甲状腺がうまくはたらかないとどうなる?
甲状腺は首の前面にある、チョウチョのような形の器官。甲状腺ホルモンを作って、心拍数やカロリー消費などの代謝活動を制御しています。甲状腺がうまくはたらかないと、このホルモンが十分に作られなくなり、疲れや抑うつ感を覚える、ほんの少し食べただけでも太るといった状態に。
化学的に合成した甲状腺ホルモン剤を服用すれば、ホルモンの足りない分を補って、本来の自分を取り戻せます。「でも、特定の食べ物を増やしたり減らしたりするだけでも、甲状腺の機能をベストな状態に維持する助けになります」とイリノイ州ヒンズデールにある医療機関、AMITAヘルス・アドベンチスト医療センターの認定内科専門医/内分泌代謝専門医、ホン・リーさん。
合成甲状腺ホルモン薬の用量がだんだん多くなってしまうのを避けられますし、最終的には薬に頼らなくても甲状腺の機能を保てるようになる可能性も。
では、何をたくさん食べて、何を減らせばよいのか? 次に、甲状腺によい食べ物と、あまりよくない食べ物をご紹介します。
もっと食べた方がよいのは?
鮭
研究によると、甲状腺機能低下症でいちばん多いタイプの「橋本病」の人は、普通の人より体内のビタミンDが低レベル。ビタミンDが少ないと甲状腺の抗体が増えるため、よくありません。「抗体により免疫系が活性化することで、甲状腺の組織が攻撃されてしまうのです。すると炎症が起こって、甲状腺がうまく機能しなくなります」と、登録栄養士のリサ・マークレーさん(橋本病の人のための料理本『The Essential Thyroid Cookbook』の著者)。
ビタミンDの推奨1日摂取量、600 IUを守れば、炎症を食い止め、甲状腺がベストな状態で機能する助けになるそう。鮭は約85グラムで570 IUと、最高のビタミンD源です。(魚が苦手な人は、栄養強化オレンジジュース、ミルク、卵からもビタミンDがとれます)
ブラジルナッツ
毎日2個が目標、とリーさん。セレンの推奨1日摂取量を満たすにはそれで十分。セレンは甲状腺に多く集まっている微量ミネラルで、甲状腺ホルモンを作るために欠かせない重要な役割を果たしています。
加えて、もうひとつの大きな作用としてセレンは抗酸化力を高めてくれます。「橋本病のような自己免疫疾患では、体内の炎症が増加しますが、セレンの抗酸化能力は炎症を鎮めたり、抑えたりする助けになります」(マークレーさん)。
白豆類
煮た白豆1カップで鉄8 mgがとれます。多くの人、特に閉経前の女性は、鉄が十分に取れていません。でもたっぷりとることが大切。「さもないと、甲状腺ホルモンを作る酵素の活性が損なわれてしまいます」と、リーさん。(19〜50歳の女性は毎日18 mgの鉄が必要ですが、男性と51歳以上の女性は8 mg)
覚えておく方がよいことふたつ。まず、鉄は身体に吸収されにくいのですが、ビタミンCを含む食べ物と組み合わせてとると、吸収がよくなります、とマークレーさん(例えば、白豆をレモンのビネグレットソースであえる)。次に、鉄は合成甲状腺ホルモン剤の効果を弱めますから、鉄分たっぷりの食事をとるなら、甲状腺薬は必ず食事の4時間前か後に服用するようにします。
控える方がよいのは?
大豆
「一部の大豆食品(あるいは大豆全般)の取りすぎは、甲状腺によくありません。甲状腺は基本的に、ヨウ素というミネラルを原料としてホルモンを作りますが、大豆に含まれるイソフラボンはこのホルモン生産プロセスを邪魔するから」とマークレーさん。
甲状腺機能低下症でも、ほとんどの人は大豆をまったく取らないようにする必要はありません。でも、週2、3回に制限して、さらにテンペや味噌のように加工が最小限の食品にしておく方がよさそう。マークレーさんによると、加工処理した「分離大豆たんぱく質」を含む食品(大豆たんぱく質の粉末やプロテインバー、大豆ベースの代用肉である大豆ミートなど)は、イソフラボンを多く含む傾向があります。
アブラナ科の野菜
そう、あの「万能野菜」のケール、それにブロッコリー、カリフラワー、ブリュッセルスプラウト、キャベツと、アブラナ科の野菜は栄養豊富なのですが、「ゴイトロゲン」という天然の酵素もたっぷり。「これが甲状腺ホルモンの生産を邪魔します」(リーさん)。
でも、アブラナ科の野菜をすべて食べないようにするほどではありません。「食べる量が問題です」と、マークレーさん。毎週2、3回アブラナ科の野菜を食べるのは構いませんが、毎日2、3キロものケールをジュースにして飲むのはよい考えではなさそう。注意点は、必ず火を通すこと。「加熱すると、有害な酵素が中和されます」とリーさん。
グルテン
グルテンフリー食はすべての人に向くわけではありません。でも、リーさんによると、小麦や大麦、ライ麦などグルテンを含む食べ物は、炎症を誘発するのではないかと考えている専門家もいます。「そのため、抗体による甲状腺組織の攻撃が激しくなる可能性があります」と、マークレーさん。
とはいえふたりとも、甲状腺機能低下症であれば必ずグルテンを抜く必要があるとは考えていません。でも、3〜4週間グルテンをとらないでみるのは試す価値があるかも。
「グルテンフリーにして気分がよくなるようであれば、ずっと続けることについて医師に相談してみます」(マークレーさん)。
医師に相談する方がよいのは?
塩と海藻
甲状腺機能低下症について話す場合、ヨウ素の問題は避けて通れません。甲状腺ホルモンを作るために欠かせないミネラルです。でも、毎日1100マイクログラムより多くとると、甲状腺の問題が悪化する恐れがあります。
「ですから、とる量に注意することが大切」(リーさん)。ヨウ素を含む食品は食卓塩(コーシャーソルトや海塩には含まれません)、乳製品、魚介類。こういった食べ物をいつもとっている限り、ほぼ確実に十分な量を取っていますし、海藻のようにヨウ素をとても多く含む食品は避ける方がよさそう。
でも、食卓塩ではなくコーシャーソルトや海塩を使っていて、ヨウ素が豊富な食品をあまり頻繁に食べていないのであれば、もっとヨウ素をとる必要があるかも。内分泌専門医に相談すれば、適切な量をとっているかどうか判断してくれます。
Marygrace Taylor/The Best Diet for an Underactive Thyroid
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