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【過去記事リバイバル】ミカド店長イケダミノロックの業務日誌「世界大会について」

2021/03/22 17:00 投稿

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 ども! イケダミノロックです。

 ミカドが主催で開催する「世界大会」というコンテンツは、2014年9月の「『バーチャファイター3tb』世界大会」よりスタートした。以前に紹介した「トークライブの企画(前編後編)」と同様、発案者は『THE END OF ARCADIA』や『TOKYO HEAD RE:MASTERED』など、アーケードゲーム関連の執筆を2012年に再開した大塚ギチくんだ。

 経緯を少し説明すると、『バーチャファイター』というゲームは、続編がリリースされるとプレイヤーたちもそれに合わせて主戦場を新しいナンバリングへ移し、過去作は無きものとされていく。

 ……いや、一部を除くと90年代まではどのナンバリングタイトルも同様の扱いだったと思う。

 話は少し脱線するが、ネットでの配信文化が浸透する前から『スパIIX』『KOF98』『ストIII 3rd』などが何年も遊ばれ続けているのは、ゲームファンやゲームセンターに認知と稼働を貢献したアーケードゲーム専門誌『アルカディア』ならびに「闘劇」開催の影響が強いと思う。

 1993年の初作リリース以来、3D格闘ゲームの王者として君臨していた『バーチャファイターシリーズ』だが、『~4evo』以降は『鉄拳シリーズ』にその座を奪われてしまった感もあり、2014年当時は現役で稼働していた『バーチャファイター5FS』も、「VF.NET」での対戦動画作成サービスが2013年6月に終了。根幹のネットワークサービスも翌年には終了するという噂が業界内に流れはじめていた時期でもあった。

 同作にまつわるプレイヤーたちに思い入れの強いギチくんは、バーチャ界の現状を憂いていたわけだが、考えた末に、ミカドで流行っていた『餓狼伝説スペシャル』や『真サムライスピリッツ』のように『バーチャファイターシリーズ』でも過去作を掘り起こしてムーブメントを起こせないか、と思い立つ。

 で、ここからは俺の憶測だが『バーチャファイター3tb』を2014年に引っ張り出し、悟李羅☆影助というプレイヤーを主軸に(良くも悪くも)祭りあげ、アングルを作り、大会後にその模様を『トウキョウヘッド』の続編としてまとめるのがギチくんの狙いだったのではないかと思っている。

 ここでまずは『バーチャファイター3tb』というゲームについて補足したい。

 1997年、ゲームセンターにリリースされた『バーチャファイター3tb』は、1996年に出た『バーチャファイター3』の有償アップデートタイトルだ。

 タイトルの“tb"とは「チームバトル」の略称で、好きなキャラクターを3人選択し、『KOFシリーズ』のような3on3が楽しめるモードが実装された。世界大会等ではシングルモードを採用しているが、通常はチームバトルモードがデフォルトとなる。また『バーチャファイター3(verD)」から各キャラクターの技性能やバランス調整が施され、ステージのサイズも一部変更になったほか、遊びの要素の域は出てないが、3Dポリゴンゲームならでは要素として「視点切り替え」も可能となった。

 話をさらに遡ると、1996年の『バーチャファイター3』は日本中を席巻するブームとなった『バーチャファイター2』の続編として、アーケードゲームファンやロケーション関係者の期待を一身に背負ったタイトルだった。



 この映像は、1996年のAOUショーで初披露された『バーチャファイター3』のプロモーション映像だが、ブースで定期的に流れるこの映像を見るために、ビジネスデーでもパッと見で300人以上の人たちが足を止めてモニターに釘付けになっていた。あの異様な光景と期待感は立ち会った人ならわかるが、間違いなくアーケードビデオゲームの絶頂の瞬間だった。

 ……そんな期待値が大きすぎたのか、リリース後の評価は芳しくなかった。エスケープボタンや一部ステージのアンジュレーション(起伏)といった追加要素は、前作を知るユーザーからは評価が真っ二つに別れた。『バーチャファイター2』のような売上水準から売上を試算し、『バーチャファイター3』をたくさん買ってしまったディストリビューター(販社)やオペレーターは本当に大変だったと思う。

