あなたの心に残るスピーチはどんなものですか?
今回は、自分の声に自信がなくて堂々と話すことができないという方の相談をもとに、人の心を動かす話し方について解説させてもらいます。
Q. 自分の声に自信がなく堂々と話すことができません。どうしたらいいでしょうか?
声に関しては気にしすぎているだけの可能性もあります。声というものは人によって全く違うものです。
例えば、アニメの声優さんの声も、日常生活で聞こえてきたら、いい声だと感じないことも少なくないと思います。これもそのキャラクターにその声が乗っかっているので、いい声に聞こえるということです。
ですから、声にそんなにコンプレックスを感じる必要はないと思います。
僕も結構高い声ですから、心理学的には説得力を出すことを考えるとあまり良くない声です。
ですが、普段声が高いので、逆に声のトーンを少し変えると効果が表れやすいということもあります。
このように使い道を変えれば、それが強みになる場合もあるかもしれませんし、声以外の話す内容や論理構造、身振り手振りといった対策もできると思います。
声の使い方は工夫することができますが、声色や声質というものは変えることができないものなので、そのようなことに対しては変にコンプレックスを抱えるよりも、使い道を考えた方がいいと思います。
以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。
人の心を動かす話し方とは?!
歴史に名を残してきた人たちが、民衆や集団を動かすために使っていた大衆扇動でも使えるようなテクニックの中から、今回は話し方のテクニックについてまとめていきたいと思います。
例えば、リンカーンやキング牧師、チャーチルなど歴史を動かしてきた数々の人たちがいます。
リンカーンやチャーチルなど、あるいは、ヒトラーなど、素晴らしいことを成し遂げた人もいれば悪い人もいますが、民衆の動かし方としては驚くぐらい共通点があります。
動かす方向が間違っていたというだけで、例えば、ヒトラーであればユダヤ人の虐殺などを行ってしまい、人道的にも問題ですし悲しい歴史でもあります。
ところが、そこで使われている技術自体は、大衆扇動という考え方ではほとんど同じです。
例えば、以前に流行っていた「#〇〇さんに抗議します」という Twitter のハッシュタグがありますが、これはTwitter を使ったという点では新しいタイプの大衆扇動だとも言えます。
基本的には、みんなが支持しているように見せるというものです。
何百万人がツイートをしているという数字が出ることで、社会的証明によって人を説得しようとするものです。
そういう意味では、非常に古典的なテクニックではあります。
このように時代が変わっても人の心が動く要素というものは変わりませんので、そんな中から、今回は話し方にポイントを絞って紹介させてもらいます。
「シュムージング」
まず1つ目のテクニックとして、シュムージングというテクニックを紹介します。
これを使うと、他人が皆さんのためにお金を使ってくれるということさえもできるテクニックです。
スピーチの中で使うこともできますし、相手が身銭を切ってまで皆さんの味方をしてくれる可能性が上がるかもしれないというテクニックです。
これは他人に影響を与えて味方にする方法として、古くから使われているテクニックで、これは本題を切り出す前に自分のことをネタにした雑談を挟むという会話の手法です。
これを聞くとたいていの人は当たり前ではないのかと思う人が多いのではないでしょうか。
ところが、多くの人がしているのは自分のことをネタにするということではありません。
例えば、最近のニュースや天気、トレンドなど自分とは関係のなさそうなものをまずネタにすることが多いと思います。
ですが、相手を味方にしたいと思うのであれば、一番最初に話すべきは自分をネタにした雑談を挟むべきで、これをシュムージングと呼びます。
これを行うことによって相手の心を相当引き付けることができるということがわかっています。
2002年に行われた研究で、スタンフォード大学の研究チームがシュムージングの効果について確かめることを行ってくれています。
およそ100人の学生に対して、慈善事業に対する寄付を募るということを指示しました。その際に参加者たちを3つのグループに分けて、どのグループが最も効果的に寄付活動を行うことができたのかということを調べています。
いきなり寄付をお願いするメールを送ったグループ
メールの最初に、自分の故郷の話や好きなスポーツチームの話など自分についての雑談を書いた上で、寄付をお願いするメールを書いて送ったグループ
相手に電話で自分の趣味などをテーマにした他愛のない雑談をして、その電話を切った後に、寄付をお願いするメールを送ったグループ
つまり、いきなり本題だけのメールを送ったグループと、そのメールの冒頭に自分についての雑談を書いてからメールを送ったグループ、そして、寄付のお願いをするメールを送る前に、電話をして他愛のない雑談をしていたグループに分けて、どのグループが最も寄付を募ることができたのかということを調べようとしたわけです。
その結果、寄付のお願いのメールをする前に、自分をネタにした雑談(シュムージング)を行なっていたグループは、寄付をもらうことができる確率が20%もアップしていました。
1.2倍も相手の協力を引き出すことに成功していたというわけです。
さらに、メールだけでシュムージングをするよりは、事前に電話をしてシュムージングをしてから、改めてメールで寄付のお願いをするということを行ったグループの方が成功率が高くなっていました。
プラスアルファの条件もつけて実験を行ってくれています。
事前に相手と直接会ってシュムージングを行い、その後に本題をメールで送るというグループも作ったところ、この場合にはさらに寄付金額が高くなったということが分かっています。
大事な話は直接会った時に?
