「気絶した経験がありますか? なんだか怖いことのように思えますが、気が遠くなっても90%は全く問題ありません」
そう話すのは、オタワ病院研究所(OHRI)の臨床疫学者でオタワ大学助教の医学士(MBBS)、ヴェンカテーシュ・ティルガナサンバンダムールティさん。
でも、残り10%は何かの病気のせいかもしれません。つまり、いずれ健康上の重大な問題が起こる可能性があるということ。
何かの病気が潜んでいる可能性も
「なぜ起こるのかに関わらず、気が遠くなるのは脳の血液が一時的に減った結果です」と、ニューヨーク大学ランゴーン医療センター循環器科の助教で医師のローレンス・フィリップスさんは説明します。
「血圧や心拍数の低下、心臓とは関係のない神経性の要因など、原因が身体のさまざまな部分に根ざしている可能性があるため、医師は患者の血圧や心拍数がどうして下がったのかの理由を見つけようとします。中には、よくあることで心配には及ばないものもありますが、さらに調べた方がよいものもあります」(フィリップスさん)
血圧や心拍数が下がると、気絶しないまでも、頭がクラクラするような、今にも気が遠くなりそうな、あの言いがたい独特の感じになる場合があります( “めまい”は頭がクラクラする感じに加えて、部屋がぐるぐる回る感じも伴います)。
気絶したり、頭がクラクラしたりしたとき、心配するべき原因なのか否かは、なかなかわかりにくく、医師でも悩むことが多いもの。
次に、頭がフラつく9つの理由と、どうしてそうなるのかを見てみましょう。いずれにしても、何か新たな症状が出た場合や、自然に戻らないときは、大事をとってかならず医師の診察を受けましょう。
01. 脱水
image via shutterstock暑くなって汗をかき、身体の水分が多量に失われると、頭がフラフラしたり、気絶にまで至ったりする傾向が強い人もいます。
「夏に教会の中で立っていたなど、暑い部屋の中で起こりやすいのです。暑くなると、血圧を下げようとする神経の回路が活発に働き始めるためです」と、ティルガナサンバンダムールティさん。
「脱水(口の中や皮膚の乾燥、色の濃い尿、頭痛などの症状も含まれます)のせいで頭がフラフラする場合は、横になると心臓と脳に血液が送られて、かなり早く気分がよくなります」
02. びっくりした
image via shutterstock“サプライズ誕生パーティ”で友だちがソファの後ろから飛び出してきたときなどにも、同じような反応が起きます。「こんな状況でも、基本的に神経が過剰に反応しています」とティルガナサンバンダムールティさん。
このために血圧が急に下がって、頭がクラクラするわけです。「普通、本当に気絶しそうなときにはちょっとした前兆を感じるものです。少し青ざめて、ムカムカするといったことです」
03. 急に立ち上がった
image via shutterstock座っていた姿勢から急に立ち上がったときに、頭がクラクラしたり、視界に黒い点まで見えたりする症状には、実は名前があります。「起立性低血圧」といい、立ったときに血圧が急に下がります。
たいていは特に問題ないのですが、何度も起こる、数分たってもよくならずに逆にひどくなるようであれば、医師に診てもらう方がよさそう。
04. 心拍リズムの異常
image via shutterstock「びっくりしたことで起こる気絶は、比較的ゆっくりと症状が始まります。それに比べて、心臓関連の気絶は急に起こります。ですから、頭のフラつきに気づきさえしないかもしれません。
“不整脈”と呼ばれる不規則な心拍リズムは、心拍が遅すぎるか速すぎるかのどちらかの場合。いずれにせよ脳に送られる血液に影響します」とフィリップスさん。
「たいていは何の前触れもなく起こる。このような突然の気絶がいちばん心配です」と話すのは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校循環器科の臨床医学助教で医師のメリッサ・S・バローズ・ペーニャさん。
バローズ・ペーニャさんの説明では、「話している最中に突然、気を失って倒れ、意識が戻ると、倒れる前に何か感じたかどうか覚えていません」。