 とはいえ、腐っても『バーチャファイターシリーズ』だ。『バーチャファイター2』には及ばずともインカムは、充分だったし、遊んだときの楽しさはシリーズ健在で、水準以上の完成度だったと言える。

 そういう意味では、『バーチャファイター3』は設置しておけば勝手にお金がザクザクと入る前作とは違い「店舗の地力」が問われるタイトルだったとも言える。実際、定期的に大会を行うゲーセンは盛り上がっているのに対し、俺の地元や俺自身が店長をしていた大塚のゲーセンでは閑古鳥。今思うと、のちに聖地系と言われるお店や、局地的に盛り上がりを見せるタイトルのはしりが『バーチャファイター3』だったのかもしれない。

 また、ガチで遊んでいるプレイヤー層も若い世代に代替わりしているような印象があった。前作で有名になったバーチャファイターの鉄人たちに憧れていた子供たちだ。彼らからすると、幼すぎてあまり遊べなかった『バーチャファイター2』よりも、『バーチャファイター3』こそがフェイバリット! 世代によってここまで評価が異なるゲームタイトルもまた珍しい。

 『バーチャファイター2』稼働後期から同作の大会に力を入れていた「ゲームセンターアテナ」。名物店長である山岸(勇)さんはもちろん、彼の周辺に集まるプレイヤーたちの熱量は高く、店名を冠した『バーチャファイター』の大会「アテナ杯(現・ビートライブカップ」)は、当然のごとく『バーチャファイター3』『~3tb」に継続されていく。

 そもそも『バーチャファイター』は、他メーカーの追随を許さぬ最新技術と最新3D基板を用いた影響か、それまでのタイトルと異なるスタイリッシュさがありで、どこかサブカルチャー的な雰囲気を持つタイトルであった。
 『バーチャファイター1』の稼働後期から『バーチャファイター2』までのムーブメントは、ファミ通や『TOKYO HEAD』といったマスコミ、作家、業界著名人の力と、その副産物である『バーチャファイター』の鉄人たちのメディア露出など、もはやゲームセンターの枠を超越した奇跡の連鎖で成り立っていたと思う。

 考えてもみてくれ。『バーチャファイター』の鉄人たちは、芸能人でも何でもないのに『笑っていいとも』や『トゥナイト』に出演していたんだぜ? 到底信じられない事案だ。

 そして『バーチャファイター3』以降、ムーブメントの本流がゲームセンターに移る。……いや原点に立ち返ったと言うべきか。

 特に『バーチャファイター3tb』に関してはオフィシャルの大会やセガ直営ゲームセンターの販促ではなく、「アテナ」がその爆心地となり、大会規模も拡大。店内だけではなくクラブやイベント会場を借りなければ間に合わないほどに成長していく。

 その結果「ちび太」「闇よだれ」のほか、新たなスタープレイヤーが生まれ、『バーチャファイター5FS』が稼働する現在に至るわけだが、こうしたバーチャ界の歴史は将来、大塚ギチくんが必ずまとめてくれると信じ、俺はこれ以上の言及をさける。

 ただひとつ言えることは、アテナ杯から端を発したバーチャファイターの新しいムーブメントは、『バーチャファイター2』までのようなTVや一般メディアを巻き込む華やかさとは無縁だが、良い意味でアンダーグラウンドな香りが刺激的でプレイヤーは前作以上の熱量を確実に感じているはず。当時1ユーザーだった俺自身もアテナ杯のVHSを食い入るように見ていたからね。



 ミカドの人気コンテンツである「世界大会」。記念すべき第一回目となった『『バーチャファイター3tb』世界大会」は作家の大塚ギチくんを中心に、大会運営や『バーチャファイター10年の軌跡』のDVD制作などでも活躍するプレイヤーのSHUくんと『~3tb』に思い入れの強いプレイヤーである悟李羅★影助が合流して結成された「悟李羅★影助の命をつなぐ会」による主催大会であり、じつのところ、ミカドはあくまで運営に協力するだけの立場だった。