僕たちは、直接会った時に大事な話をしようと考えるのではないでしょうか。大事な話は直接会った時にするようにして、その時に決めようとすると思います。
これはもしかすると間違っているのかもしれないということが、この研究から見えてくることです。
つまり、直接会った時には、皆さんの人となりや皆さんの人格がわかるようなシュムージングを行い、趣味・出身・大切にしていること・好きなブランド・好きな漫画など、他愛のない話だけれど自分に関するネタで相手と共有できる話をしておいて、お願い事は、それが終わってから時間をおいて、当日や翌日にメールで行った方が、むしろ相手は協力的になってくれるかもしれないということがこの研究からわかるわけです。
もちろん、一度目に実際に相手と会った時にシュムージングを行い、その次にもう1度会った時に本題のお願いをするというのが一番いいわけですが、もしそんなに頻繁に会えないとか一度しか会えないと言うのであれば、直接会っている時にお願いをするよりも、実際に会っている時にはシュムージングを行い相手からの信頼を勝ち取っておいて、それから改めてメールなどでお願いする方が印象も良くなるし相手からの協力を得る可能性も高くなるかもしれないということです。
少なくとも、自分に関する他愛のない話を事前に行うだけで、それがメールの冒頭に入れる場合であっても、電話で行う場合であっても、およそ1.2倍ぐらいは相手が協力的になってくれる可能性が上がるわけです。
自分の人格を印象付けることが重要
自分の話をすることが苦手だとか自己開示が苦手な人、世間話や時事ネタについては雑談することができても、自分の趣味の話や好きな女の子の好みなどの話ができない人は、それができる人に比べて20%も相手が協力してくれる可能性が少なくなってしまうということになります。
このように考えると、自分の話をちゃんとすることができるというのはとても大切なことです。
直接会っている時には、自分の人格を相手に印象付けるということを行うようにして、仕事の話やお願い事などはまた次に会った時、あるいは、メールでお願いするぐらいの方が信頼感としては非常に良いということになります。
いきなり本題から入る人や、散々雑談をして盛り上がった後にいきなりスイッチを切り替えて仕事の話をする人がいますが、これは今回の研究から考えると、あまりよろしくはありません。
直接会った時にはシュムージングを行い、次にまた会った時や改めてメールの中でお願いをする方がいいのだろうと思われます。
人は信用した相手の話しか聞かない
このような効果が現れる原因としては、人間というものは信用した相手の話しか聞かないからです。
しかも、この信用というものがどのようにして生まれるのかと言うと、相手の人となりが理解できて、その情報が相手の心にちゃんと響いて処理された上で、記憶になったところで初めて信用というものになります。
ですから、いきなり会ってすぐに人となりなどを話されてもピンとこないけれど、会っている時にいろいろと人となりを話して、それが自分の中で納得できた時に初めてその相手の情報を受け入れるというわけです。
いきなり会って自分をネタにした話や自己開示をして楽しく会話をして、友達のように楽しく盛り上がったとしても、ところで本題なのですがと仕事の話をされて、急に冷めたり結局自分に何か売り込みたいだけだったのかと思うこともあると思います。
このようなことが起きてしまうので、相手が皆さんの情報をちゃんと受け入れるまでは時間を置くようにするか、2回目の約束を取り付ける、あるいは、改めてメールでお願いするようにした方が良いのではないかということがこの研究から示唆されているわけです。
皆さんは、ひとまず初対面の相手と雑談をする時には、自分のことをネタにした話をしたり、出身や趣味でもいいですし、皆さんの人となりがわかるような雑談を取り入れるようにしておきましょう。
その上で、本題の話は後からメールを送るぐらいでも構いませんので、特に一度目はシュムージングで自分の信頼感を高めるということを大切にしましょう。
