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心理療法士が語る。性の喜びは、生きる力になり得るか

2019/03/09 05:30 投稿

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──cafeglobeより転載 Image via Shutterstock

「良いセックスは、なぜ大抵、色褪せてしまうのか? たとえそれが愛し合っているカップルのものであろうとも」 「TED」より翻訳引用

開口一番、Esther Perel(エステル・ペレル)は、こう問いかけます。

「なぜ、親密な良い関係にあっても、良いセックスが保証されないのか。(中略)既に手に入れたものに、さらに欲望を感じ続けることはできるのか。(中略)禁じられたものはなぜ、こうもエロティックなのか」 「TED」より翻訳引用

続けて畳みかけるように発せられるこれらの問い。大きく見開いた目と人を惹きつける話術で、エステルはあっという間に聴衆との間に独自の世界を築いていきます。

2013年にエステルが行ったこのTEDトーク「長く続く恋愛関係における欲望の秘訣」は、36言語に訳され、TEDサイト上だけでも閲覧数1200万回を超えました。

The secret to desire in a long-term relationship

愛情と欲望は対極にある

心理療法士として、多くのカップルのセックスにまつわる問題を目にしてきたエステルは、愛情と欲望は対極にあるものと考えるに至ります。そうして、それこそが、愛し合っているにもかかわらず、パートナーへの性的欲望を失ってしまうカップルが増加する原因だと説きます。

では、対極にあるはずの愛と欲望、どちらをも失わずにいるにはどうすればいいのかを著したのが、2006年の著書『Mating in Captivity: Unlocking Erotic Intelligence』(邦題『セックスレスは罪ですか?』(2008))です。これはベストセラーとなり、24か国語に翻訳されました。

また2015年には、不貞に焦点を当てたTEDトーク「不貞の真実~誰かを愛したことのあるすべての人に~」を行い、TEDサイト上で閲覧数980万を超える人気となっています。2017年10月には、同じテーマで『The State of Affairs: Rethinking Infidelty(情事のありよう:不貞の再考)』(2017)を刊行。アメリカでは発売から半年で47,000部という販売数を記録しました(Le Point誌)。

時代の特徴も取り込んだ、決してユニラテラルでない考察。人を引き寄せる話術。人気の秘密はいろいろでしょうが、これだけ多くの人の共感を得ているのは、やはりその説に多くの真実が含まれているからではないでしょうか。

「生」と深く関係するセクシュアリティ

小柄な体に知性とエネルギーを詰め込んだようなエステルは、ベルギー生まれの60歳。9か国語を話して世界中を旅し、現在まで30年以上アメリカで活動しています。

Esther Perel on Instagram: “Feeling grateful for the energy of last week's #SummitOfGreatness. Being escorted to the stage by a drum line was a first for me! A big…”

なぜ、カップルの性問題に取り組むようになったのか。エステルはそれを自らの経歴と結び付けて説明しています。彼女は、ホロコーストからの生還者たちからなるユダヤ人社会で育ちました

私が育ったベルギー、アントワープのユダヤ人社会には、大きく分けて2種類の人々がいました。「死ななかった人たち」と、「再び生き始めた人たち」です。(中略)「死ななかった人」たちは、大抵元気がなく、恐怖と、警戒に満ちています。カーテンをきっちりと閉めているのです。恐怖と警戒の中では、喜びを得ることはできません。(中略)実際、もう一方の「再び生き始めた人たち」は、エロティシズムを、死の緩和剤だと理解した人たちでした。 Archeの講演から翻訳引用

セクシュアリティを含めた喜びは、生きることと深く関係しています。「生」をしっかり手に握りしめる力強さがなければ、生きていても喜びを感じることはできないのです。

実は、セクシュアリティについて、私に相談にくるカップルはみな、「生きていると感じたい」と口にするのです。 Archeの講演から翻訳引用

本当の意味で生きているからこそ感じられるセクシャルな欲望。カップルがそれを取り戻す手助けをすることは、エステルにとって「再生」の手助けなのでしょう。

使命感に裏打ちされたパワー

両親ともにホロコーストの生き残りであるという事実は、子どものころからエステルに、人生の重みは自分ひとりだけのものではないという意識を植え付けてきました。

(子どもの頃、将来)こういうことをするようになろうとは、想像したことがありませんでしたが、何か大きなこと、意味があり、反響を呼ぶことをするようになるという確信は持っていました。それは、私の両親が二人ともホロコーストの生き残りだったことと関係します。父方、母方とも200人ほど強制収容されたうち、唯一生き残ったのが父であり、母だったのです。

その2人から生まれた私は、どこかで、自分は一人の人物というだけでなく、何かのシンボルだという気持ちを持っていました。(中略)ですから、私の人生は、頑丈で、たくましく、太く、重く、重要でなくてはならないと思っていました。それは、私個人のナルシシズムによるものではなく、私が「返さなくてはならない」ものに対しての思いです。 Archeの講演から翻訳引用

エステルの上の言葉を聞いた時、この使命感こそが、彼女のパワーの源なのだと悟る思いがしました。以前紹介したシモーヌ・ヴェイユもそうですが、ホロコーストのような凄惨で強烈な体験でさえ、使命感に昇華できる人が確かに存在するのです。

そう考えれば、私たちを取り巻くどんな逆境や困難も、捉え方次第で生きる支えにできるのではないかと思えてくるから不思議です。

セクソロジストというと、とかく先入観を持たれがちですが、性と生は切り離せないものと考えるエステル・ペレルの考察は、セクシャルな悩みを持つ人にも持たない人にも、より良く生きるヒントを与えてくれます。

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Esther Perel, Le Point, TED1, TED2

cafeglobe

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