パソコンで仕事をする人が増えた今、“座りすぎ”による身体への悪影響が注目されています。

その解決策として整形外科医の中村格子先生が提案するのが、身体に負担をかけない「ゼロポジ座り」

著書『医師が教えるゼロポジ座り 疲れない、太らない、老けない』を参考に、疲れない座り方について考えてみました。

“世界一座りっぱなし”の日本人

2011年、アメリカで総座位時間の国際比較が発表されました。断トツで“座りすぎ”だったのは、なんと私たち日本人

一日に7時間以上座っている人が半数を超え、特に長い人では一日10時間も座っているという結果に。

これは、世界の平均座位時間の約2倍

この結果に危機感を抱いたのが、スポーツドクターとして数々のトップアスリートを支え、『大人のラジオ体操』(講談社)などのベストセラーでも知られる中村格子先生です。

先生によると、2012年にオーストラリアで行われたある研究では、座っている時間が長ければ長いほど死亡リスクが高まるという衝撃的な結果が発表されたそう。

そして死亡リスクが顕著に高まるのは、座位時間が8時間以上の場合。残念ながら日本人の半数は、このボーダーラインのすこし手前にいることになります。

ラクだけど身体に悪い、4つの座り方

とはいえ、座っている時間が病気に直結するという考え方は、少し短絡的かもしれません。

むしろ問題は、腰痛や肩こりをもたらす“悪い座り方”が習慣化していることだと、中村先生は著書の中で書いています。以下の4つが、「ラクだと思っているけれど、実は身体に悪い座り方」の典型例にあげられています。

あご出し座り(あごが出ている) へそ折れ座り(お腹が折れて、おへそのあたりにシワができている) へそ折れ・あご出し座り(あご出し座りとへそ折れ座りの合体型) 脚組み座り(脚を組んで座っている)

(『医師が教えるゼロポジ座り』p.24~27より引用)

特に最近、スマホの普及で増えているというのが、3の「へそ折れ・あご出し座り」だそう。

椅子によりかかってリラックスしながら、スマホを見ている状態を思い描いてみてください。そのときはラクな気がしますが、ずっとそのままでいると腰が痛くなってくる、あの姿勢。

じつは、骨盤が後ろに倒れて腹筋も背筋も使われていないため、腰の骨だけで身体を支えることになり、身体にかなりの負担がかかっている状態だといいます。

この座り方が習慣化すると、腰痛やヘルニアが起こりやすくなるばかりか、将来自分の足で歩けなくなる可能性もあるとのこと。できるだけ早く、座り方を改善する必要があると中村先生は警鐘を鳴らします。

「ゼロポジ座り」がよい理由

それでは、身体に負担をかけない“よい座り方”とは、どんな座り方なのでしょうか?

多くの人がイメージするのは、股関節と膝を直角(90度)に曲げ、背筋をピンと伸ばした座り方かもしれません。しかし、このような「直角座り」は筋力が必要であり、筋力が足りない人はかえって疲れてしまいます。

そこで、本の中で中村先生が勧めているのが、体をニュートラルな状態=ゼロポジションに保つことができる「ゼロポジ座り」。コツは、背筋と股関節の角度を90度ではなく、110度ぐらいまで開くことです。

股関節を110度程度に開いて座ると、立っているときと同じように、骨盤が立って腰椎がその上にまっすぐにのる「ゼロポジション」に近づくため、体の負担が小さくなります。

脊椎全体が骨盤の上にまっすぐにのるので猫背にもなりにくく、頭も脊椎の上に正しくのります

そのため首にも肩にも腰にも負担がかからず、腰痛や肩こり、首こりも起きにくくなり、体がラクで、長く座っていても疲れないのです。

(『医師が教えるゼロポジ座り』p.52~53より引用)

「ゼロポジ座り」をすると背筋が伸びて胸が広がり、肺や内臓が圧迫されなくなります。その結果、疲れないだけでなく、消化不良や胃もたれ、便秘などのトラブルも防ぐことができるのだそう。

しかも体幹の筋肉が鍛えられるため、体が引き締まり、太りにくくなる効果も期待できるといいます。

太ももより膝を10cm下げるのがコツ

「ゼロポジ座り」の姿勢については、正確には本書のイラストを参考にしていただきたいのですが、座ったときに太ももの付け根の位置よりも、膝を10cmほど下げるイメージにするのがコツとのこと。

実際に試してみたところ、お尻の下にバスタオルを折りたたんだものを敷くようにすると、お尻の位置が上がって股関節が広がり、うまく「ゼロポジ座り」の姿勢を作ることができました。

机が低すぎたり、椅子の高さが合わないときは、クッションや座布団を使って調整することができます。その方法もくわしく紹介されていますので、ぜひ実践してみてください。

座り方ひとつでこんなに身体がラクになるなんて……と、きっと嬉しい驚きがあるはずです。

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