2月3日(土)に第5回文化レクリエーションが開催されました。昨年4月の本会設立以来、これで初年度の文化レクを全て終えたことになります。開設年を大過なく過ごせたことに会員の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
私は山種美術館について知識がなかったのですが、創立者が「山崎種二」さんという方で、その名から取ったものだそうです。山種証券(現SMBC日興証券)の創業者でもあります。美術館自体はコンパクト・シンプルな造りですが、どことなく品を感じさせる空間でありました。日本画に特化したタイプの美術館とのことです。
今回の企画展は横山大観の生誕150年を記念したもの。近代日本画家の代表格と言えば彼のことでしょう。「個人でも西洋画には触れてきたが、日本画についてはこれまで目にする経験は少なかった」とのMAA会員の話もあり文化レクとしての設定をみました。法人での機関決定なればこそ、自分の関心領域外の文化的営みに触れる機会が持てるという機能があるように思います。「既知を広げ、未知に触れ、文化と呼吸する」という本会のスローガン、なかなか良いものではないでしょうか…(自賛)。
私は文物について哲学的関心を抱いて日々を過ごしている者ですが、横山大観という人物の「画」に対する精神的姿勢を知るに連れ、その基本的思考に強く共感を覚えました。国粋主義的な側面を持っていた画家でもあるようですが、そうした点は特段強調された展示ではなかったですね。「画を書くことは、自分の心を描くことである。従って自らの人格の投影として画が存在する」というスタンス。世にあっては成果物と制作者そのものを分離して評価すべきとする類の話も少なくないですが、私自身はあまりそういう捉え方に与してはおりません。理想主義的な考えなのでしょうけれど、「素晴らしい作品は深い人格や見識があってこそ生まれる」と信じたい性分です。実際のところ、必ずしもそうはなっていない事例が幾つもあることを知ってはいるのですけれどね。
自分自身に絵心がないのもあって技術的な視野での鑑賞はできないのが残念ではありますが、紙そのものに工夫が凝らされている点や墨の濃淡だけで表現する巧みな水墨画の技法など、描画そのものの質以外にも視点があることについて新しい知識を得られたことは少なくない収穫でした。
また、師である岡倉天心と理想を共有し行動を共にして、敢えて困難な道を選択する姿は後世に生きる私達にも深い示唆を与えてくれているように思えてなりません。状況次第で安易に態度を変えたりしない精神的な芯の強さを感じるものです。年月を経ても風化しない文物を残す人物には、やはり何か心根に通底するマインドがあるのかもしれませんね。かつてNHKで横山大観と作家・吉川英治との対談が企画されたりもしたそうで、分野は異なっても文化を創出する主体者としての語り合いが当時の社会において高い関心を引き起こしたであろうことは想像に難くありません。響き合う感性を味わえる喜びは当事者にとって何物にも替えがたい価値を持ったことでしょう。人生においてそんな人間関係が築けたらどれほど贅沢なことか。自らもまた、そのような日々を過ごしたいものです。その為にも精進を重ねていきたいと心から思うところです。
この企画展では横山大観以外にも著名な日本画家の作品が展示されていましたが、中でも印象的だったのは東山魁夷の「年暮る」ですね。雪国出身の私としては雪が「しんしんと降る」という空気感を肌感覚で掴めるのですが、それが見事に描かれていてしばし画の前で立ち尽くしてしまいました。どう言えばよいのでしょう、画から伝わってくるものが画外のシーンすら想起させて脳裏に投影される感覚。人が描かれていないのに人間の吐息が間近に感じられる、不思議な存在感。図らずも涙腺が緩んでしまいました。美醜や技法とはまた別の次元で、情緒や旅情を表していけるのも日本画の真骨頂なのかもしれませんね。
併設されているカフェでは展示会に即したスイーツメニューが提供されており、これらも会員の皆さんが楽しまれたようです。本記事に写真を載せておきますのでお楽しみ下さい。
※第5回文化レクリエーションのアセスメント結果は https://musiumart.or.jp/assess/7 で参照できます。
-MAA集合写真-
-美術館の近くにあるブルーノート東京-
-美術館入り口-
-床にも-
-階下の展示室へ-
-展示室入り口-
-企画展・スイーツ群-
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