思い当たるとしたら、もしかするとただのドライアイではなく、「シェーグレン症候群」かもしれません。
シェーグレン症候群って?
シェーグレン症候群は自己免疫疾患。つまり、身体の免疫系が健康な組織を攻撃してしまうためにさまざまな症状が起きる病気です。シェーングレン症候群では、涙や唾液など身体の水分を作る「腺」が攻撃されて炎症が起きます。重要な器官やシステムにダメージが及ぶことも。
どうしてシェーグレン症候群になるのか、科学的にはっきりとは解明されていません。遺伝子のせいでなりやすくなり、ウイルスや細菌などの環境要素が引き金となって、免疫系の過剰反応が起こると考えられています。
シェーグレン症候群はリウマチ性関節炎に次いで2番目に多い自己免疫疾患ですが、認知度は低く、誤診や診断されないことがよくあります。主な症状がドライアイ、ドライマウス、疲れ、関節痛と不思議な取り合わせなため、何かおかしいと気づくまで時間がかかり、医師が総合的に判断できない場合も。
そして、ほかの自己免疫疾患と同じく、シェーグレン症候群も症状が治まったり、また現れたりします。テニス界のスター、ビーナス・ウィリアムズさんも、シェーグレン症候群と正しく診断されるまで数年間も、絶え間ない疲労感などの症状に苦しんだことで有名。
ビーナス・ウィリアムズさんは2011年、シェーグレン症候群と診断されたと告白。メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学ウィルマー眼研究所の眼科学教授、エセン・アクペクさんによると、多くの人はシェーグレン症候群の症状をあまり気にかけないので、「何年もの間、くすぶり続けます」といいます。
シェーグレン症候群には単独で発症する「一次性(原発性)」と、リウマチ性関節炎やループス(全身性エリテマトーデス)などほかの自己免疫疾患と一緒に発症する「二次性」があります。
一次性シェーグレン症候群は「(症状が)とても目立ち」、「とんでもなく」乾燥した状態になります、とニューヨーク州ロチェスターの開業リウマチ専門医、タンミ・シュロッツハウアーさん(リウマチ性関節炎の解説本『Living with Rheumatoid Arthritis』の著者)。
二次性シェーグレン症候群を併発したリウマチ性関節炎の人もドライアイとドライマウスの症状が出ますが、「一次性に比べればほど遠いレベル」だそう。
シェーグレン症候群を完全に治す方法はなく、炎症を鎮めて症状を和らげるのが治療法。医師によれば、早めに治療するほどよい結果が出ます。
シェーグレン症候群の症状は?
例えば目の乾燥が、ただのドライアイなのか、それとももっと重大な病気の症状なのか、次にご紹介するシェーグレン症候群の症状とサインを検討して、気になったら医師に相談します。
ドライアイ
シェーグレン症候群の場合、涙を作る腺が炎症を起こして、涙の生産量が正常より少なくなり、常にドライアイに。
「例えばタマネギを切ったときなど、涙が出ないと気づくでしょう」(アクペクさん)
ドライアイは不快なだけではありません。湿気が足りなくなると、目を覆っている透明な膜が曇ることがあります。ときには小さな孔や、潰瘍ができて、感染症になりやすくなるほか、視力を脅かす合併症が発生する場合も。
「常にかなりのドライアイというのは決して正常ではありません。何かの結果であり、それはたいていシェーグレン症候群です」(アクペクさん)
ドライマウス
シェーグレン症候群の人は唾液を十分に作れないため、いつも口の渇きに悩まされています。
「水の助けを借りずにクラッカーを食べられないとしたら……十分によくない状態です」と、ジョンズ・ホプキンス大学のシェーグレン症候群センター多分野チームのメンバーでもあるアクペクさん。
唾液の組成も変化します。シェーグレン症候群の人は虫歯や歯周病、感染症など歯と歯茎の問題を発症する可能性があります。唾液腺が腫れていると気づく人もいるかも。
関節痛
ドライアイやドライマウスの前に、関節痛がシェーグレン症候群の最初のサインとして現れる場合もあります。
特に指、手首、くるぶしの関節が腫れる、押すと痛むのはよくある症状。肩、膝、腰が痛む人もいます。筋肉痛や身体全体の全般的な痛みとして不快感を覚えるケースも。
一次性シェーグレンなどの自己免疫疾患による炎症のせいで、関節痛が現れたり消えたりします。アクペクさんの患者のなかには、痛みのせいで5分も座っていられない人もいるそう。
疲れ
いつも疲れきった感じですか? 慢性的な疲れは多くの自己免疫疾患の主要な症状。シェーグレン症候群も例外ではありません。
一次性シェーグレンでさえ、身体の疲れはとても多く見られます。
ペンシルベニア大学のリウマチ学者、フレデリック・ビビノさんと同僚の人たちが作成した治療ガイドラインによると、シェーグレン症候群をコントロールするうえで、疲れは「最も治療が大変な症状のひとつ」。
ドライスキン、発疹、ただれ
シェーグレン症候群の人は、皮膚が乾燥したり、薄くなったりすることがあります。あるいは、たいてい日差しを浴びた結果として、皮膚に発疹ができる場合もあり、なかなか治らない皮膚のただれ(潰瘍、「血管炎」と呼ばれる症状)につながりかねません。
シカゴの医師が最近報告したケースでは、シェーグレン症候群の女性患者(29歳)が両脚と右上腕に発疹ができ、6カ月間続きました。発疹ははじめ、点状出血(針で刺した程度の点々で、普通は赤か紫色)でしたが、症状が悪化するにつれて、点々がつながった紫色っぽい部分が皮膚のあちこちにできたそう。
膣の乾燥と感染
シェーグレン症候群の場合、膣も乾燥します。膣の分泌液が出なくなって問題が表面化。カンジダ膣炎になる恐れがありますし、膣の痛み、焼けるような感覚、かゆみがあるかも。
「正常な膣内細菌叢(フローラ)が乱れて、異常な細菌が増えます」と、アクペクさん。
もちろん、閉経期に膣が乾燥するのはよくあること。でもシェーグレン症候群は事態をさらに悪化させて、セックス中の痛みなどが起こります。
しびれ、めまい、記憶障害
シェーグレン症候群では、中枢神経系と末梢神経系がダメージを受ける場合も。
神経の合併症は全身に及びます。身体の末端、特に手足に、痛み、焼けるような感覚、チクチクする感じ、しびれなどを覚えるかもしれません。頭がぼんやりしたり、集中力がなくなったりすると言う人もいます。
「歩き方やバランスなど、歩行に問題が出る可能性もあります」と、アクペクさん。話し方にまで影響が現れるそう。
シェーグレン症候群の合併症はあるの?
肺、肝臓、腎臓など身体中のさまざまな器官に被害が及ぶ恐れがあります。例えば、しつこい咳に悩まされたり、再発性の気管支炎になったり……。
でも「いちばん怖い合併症は明らかにリンパ腫です」(アクペクさん)
リンパ腫は、体内で感染と戦う白血球(「リンパ球」と呼ばれます)ががん化してはじまります。シェーグレン症候群で身体の水分を作る腺を攻撃しているのも、同じ白血球。これがどうしてがん化するのかは、わかっていません。でも、シェーグレン症候群の人は、普通の人よりはるかにリンパ腫を発症しやすくなります。
By Karen Pallarito/Sjogren's Syndrome Symptoms That Signal Your Dry Eyes Are Something More
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