 開催までの経緯をSHUくんに取材したところ、彼自身が時系列を簡潔にまとめてくれた。なにぶん昔のことゆえ、曖昧な表現かつ多少の事実と相違があるかもしれないがご容赦を)

「『バーチャファイター』20周年記念でなにかできないか?」ということで、ルパン小島さんが大塚ギチくんにSHUくんを紹介する。

『バーチャ』シーンにブランクのあった大塚ギチくんに、SHUくんがさまざまなプレイヤーを紹介する。その中から、『~3tb』に対する悟李羅★影助の”熱い語り"を聞き、大塚ギチくんが『~3tb』に興味を持ち、知識や情報の収集、そして『~3tb」の基板を購入する。

大塚ギチくんが代表を務めるUNDERSELLの事務所(三鷹市)に設置された筐体で「『~3tb」を遊ぶ会」が実施される(2013年の年末くらいかな? たぶん冬だった)。

大塚ギチくんが舌癌の可能性があり緊急入院。舌の一部を切除する手術を行う(2014年の2月)。

退院直後の大塚ギチくんと下北沢で飲んだ際に『~3tb』の大会を開催するアイディアを聞かされ、それにSHUくんが賛同(2014年の5月くらい)。

開催日程を2014年9月と決定し、6月くらいから高田馬場ゲーセンミカドで『~3tb』の稼働を開始。予想を超えるインカムにより、急きょ対戦台を最大3SETまで増加させることに。

7月からTwitterをはじめとする各SNS上で、大会に向けた宣伝告知などの仕込みを開始。そして9月14日、ネイキッドロフトで大会を開催。

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 『~3tb』は個人戦で最強を決める大会が開催されておらず、公式全国大会もなかったため「誰が強いのか決まる瞬間を観たい」という大塚ギチくんのリクエストから、ルールは個人戦トーナメントへ。ミカドではなくネイキッドロフトを会場に選択したのは、山岸勇さんが作ってきたアテナ杯のこだわりである「酒+バーチャファイター大会=盛り上がる」という図式を踏襲したものだ。

 大会名についてはSHUくんの発案より「よそで『~3tb』は稼働してないから(※2014年当時)“世界大会"でいいだろ!」的な感じで「世界大会」と名付けられた。

 ネイキッドロフトのキャパの問題もあり、出場選手は完全招待制という形をとった。鉄人をはじめ、アテナ杯やビートライブカップの活躍プレイヤーが揃い踏み、結果として『バーチャファイターシリーズ』のオールスター戦といった様相に。





 こうして、初の世界大会は無事に終了。ネット上でも大好評かつ、反響も凄まじかった。悟李羅★影助が優勝を収めるという結果も、興行論的にベストだったと思う。

 アーケードゲーム誌『アルカディア』の元編集長である猿渡雅史さんの名言に「仕込みや運営に全力を尽くせば、本番に必ず奇跡が起こる」なんてのがあるが、「ちび太vs闇よだれ」戦で土俵ステージが選ばれた瞬間は本当に鳥肌が立った。ステージセレクトはランダムだし、彼らがトーナメントで激突するだけでも確率的にはすごいというのに!

