臨床心理士の西澤寿樹先生に聞く、「カップルカウンセリング」の基礎知識。前編に続き、後編ではセックスレスに悩む女性から寄せられた5つの質問について、西澤先生にアドバイスいただきます。1つ目のお悩みは、「セックスレスの話を、切り出せない」というもの。

【お悩み】
ここ1年ほどセックスレスであると実感しつつも、一度相談しようとしたら心ないことを言われてしまい、話し合うこともできずにいます。どう切り出したらいいのでしょうか? 話し合い方についてもアドバイスをお願いします。

「これはとても難しい問題です。女性側はセックスがないのが寂しいと感じていると思います。でも夫に言うと、『そんな年になってまだ性欲あるの?』なんて言われたりする。それはすごく傷つくことです。

しかしこの場合、夫は夫側で、そう言わざるを得ない背景があるのかもしれません。ありそうなのは、本当は自分もしたいのに何らかの理由で拒んでいる。怒りやないがしろにされている感じがあって、望みを叶えてやるものかと意固地になっているケースです。

切り出し方としては、いきなり本題に入るのではなく、『セックスレスについて話したいんだけど、今度、時間を作ってくれる?』とまず聞いてみること。

突然切り出すと、夫側も動揺して思ってもないことを言ってしまいますが、準備ができれば気持ちの余裕も生まれるはず。そして、話し合う時間をちゃんと決めること。15分なら15分と決め、それ以上になりそうなら、また別に時間をとりましょう。

長時間話してしまうのは、そのほうが持ちかけた方はやりやすいのですが、相手にとっては負担が大きい。1回の話し合いで解決する問題ではないので、短い時間でこまめに話し合う場を作ったほうがいいと思います。

そして、その際のNGワードはいくつかありますが、筆頭はなぜ、どうして、です。結婚したのにセックスがないのはおかしいという前提になると、善悪や理屈が入ってくる。他にも、普通は、お互いに、という言葉は使わない方がいいです。

『私は寂しい、あなたはどう?』と、気持ちを素直に伝えてください。そして、今更できないとか、性欲が強いとか、傷つく言葉を言われても反応しないこと。それは、話し合いを終わらせるための“引っかけ”だから。

疲れてる、という言葉も、じつは本音は見せたくないという意思表示だったりします。本当はセックスにターゲットを絞るのではなく、前編でお伝えしたように、それ以前の関係性の話をする必要があると思います。

できればカウンセラーになったつもりで、つまり相手に対する自分のニーズをちょっと横において、相手には世界がどう見えているのかVR並みに体験できるくらいまで話を聞いてください。

相手の世界観が実感できるころには、現実の問題はかなり改善していることが多いのです」(西澤先生)

デリケートな話題だからこそ、コミュニケーションのすれ違いは避けたいもの。善悪や理屈抜きに、素直な気持ちを相手に伝えて、相手の心を開くところから始めたいですね。

西澤 寿樹先生

株式会社はあと・くりにっく代表取締役。戦略コンサルティング会社コンサルタント、金融機関企画部門・システム部門を経てセラピストになる。国際交流分析協会公認交流分析家(心理療法部門)、臨床心理士、公認心理師、厚生労働大臣認定産業カウンセラー、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。共著に『コメディカルARTマニュアル』(永井書店)、共訳に『交流分析による人格適応論』などがある。

@はあと・くりにっく

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