視は危険なので避けること。 朝起きて日差しを浴びてから、1時間以内に朝食をとること。 日中にセロトニン(幸せホルモン)を分泌させること。太陽の光を浴び、リズム運動(例えば歩くこと)をするとセロトニンが分泌される。時間がないときは5分ガムをかむだけでもセロトニン効果が得られる。 呼吸を整えることもセロトニン分泌につながる。おすすめは「三呼一吸法」。鼻から短く瞬発的に2回「フッフッ」と吐き、3回目の「フー」で息を吐ききり、鼻から大きく1回吸う。これを繰り返す。 就寝の1時間~1時間半ほど前に、38~40℃の湯船に15分程度つかって深部体温を上げること。深部体温が下がるときに眠気が訪れる。 首と背骨が凝っていると体の緊張がとれず、眠りが浅くなるため、眠る前にストレッチやヨガの「ワニのポーズ」をするとよい。寝返りも打ちやすくなり、睡眠の質が上がる。西川さん :
朝起きて、網膜に太陽光を入れることで体内時計の「親時計」が整い、朝食をとることで「子時計」が整うので、この2つはぜひ習慣にしていただきたいですね。
今日すぐできなくても、トライアンドエラーで大丈夫。「毎日の積み重ね」は裏切りません。
西川さんの著書『最強の睡眠 世界の最新論文と 450年企業経営者による実践でついにわかった』(SBクリエイティブ株式会社)には、他にも西川さんがご自身の体を実験台にして掴んだメソッドが惜しみなく紹介されています。
睡眠をハンドリングすることで、基礎体温も上昇し風邪も引かなくなったという西川さん。
コロナ禍で家にいる時間が増えた今こそ、体内時計を整える絶好のチャンス! 基本のメソッドからひとつずつ、ぜひ試してみてください。
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西川ユカコ(にしかわ・ゆかこ)さん
昭和西川株式会社 代表取締役副社長。睡眠サービスコンソーシアム理事。睡眠改善インストラクター/温泉入浴指導員/セロトニントレーナー。学習院大学卒業後、「ヴァンテーヌ」「25ans」「婦人画報」の編集者としてハースト婦人画報社に10年間勤務。現在は家業である昭和西川の代表取締役副社長を務め、また睡眠研究家として「東洋経済オンライン」で睡眠記事を連載、「ミス日本」ファイナリスト勉強会や「NHK文化センター」青山教室などで睡眠講義を行うほか、各種メディアへの寄稿や企業での講演活動も行っている。科学的データを参考にしながら、自身の身体を実験台に、日中にパフォーマンスUPするための快眠法を日々研究中。著書に「最強の睡眠」がある。
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