小佐田定雄氏の「貧乏神」とは別作品。
混同を避ける為にこの題名を付けた。
原作は昔からある小噺。
アニメ版は下記URLリンクにて公開。
http://www.nicovideo.jp/watch/1490794398
混同を避ける為にこの題名を付けた。
原作は昔からある小噺。
アニメ版は下記URLリンクにて公開。
http://www.nicovideo.jp/watch/1490794398
【脚本】 底辺亭底辺
それにしてもカネが欲しいもんですな!
ははは、失礼。
皆様と違ってアタシは貧乏人ですもの。
ついつい卑しい願いも出てきますよ~
あら、御存知ありませんでしたか?
貧乏人だって意外と信心深いんですよ?
学びもせず、働きもせず、毎日神様仏様に必死に祈ってるんです。
「どうか勉強や仕事をせずにお金持ちになれますように!」
ってね。
不思議なことに、どういうわけか願いは叶わない。
こんなに真面目に祈ってるのにね?
おかしいんですよ。
神様はアタシのような信心者そっちのけで
お祈りもせずに勉強や仕事にうつつを抜かしてる連中ばかりを金持ちにしちまうんです。
まったく不可解な話ですよね?
まあ、それでも。
アタシら清く正しい貧乏人は、今日も神様にお祈りしておるんですな。
ほら、耳を澄ませて下さい。
聞こえてきませんか~
「ああ、神様!
貧乏暮らしはもう十分です!
そろそろ俺っちに楽な生活をさせて下さいよォ~
毎日毎日、仕事もせずに神棚に手を合わせている俺っちの顔を立てて下さいよォ~
はぁ~ かしこみかしこみ、なんまいだーなんまいだー!」
『ん~
呼んだか~?』
「うわっ!!
神棚から何か出て来た!!」
『はじめまして。
わたしゃ神様♪』
「おお神様!
やっと俺っちにも御利益を下さるんですね?
待ちかねましたよ~
ってそれにしても神様。
こう申し上げては何ですが随分質素な身なりですね。」
『うん。
だって神は神でも
わたしゃ貧乏神だもの♪』
「なにー!
貧乏神だー!
どうりで働いても働いても生活が楽にならないと思った!
いや、働いてないけど!
オマエの所為だったのか!
一発殴らせろ!
こいつめ! こいつめ!」
『痛い痛い!
あんた働いてないでしょ!』
「うるせえ!
言い訳すんな!
とっとと出てけ!!」
『いやいや。
わたしだってもう少し小奇麗な家に住みたいけど。
そこは貧乏神の宿命で、生まれついての貧乏性。
ついつい一番汚らしいこの家に馴染んじゃったのよ。』
「小汚くて悪かったな!
出てけ!」
『御利益あげるから、こおこに置いてよォ~
金運アップだよ~』
「嘘つけ!
貧乏神が金運なんて話、聞いたこともねえ!」
『この家の庭に貧乏神大明神を祭ればいいんだよ~
あんたはお賽銭で生活すればいいんだよ~』
「あのなあ。
みんな何とか貧乏から抜け出したいと思ってるんだ。
貧乏神を祭った神社なんかに参拝客が来るわけねーだろーがよ!」
『あたしにはとっておきの作戦があるんだよォ~
騙されたと思って、貧乏神大明神を建ててくれよ~』
「はあ、俺っちも馬鹿だねえ。
こともあろうか本当に貧乏神大明神建てちまった。
玄関にノボリまで立てちまったしよ…
こんなバカな真似してるから、貧乏なんだろうな、俺。
おおい、婆さん!
何の用だい? 勝手に入ってきて!
え、貧乏神大明神?
いや、ここだけどさ。
え!?
参拝!?
婆さん、アンタ正気かい?
うわあ、しっかりした婆さんだと思ってたが
耄碌してきたのかねえ。
ん?
おお、御隠居!
越後屋の御隠居じゃありやせんか?
御隠居程のお方がこんな裏長屋にどの様な御用件で?
はい!?
参拝?
恵比寿様なら摂津の西宮におられますぜ?
は?
貧乏神を拝みに来た?
あ、いえ。
駄目じゃありませんけど…
何だ何だ?
どんどん人が来るぞ!?
一体何が起こってやがる!」
『ただいま~
調子はどうかな~?』
「いや、見ての通りだよ。
行列が出来ちまってる。
しかし、恵比寿様や大黒様に人が集まるのなら話はわかるが…
どうしてみんな貧乏神なんかを拝みに来るんだ?」
『拝みに来てくれなきゃ、こっちから遊びに行くって言って回ったから。』
「…そりゃあ、まあ。
誰だって慌てて駆けつけるわな。」
『ほら、お賽銭。
80文はあるよ。』
「何だぁ~
あれだけ来たのに
しょぼい金額だな。」
『ごめん…
だってわたしゃ貧乏神だし。』
「…ま、俺っちにはこの程度の御利益がお似合いかもな。
おう、貧乏神!
一緒にソバでも啜りに行こうぜ!」
結局、その男は一生貧乏暮らしをしたそうですが。
貧乏仲間が出来たおかげか、にこやかな人生を送ったという話です。
お後がよろしいようで。
私が知っている原話のオチは、『貧乏神が周囲に脅しを掛けて(参拝に来なきゃ憑りついてやるぞ!)男を金持ちにする』という性質のものだった。
笑い話としては面白いのだが、自助論的価値観で育った現代人としてはやや違和感を感じる内容だったので、男の獲得物を富から友情へと変えさせて頂いた。
ささやかになってしまったオチではあるが、粋を重んじた江戸時代人には赦して貰えると信じている。
全ての貧者に相応の富を。
そして幸福な友情あれかし。
底辺亭底辺
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