酸化の基礎知識や、酸化を防ぐ食生活をお伝えしてきた、抗酸化食品や酸化ストレス研究の第一人者、大澤俊彦先生のお話、第3回目は酸化の意外な落とし穴について。
DHA、アマニ油、エゴマ油は酸化しやすい
アルツハイマーの原因のひとつとして考えられているβ-アミロイドは、タンパク質が酸化した物質です。 以前、亡くなられたアルツハイマーの患者さんの脳を調べてみてわかったのですが、9名全員の脳中の海馬領域に存在するβ-アミロイド中には、DHAが酸化した物質も見つかりました。
最近は脳機能の改善に効果的だということで、アマニ油やエゴマ油などに注目が集まっています。青魚に多く含まれるDHAも含め、これら「オメガ3系脂肪酸」は身体にいい反面、非常に酸化しやすい特徴をもっているのです。
オリーブオイルやゴマ油が酸化しにくいことはよく知られていますが、ラードやヘッド、ココナッツオイルやカカオバターなど、室温で固まる油脂も酸化しにくい。
一般的に、アマニ油やエゴマ油などサラサラの油ほど酸化しやすいことを覚えておいてください。では、次にどうすれば油の酸化を防げるかを考えていきましょう。
「酸化しやすい油」の保存法
家庭では、お手頃なサラダ油やコーン油を使う人が多いと思いますが、保存する際には「酸化しにくい油」を一緒に混ぜておくのがおすすめです。たとえば、コーン油に太白油(焙煎していないゴマから抽出した油)を混ぜるなど。香りがついても気にならないなら、ゴマ油でもOKです。
「酸化しやすい油」と「酸化しにくい油」を3対1くらいの割合で混ぜておけば、酸化スピードをぐっと抑えることができます。
ほかの油を混ぜたくないという人は、ローズマリーやセージなど、シソ科のハーブやニンニクやショウガを入れておくのはいかがでしょう。抗酸化力の高い食品をつけておくと、油だけで保存するよりも酸化を抑えられますし、香りや風味がプラスされてよりおいしく食べられます。
よかれと思って摂った油も、保存の過程で酸化させてしまっては本末転倒。それに、いくら身体にいい油でも必要以上にダラダラかけることはカロリー過多になるので、くれぐれも気をつけてください。
酸化防止にカレー、スムージー、高カカオチョコ
愛知県大府市の市民約1400人を対象として、「魚だけを食べる」「八丁味噌だけを食べる」「魚と八丁味噌を食べる」「どちらも食べない」という4つのグループに分けて調査を行いました。
このなかで、記憶力が改善して、認知症テストの結果が圧倒的によかったのは、「魚と八丁味噌を食べる」グループ。魚=DHA、八丁味噌=ポリフェノール、を同時に摂取するとよいということです。
酸化しやすいアマニ油やエゴマ油、そしてDHAなどは、ポリフェノールなど抗酸化力の高い「フィトケミカル」と一緒に摂ると、酸化を抑えることができます。普段外食が多い人は、スムージーや野菜ジュース、高カカオチョコレートを積極的に摂るようにするといいでしょう。
とくに大切なのは朝ごはん。朝は食べる時間がなかったり、食欲がなかったりする人も、スムージーや高カカオチョコレートひとかけだったら生活に取り入れられるのではないでしょうか。
高カカオチョコレートにはポリフェノールがたくさん含まれていますし、GI値(食後血糖値の上昇を示す指標)も低いので糖質の吸収もゆるやかです。仕事中、口さみしくなったときのためにカカオ分72%以上のチョコレートを机の引き出しに忍ばせておいて、一日25gを目安に食べるのが効果的です。
前回、「老化や病気を防ぐ12の食品群」を3日かけて摂ることをおすすめしました。これらを手っ取り早く、バランスよく摂れるのはカレーですが、市販のルーには油分がかなり含まれています。
カレー粉やその他のスパイスにほんの少し小麦粉をプラスして、少量の油で炒めれば、ルーと同じように使えるので、ぜひ試してみてください。カレーにはサラダやフルーツをプラス。市販の野菜ジュースでもOKです。
激しすぎる運動には要注意
筋トレやランニングなど健康のために運動している人は多いと思いますが、激しすぎると筋肉や肝臓に活性酸素やフリーラジカルが大量に発生してしまいます。
また、炎天下で長時間するスポーツは紫外線によって、同じく酸化ストレスが蓄積されて光老化が進むので、シミやシワが増える原因にも。
スポーツ飲料水にはクエン酸やミネラルなどが含まれていますが、酸化防止という観点からは、それだけでは不十分。激しい運動や日光を長く浴びたあとは、抗酸化力の高い野菜や果物をつかったジュースなどを積極的に摂るよう心がけてください。
酸化も食事もバランスが大事。野菜やハーブ、高カカオチョコレートなど、抗酸化力の高い食品を上手にとり入れて、楽しみながらサビない身体をつくっていきましょう。
大澤俊彦(おおさわ としひこ)先生
1946年兵庫県生まれ。名古屋大学名誉教授で愛知学院大学心身科学部特任教授・人間総合科学大学教授。農学博士。1974年東京大学大学院農学系研究科博士課程修了後、1977年までオーストラリア国立大学理学部化学科リサーチフェロー。1978年名古屋大学農学部助手、1988年同大学農学部助教授、1995年同大学農学部教授を経て名誉教授に。2010年より愛知学院大学心身科学部教授、学部長を経て現在特任教授。2019年4月より人間総合科学大学教授も兼任。その間、1990年より1年間、カリフォルニア大学デービス校環境毒性学部客員教授。機能性食品研究、とくに抗酸化食品研究の第一人者。食品と生命機能の関わりをテーマとして、食事が要因となる生活習慣病誘発メカニズムの解明・予防に関する研究を行う。食品の抗酸化成分の生体内での作用解明のほか、生体内での酸化障害に関する未病バイオマーカーの研究開発など、その研究対象は多岐にわたる。
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コメント
コメントを書く(ID:4446112)
体にいい食材も悪い食材も本当は無いってことが良く分かるな。
どうあがいたって「バランスの取れた食生活」に敵うものなんて無いんだから。
(ID:357464)
そんなことよりギガビッグマックとグランドビッグマック食いに行こうぜ!
(ID:752233)
計画的に使い切る癖をつける方がいいですよ