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とある女性におこった話。

2年前、ニューヨークに住む女優のケイティー・クレインさんは、51歳でライム病と診断されました。

ライム病は、ボレリア・ブルグドルフェリ菌に感染したダニに噛まれることにより感染するもの。クインさんにとって5回目のライム病です。

彼女の育ったコネチカット州のオールドライムという街はこの病気の由来にもなった場所で、ライム病はよくある病気。かかりつけ医に2週間分の抗菌薬を処方されたものの、症状はますます悪化。圧迫感のある頭痛があり、瞳孔は拡大したまま、心拍数も早くなる始末。そうしてやっと、クレインさんは感染病専門医に助けを求めました。

「単に更年期だからですよ」と医師

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しかし担当した医師は、彼女の年齢をチラリとみて、単に更年期の症状だろうと診断したのです。クレインさんは呆気にとられました。「恐怖すら感じました。ライム病はきちんと治療を受けなければ危険な病気だから。私を診た医師は、抗菌薬を処方してくれそうにありませんでした」とクレインさんは当時の状況を語ります。

最終的には医師も彼女の意見に折れました。しかしそれも、クレインさんが自分の夫も同じような症状があることを説明し、さらに内分泌学者からの血液検査の結果を出し、その上に自分のホルモン値は正常である(つまりまだ閉経に近づいてはいない)のを示した後にやっと。クレインさんは抗菌薬を処方され、完治するまでに最終的に16週間もかかったのです。

これはまれな話ではありません。「あらゆる症状を、閉経の兆候とする傾向がみられます」とコロラド大学医学部産科および婦人科の学部長であるナネット・サントロ医師。

更年期の症状は何年も続くものなので、もしあなたを診た医師が症状の全てをそのせいにするようであれば、「その診断を疑ったほうがよいかもしれません」とサントロ医師はいいます。

更年期の症状って?

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簡単にいうと、更年期とは閉経への移行期をいいます

女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が変化し生理が乱れ、身体の変化や気分の変化といった症状が出てきます。初期の段階では、月経周期が通常より1、2週間遅れ(早まることもあります)、それが数か月続きます。

後期になると60日間生理がこなくなり、1年以上になると、公式に閉経したことに。しかし、「女性によっては生理があるにもかかわらず、ホルモンバランスが乱れる人もいます」とハーバード大学医学大学院ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の医学部長であるハディーン・ジョッフェ医師は述べます。

早い女性で、30代半ばから更年期は始まりますが、大半の人は50代で始まり、米国人女性の平均開始年齢は49歳。早く始まる女性は、最長10年まで更年期が長期化する傾向があることが研究で報告されています。

更年期の研究は少ない

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しかしこれまで更年期に関して、十分な研究はされていません。更年期に関する研究がはじまった20年前からこれまでに行われた研究件数は、全ての女性に出る症状であるにもかかわらず、驚くほど少ないものです。

「閉経のように、女性のみに現れる症状は長い間科学者から無視されてきました」とワシントンを拠点とするNGO団体『Society for Women’s Health Research』の最高責任者であるエイミー・ミラーさんは指摘します。

多くの科学者が閉経をまだよく理解していないと言えます。「症状の診断はとても複雑です」とジョッフェ医師。「なぜなら加齢に伴い、非常に長い期間をかけてホルモンバランスの変化は起こるからです」その症状には気力の低下、体重増加などがあり、症状の出方も人によって様々です。

なんでも「更年期」と診断されてしまう怖さ

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そういったことから、医師や患者本人にとっても、何が起こっているのか正確に把握しにくく、重大な病気につながる可能性があります。

ニュージャージー州のサリー・サレールさん(45歳)は、重度のむくみ、体重増加、倦怠感、胸の強い痛みといった症状に悩んでいました。そして機能性医学の婦人科医から、「それらは更年期の症状なので、ホルモン療法で治ります」と説明を受けて納得し、医師が勧める通りに1年間のホルモン療法を受けました。しかし症状は一向に改善しなかったのです。

サレールさんは別の医師にかかり、そこでやっと自分は感染症にかかっており、筋腫が2個、ヘルニアが5か所、子宮内膜症が内臓の至るところに発生しているのが分かったのです。最終的に外科手術で、やっとサレールさんの症状は消えました。

サレールさんのケースは、重要な問題を示しています。「多くの医師が、更年期の症状とそうでない症状の違いについて詳しく教わっていません」とバージニア大学健康システムで産科および婦人科の教授で、北米閉経学会の常任理事でもあるジョアン・ピンカートン医師が言います。

女性におこりやすい4大症状

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さらにややこしいことに、女性が経験する異常な症状はじつにさまざま。ほとんどが、専門家が「4つの主症状」と呼ぶ、ほてり、睡眠障害、気分の浮き沈み、それから後期の膣の乾燥といった症状を経験します。しかし、その他にも、金属っぽい味、薄毛、心拍の上昇、倦怠感、めまい、それからアリが体をはい回るような感覚という症状まであります。

しかし、これらのあまり知られていない症状は「データで見るのが難しい」とジョッフェ医師は述べます。医師は患者のあまりにも多い症状に降参し、中年女性の更年期の症状であると決めつけてしまうことがたびたびあるのです。

また、ほとんどの更年期の症状に効果的なはずのホルモン療法に対する抵抗感がなかなか消えないことも問題としてあります。その背景には「女性の健康イニシアチブ(Women’s Health Initiative)」の2002年の初期の研究結果において、ホルモン療法にはリスクがあることが報告されたことから始まります。

しかしその後の分析で、通常心疾患や乳がんのリスクはまれで、リスクが高まるのは、ホルモン療法が遅れた女性や、治療が長期間になっている女性であることが分かりました。

女性の症状の訴えを却下してきた歴史

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患者の訴えを医師が却下することも、たちの悪い問題であるという人もいます。

「何世紀にもわたり、ホルモンが原因などの説明のつかない女性の症状は『ヒステリー』と診断されてきました」と説明するのは、マヤ・ドーセンベリーさん。ドーセンベリーさんは書籍の執筆のために調査研究していた際に、多くの女性からこのような経験を聞いたと言います。

「今ではヒステリーという言葉こそ使われないものの、医師によっては患者の意見を信用せず、単なるストレスやホルモンの影響であると考える場合があります。さらに事態を悪くするのが、女性自身が一般的な更年期の症状とはどういったものなのかの知識がないこと。いまだにタブーが残るために、他人に相談することをためらっている場合もあります」とドーセンベリーさん。

確実に分かっていることは、更年期の症状とすぐに決めてかかる医師は、あなたの命を危険にさらしていること。「女性の中年期は身体的に変化の多い時期です。慢性的なものから深刻なものまで、これまでにないさまざまな身体的な問題に直面します」とジョッフェ医師は言います。

明朝の『Prevention』に続きます。

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