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(C)SEGA

 運営陣のSHUくんが某社に転職したばかりということで、大会の仕込みに対しフットワークが軽かったことや、悟李羅★影助も仙台から東京まで何度も足を運んで宣伝に汗水を流していたことから、こうした奇跡は起きたのである。

 そして世界大会の余波は意外な方向へ向かう……。

 『バーチャファイター3tb』世界大会を終えた後もその人気は衰える事なく、ミカドに常駐する『ガロスペ』勢、『エアガイツ』勢、『KOF』勢といった他タイトルのプレイヤーをも巻き込み、コミニティは拡大していく。

 「高田馬場ゲーセンミカド」では世界大会の熱を冷まさぬよう、定期大会、ランキングバトル、初心者講習、そして現在は年一で定着している3on3大会などの企画を実現。面白いネタとして『~3tb』勢と他ゲー勢でお互いの持ちゲームで対戦し合うという交流戦も実現した。

 『バーチャファイターシリーズ』において今までなかった「過去作の掘り起こし」という大塚ギチくんの念願は見事に叶った。

 しかし、第2回目の世界大会開催の機運が高まるなか、別の問題が発生する。

 どんな仕事、趣味でもコミュニティというものは大きくなればなるほど、関わる人間の意思統一が難しくなるのが世の定めである。表面上は「高田馬場ミカド」で盛り上がりを見せる『~3tb』も、水面下では世界大会の運営や招待制というルールに一部プレイヤーから反発する意見が出てきてしまった。

 俺は確認していないが、匿名掲示板にも同様の書き込みがあったようだ。この手の大会でよくあることだし、運営とプレイヤー間の意見相違は規模が増すほど避けられない事案ではある。それが何かのキッカケで大なり小なり、感情的な揉めごとに発展する例もある。『~3tb』の世界大会も、同じの問題に直面していた。

 ここで少しばかり仕事の取り組み方の話をする。
 
 俺は参加者全員が100%納得するイベントを開催することは最初から不可能だと思っている。もちろん、納得してもらえるよう頑張る気持ちはあるが、物理的と時間的な問題、そして人間関係など、直面する問題に対し、俺自身は「イベントの期日を決めて必ず開催する」という前提で動く。

 そのためにはある程度の妥協もするし、問題解決に時間がかかる要素は躊躇なく切り捨てる。たとえそれが理想と多少違うものになっていたり、不備を批判されたとしても仕方がないことだと割り切るのが俺のスタンスだ。東京ドームを埋めてしまうような歴史的有名バンドですら、ライブに来たお客さん全員を満足させるセットリストを作れやしない……現にミカドはそうやって今まで生きてこられた。

 それに対し、大塚ギチくんは「100%お客さんが納得できないイベントならばやらない」または「やるのであれば理想の実現に向け何年でも時間をかけて仕事をする」というタイプだ。ひとりの批判も許さないというより、本当の意味で運営者と参加者の全員で楽しさや感動を共有しようという優しい思いが強いのかも知れない。音楽の例えで恐縮だが、ギチくんみたいなタイプの企画者がいなければ4時間で全曲演奏する「CACE OF BOOWY」のようなぶっ飛んだ企画は絶対に生まれてこないし、実現もしない。

 ギチくんが考案した「ミカド事件簿」や「世界大会」同様、俺には思いもつかない企画である。

 どっちのスタンスが良い悪いという二元論ではないことを前提に話すと、俺もギチくんもお互い社長同士だが、俺は営業や接客出身で、ギチくんは物書きやデザイナー出身だ。俺らを比較しても歩んだ道に各々プライドがあるゆえ、仕事のやり方が全然異なるわけで、実際に俺たちは共同作業をするといつも喧嘩ばっかりだ(笑)。ゆえに関わる人数が多くなれば意見をまとめるのは難しくなる。これは大会運営に置き換えても同じで、そこに感情論に含めてしまうと、指揮系統が機能しなくなり、状況はなおさら悪化する。

 究極的な話、「楽しい」と思う判断はお客さんごとにバラバラだし、その基準も曖昧だ。だからこそ新しい企画はやってみなければ正解なんて誰にもわからない。ゲームはもちろん、それ以外も含むエンタメ(映画、音楽、アニメ、お笑い、アイドル、etc)の歴史は「結果論」の積み重ねでしかないのだ。それを履き違え、無知やエゴに端を発するマウントの取り合いは、関わる人の時間とやる気を奪い、ミカドの立場でいえば金銭的機会損失となる。