このような場合、救急治療に当たった医師はすぐに心拍リズムの異常のせいではないかと疑います。メイヨー・クリニックによると、心拍リズムの異常は「心臓突然死」の最も多い原因なのです。
05. 心臓弁に問題がある
image via shutterstock心臓の4つの弁は、身体全体に血液を均等に送る役目を果たしています。でも、生まれたときから心臓弁に問題があると、その機能をカバーするために心臓に大きな負担がかかることに。
バローズ・ペーニャさんによると、このような先天性の原因は若い人で多く、60歳以上の人は不整脈のリスクが高くなります。心臓弁に問題があると、血液の流れが制限されて、特に運動中など、頭がフラついたり、めまいを覚えたりする可能性があるそう。
06. 薬の副作用
image via shutterstock「鎮痛薬や抗不安薬など、ある種の薬が原因でめまいや頭のフラつきが起こる場合があります。このような薬は、脳に直接的に影響したり、心拍を遅くしたり、血圧を下げたりするために、このような症状が起きます」(フィリップスさん)
「頭のフラつきがよく起こるのに原因がわからないとき、薬局の処方箋を見たら、薬の副作用であまり一般的ではない症状の中に『頭のフラつき』が含まれているのを発見して驚くことがあります」と、バローズ・ペーニャさん。なので、医師には服薬リストをよく調べてもらう必要があるかもしれません。
バローズ・ペーニャさんによると、服用している薬に対するアレルギー反応の可能性もわずかながらあるそう。まれなケースですが、何かの薬に対して命に関わるアレルギーをもつ人は、頭がクラクラしたり、気絶したりする場合があります。
「免疫系がとても激しく反応した結果です」と、バローズ・ペーニャさん。そのために血管が広がって、血圧が下がります。「頭がフラつくのは血圧の低下のせいですが、その原因は免疫系の反応なのです」
07. 低血糖
image via shutterstock食事を抜いたことのある人なら、おそらく本当に“おなかがすいてイライラする”感じがどんなものか知っているでしょう。
いら立つ理由は、ちゃんと食べないと血糖値が大きく乱れてしまうから。そして、血糖値が低くなりすぎると、脳はエネルギー源になる栄養、つまりブドウ糖(糖の一種)が足りなくなります。
「これはむしろ代謝の問題です」とバローズ・ペーニャさん。たいていは急いで何かを食べれば、イライラの症状はなくなります。
専門家からひとこと:空腹を満たせて保存のきくスナック(プロテインバーのような)をデスクの引き出しに常備しておくと、相当に忙しい日もエネルギーを補給できます。
でも、バローズ・ペーニャさんによると、糖尿病で血糖値を下げる薬を服用している人は、頭がクラクラしたら血糖値が危険なくらいに下がっているサインかもしれないので、重大に受け止める方がよいそう。けいれん発作や意識不明状態につながりかねません。
08. インフルエンザ
image via shutterstockウイルスが原因の呼吸器感染症、インフルエンザにかかると、発熱や筋肉の痛み、寒気、喉の痛み、頭痛、鼻づまりなどの厄介な症状が現れます。
「頭がクラクラするならば、それは脱水と低血糖のせい。そういう時には、食べ物や飲み物をとります。そんな気分ではないでしょうが、頭のフラつきやほかのイヤなインフルエンザの症状をおさえてくれます」(バローズ・ペーニャさん)
09. 脳卒中
image via shutterstock「筋肉が弱くなった、話すのが困難、しびれやチクチク感があるといった症状と一緒に、頭がクラクラする(またはめまいがする)のであれば、脳卒中(脳の一部で血液が遮断される症状)のせいかもしれません」とフィリップスさん。この場合は、すぐに救急病院に連絡する方がよいそう。
バローズ・ペーニャさんによると、脳に血栓ができたときも、頭のフラつきにつながる血流の低下があり、これは「虚血性脳卒中」と呼ばれる症状を引き起こします。
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訳/STELLA MEDIX Ltd.