FOREST島人通信

『FOREST 島人通信』2015.8.26号

2015/08/26 21:00 投稿

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▼ 2015.8.26号
▼ 『FOREST 島人通信』
▼ FOREST ISLAND
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▼ご挨拶 

 

みなさま、いつもFOREST ISLANDをお楽しみいただきありがとうございます。

 

いろいろありました夏が終わろうとしております。

 

ニコ生公式「ホラーアベンジャーズ」出演、北海道からの生配信、ろっくまんさんとゲッティさんの企画した「心霊スポット配信リレー」への参加、拙作の24時間上映と実況、三重からの生配信など、皆様のご協力もあり、とても楽しい配信が出来ました。

 

関わってくださった皆様、ご覧くださった皆様、本当にありがとうございました。

 

さて、この8月を締めくくる生放送は、今週末の土曜日、いつものZeNrAさんと二人で行うロケハン配信でございます。

 

2015/08/29() 1557開場  1600開演

http://live.nicovideo.jp/watch/lv232978391

 

どうぞお楽しみに!

 

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        FOREST ISLANDホラー劇場『老人ホームの来客』②

 

結局、雄一郎は、源蔵の訴えることを理解できないまま、ホームを後にした。

ホームの職員に、源蔵の話を伝えるか迷ったが、やめにした。

 源蔵が惚けているかも知れないという現実を受け入れることが出来なかったからだ。

 何かの間違いかも知れない。

 雄一郎は無理にでもそう考えようとしていた。

 しかし、その望みはあっけなく打ち砕かれた。

 数日後、ホーム長より雄一郎に連絡があった。

「源蔵さんが、夜中に部屋の中に誰かがいるとおっしゃって、部屋をお出になられてしまうのです」

 ホーム長は困ったようにそう言った。

「これは認知症の症状かと思われるのですが、お父様に認知症の傾向はありませんでしたでしょうか?」

「ありません」

 嘘ではなかった。

 足腰が弱くなっていたとはいえ、源蔵は受け答えはしっかりしていたし、年齢の割には物忘れに見舞われるということもなかったはずであった。

 唯一、考えられるとしたら、老人ホームへ入居したことの環境の変化が負担となり、認知症を発症した可能性であった。

 雄一郎がそう伝えると、

「そうですか。分かりました。もちろん、認知症になられたからと言って、こちらでの生活が出来なくなると言う訳ではございませんので、お医者様とも相談して対応していきましょう。ただ、出来る限り宮本様もこちらにいらして、お父様にお話しをしてあげるなどしていただけますと助かります」

 そうホーム長に言われ、雄一郎は次の週末にも再び源蔵の見舞いに行った。

 今度も源蔵は椅子に腰掛けていた。

 テレビは点けず、部屋の電気も消しっぱなしにしている。

 雄一郎が電気を点けると、

「暗いままにしておいてくれ」

 そう言うので、雄一郎は椅子を引っ張り出して源蔵の横に座った。

「どう、調子は?」

 当たり障り無く訊いたつもりであったが、源蔵から応えはなかった。

 またもこの沈黙か……。

 雄一郎はうつむいた。

「なぜ誰も信じてくれんのだ……」

 絞り出すような源蔵の声に、雄一郎は顔を上げた。

 源蔵が怒りの表情で正面を見つめている。

「俺がこれほどまでに言っているのに……」

 源蔵は怒ると、自分のことを“俺”と呼ぶ。

 久しく無気力になった源蔵しか見ていなかった雄一郎は、それでも嬉しくなって声をかけた。

「父さん、何のことだい? 何を怒っているの?」

「誰かが来ると、あれほど言っているのに、どうして誰も……」

 源蔵は、件の来客のことを言っているのだろうか?

「何を言っているんだよ。ここのホームの人じゃないの? あるいは同じフロアーに入っている人とか?」

「違う」

 はっきりと源蔵は否定する。

 雄一郎は悲しくなった。やはり源蔵は認知症になってしまったのかも知れない。

自分が無理矢理こんなホームに入れたことがいけなかったのだ。

 そう思っていると、

「言っとくが、俺は惚けてないぞ」

 源蔵の声に、雄一郎はハッとした。

 源蔵が顔を向け、まっすぐに雄一郎を見つめている。

「ホームの連中も誰も信じてくれん。しかし俺は惚けている訳ではない。確かに誰かが来るんだ」

 雄一郎は困惑していた。

 目の前の源蔵は、確かに表情もしっかりしているし、認知症とは思えない。

 しかし、言っていることはやはり要領を得なかった。

「じゃあ、誰が来るって言うのさ?」

 訊いてみると、今度は源蔵はゆっくりと顔を近づけてきた。

「それが知りたかったら、お前が今晩ここに泊まってみろ」

「いや、それは出来ないって。明日も仕事があるし」

「朝一番の電車で行けば間に合うじゃろ」

「そうだけど……」

「俺の言ってることが正しいか、俺が惚けたのか、自分の目で確かめてみたらどうなんだ?」

 一体どうしたことだろう?

 目の前の源蔵は、明らかに認知症であるとは思えない。

 当惑しながらも、雄一郎はホームに頼み込み、その晩泊めてもらうことにしたのであった。


                                   <続く>

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