 しかし、当時の我々はそこまで状況を冷静に俯瞰することができなかった。

 ってな具合で諸々あり、『~3tb』は2014年9月以降も盛り上がってはいたものの、第2回世界大会開催まで三年という歳月を要することになる。

 ただ……どうやら「『バーチャファイター3tb』世界大会」という企画は“劇薬”だったようだ。

 その影響は良くも悪くも大きく、結果として3年間も封印されることになった。この問題を解決するには相応の時間が必要だが、せっかく世界大会がブランドとして確立しそうな中、俺としては空白の3年間を無駄に過ごすわけにいかなかった。

 「『~3tb』での次回開催が難しいようなら、世界大会というブランドで他タイトルで大会を実現したらどうか?」と大塚ギチくんに妥協案を打診したところ、「それはぜんぜんいいんだけど、『3tb』世界大会と同じドラマというか、開催する理由づけが欲しいし、やって終わりじゃつまらないよ」と返事をされた。

 たしかに『3tb』世界大会における悟李羅★影助の思いから大会の結果までは劇的なドラマだったし、大会後も『3tb』の人気は衰え知らずだ。つまりギチくんが言っていることは、そもそも大会自体が該当タイトルのプレイヤーに「絶対参加したい!」と思わせるテーマや「吸引力」が必要で、かつ大会後にその影響が外側――つまりゲーマー以外や他ゲー勢に向けての「遠心力」を発しなければ大会をやる意味がないというわけだ。

 ……おいおい、これって世界中のリアル格闘技団体やプロレス団体が抱える問題点というか、そいつらが成すべき究極の目標だろ?!(笑)。そんな難題をただのゲーセン店長に対して簡単に言ってくれるなぁと、俺はドラえもんのような心境だった……。

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 だが、斜陽となったゲームセンター業界、ビデオゲームというジャンルを活性化したり復興したいのであれば、そのくらいの覚悟が必要なのもまた事実だ。

 そして考え抜いた結果、以下の3タイトルを選出した。

『エアガイツ』
テーマ:まったく別の道を歩んできた「あ〜る滝」と「エアガイツ仮面」が出会い激突する決着戦。

『餓狼伝説スペシャル』
テーマ:ミカド勢vs名狼会というわかりやすい構図に北海道勢まで加えたオールスター戦。

『真サムライスピリッツ』
テーマ:孤高の真サム勢「D3D」選手と、当時は癌で闘病していた(※のちに回復)「神北小鞠」選手の闘いを描く!

 ギチくんらの協力を得ながら空白の3年間を埋め、結果としてどのタイトルの世界大会も好評を博した(上記3タイトルの世界大会についてはまた別の機会に詳細を語りたいと思う)。

 また、大会の主催をミカドに移すことで「あくまでミカドの大会である」とアピール。招待選手しか出場権がない初期コンセプトからオープントーナメントへと方向転換を進め、無用な揉め事ごとを回避する方向へ舵を取った。

 結果、『ガロスペ』と『真サム』の世界大会は毎年実施する定番イベントとして定着。特に『餓狼伝説スペシャル』にいたっては、すでにネイキッドロフトでは開催不可能なほど参加者が増えてしまった。

 それから時が経ち、2017年。既に『ガロスペ』も『真サム』も二度目の世界大会を終え、世界大会を軸にそれぞれのプレイヤーによるドラマ、ストーリーが進行しはじめている。

 ……この機に、今こそ再開すべきではないか?

 「第2回『バーチャファイター3tb』世界大会」を!

 『バーチャファイター3tb』の第1回世界大会以降の三年間、俺が野試合や定例大会を見る限り、「ミカド」の『~3tb』勢は悟李羅★影助の腕前を凌駕しているのは明白であり、影助の優勝はもはや遠い過去の出来事になりつつあった。

 世界大会が継続か否かはっきりしない中、リカちゃん、宮内カゲ、闇よだれ、北口ジャッキー、さとやん、はまラウ、なまサラといった各選手たちが「高田馬場ミカド」に常設された対戦台で連日切磋琢磨を繰り返している。皆んな本当によく頑張ってきてくれたと思う。感謝だ。

 そのモチベーション維持の一端として、新規の女性プレイヤー・ブタニクトマト選手による発案・主催の初中級者大会がスタートし、「ミカド」の定例大会以外にもさらなる新規プレイヤーの呼び水として大きく貢献。また、定期的にミカドで開催するフリープレイイベント「ミカド大感謝際」にて、LJ選手が『~3tb』を毎回出展し、他ゲー勢との交流の場を提供し続けてきた点を挙げておく。

 そんな『~3tb』勢の努力が実を結び、2017年の定例大会には最低でも20人、多いときは30〜40人の参加を見込めるまでコミニティが成長。さらに全国各地のゲームセンターでも『~3tb』の稼働情報や大会実施情報が聞こえてくるようになり、日に日に各地の盛り上がりも大きくなっていく。世界大会の遠心力は着実に各地に飛び火しはじめた。

 ――時は来た!

 ギチくんにも許可を得て、いよいよ第2回目の世界大会を開催する運びとなる。主催はミカドに変更され、前回同様シングル戦というルールを引き継ぎつつオープントーナメント方式を採用、大会実況はしがらみのないミカドの大会とアピールするため、レジェンドである山岸さんではなく、あえて俺が担当することになった。前回のような『バーチャ』界のオールスター戦的要素や同窓会色はないが、現役の『~3tb』プレイヤーたちによる、現役の『~3tb』プレイヤーのための世界大会として再出発だ。

 開催にあたり協力してくれたSHUくんとの取り決めはネイキッドロフトでの開催を絶対必須としたことだ。アテナ杯から継承した「ゲームセンターとは別会場での対戦」は、いつもと異なる特別感と試合の緊張感を生み、内容に良い影響があると判断したためだ。『餓狼伝説スペシャル』の世界大会同様にキャパオーバーも懸念したが、第2回世界大会に開催するにあたり、ここは妥協できないポイントだった。

 迎えた当日、やはり3年間のプレイヤーたちの進化に目を見張った。「ミカド」に常駐している選手たちは確実に強くなり、多くの番狂わせや名勝負を生み出し、さとやん選手の快進撃は会場を大いに沸かせ、優勝した闇よだれ選手は90年代の彼と同等……いや、それ以上を思わせる強さを見せた。

 2017年、『~3tb』勢の新たなストーリーが遂に幕を上げた。かくしてバーチャファイター3tb世界大会は復活したのだった。

2018年に開催した『バーチャファイター3tb』第3回目の世界大会は、ちび太vs闇よだれ戦にてまさかのデュラル土俵ステージの再再現したほか、前回大会ではあっという間にトーナメントから消えたはずの悟李羅★影助が無敵の強さを誇っていた闇よだれ選手を破り、それを凌駕するハクション選手のラウに見ている人すべてが息を飲むという、史上最大に盛り上がった個人戦大会となったと思う。



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 反省点としては、第3回世界大会もネイキッドロフトでの開催にこだわったため、出場したくても出場できない選手が十数人ほど発生してしまったことだ。『~3tb』のプレイヤー人口は90年代には及ばないものの、2014年の掘り起こし以降、2018年まで着実に増え続けている。

 今後『~3tb』の世界大会をどのような場所や規模で行うのか、2018年末現時点では未定だ。いろんな意味でターニングポイントに差し掛かっているのは明白だが、アテナ杯を牽引した山岸さんが「ゲーセンミカド」に移籍することと併せ、どうか今後の発表に期待して欲しい。



 ――大塚ギチくんの発案から端を発した、バーチャファイター3tbの新たなストーリーは、まだ歩みはじめたばかりだ(完)。

■VF3tb情報サイト「for New Challenger of Virtua Fighter3tb」
https://sites.google.com/view/fornewchallengerofvirtuafighte/home

■Twitter「vf3tb-organization」
https://twitter.com/vf3tb_17th

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