影響力を高める声の使い方
では、声の使い方や具体的な話にこれから入っていきたいと思います。
影響力が高くなる声のピッチについての研究があります。
相手に対して自分の影響力を与えることができるかどうか、その相手が皆さんの話に興味を持ち影響を受けるかどうかということは、喋り始めの最初の3秒で決まるということがわかっています。
この最初の3秒を意識することによって、かなり説得力の高い会話ができるようにはなります。
2016年にイリノイ大学が191人の男女を集めて行った研究で、他人を自分の意見に賛同させるためには何が必要なのかということを調べてくれています。
全員に対して、月に旅行に行く場合にトラブルに備えて何を持っていくのかというような質問を行い、それを考えた上でディスカッションを行ってもらい、自分がこれを持っていくべきだという考えに対して他人をどれぐらい賛同させることができるのかということを調べたものです。
そのディスカッションの様子を全て動画で撮影して、それぞれの口調や声のピッチの変化などをチェックして、それを音声解析ソフトで解析しました。
つまり、会話の内容ではなく、声のトーンや口調などによって相手が説得に応じる可能性が変わるのかということを調べようとしたわけです。
自分がトラブルに備えてこれを持っていくべきだと考えている自分の主張に対して、多くの人を説得することができる声のトーンや口調というものはどんなものなのかということを調べました。
普通に考えると、話している内容に意味があるのであれば、声のピッチや口調などは関係がないはずです。
つまり、何を持っていくかということ自体が大切で、そこに説得力が関わるというのであれば、話し方による差は出ないはずです。
ところが、実際にはそうではなく、その結果わかったこととしては、最初の1語目から3語目を発する際に声のピッチを大きく落とすことによって、その話の内容に関わらず相手は納得しやすくなるということが確認されています。
話し始めの声のトーンを下げる
つまり、僕たちが相手を説得したいと思い話し始める時には、最初の一瞬でいいので声のトーンを落として話し始めておくと、説得に応じてもらえる可能性が高くなるということです。
最初の1語目から3語目を発する際の声のトーンを大きく落とすということをすることによって、話の内容と関係なく相手が納得しやすくなるというわけです。
この影響度についてそれを正確に測定することは難しいことですが、およそ5%から8%ぐらいは相手に対する影響力が変わるのではないかということがいわれています。
5%から8%と言われると少ないように思う人もいると思いますが、影響力としてはかなり大きいものです。しかも、話し始めの声のトーンを変えるだけでこんなにも変わるわけですから、それであれば使った方がいいということになります。
このような効果が出ることについて、研究チームは、声のトーンが低いことによって、人間はその人に威厳や支配力を感じるからだと言われています。
ですから、声の低い人は基本的には周りに影響を与えやすいわけで、声の高い人はこのような影響力をあまり使えないような気がするかもしれませんが、実際には、話の初めの部分だけ意図的に声のトーンを落とすということをするだけで、相手に対する影響力を高めることができて説得に応じてくれる可能性が高くなります。
話の冒頭の部分だけ声のトーンを意図的に落とすようにしてみてください。
これは普段であれば人と会って最初というよりは、自分が一番相手の心に残したい言葉を言う時には声のトーンを下げるということを意識してみてください。
細かい説明や挨拶は普通にしゃべってもらい、自分が最も言いたいところが決まっているのであれば、その部分の話し始めを声のトーン落として喋るという感じです。
ちなみに、このテクニックをオンライン会議などで使うのであれば、最初の1語目から3語目ぐらい声のトーンを落として、誰よりも最初に言葉を発した方がいいと思います。
例えば、会議やプレゼンの場面であれば、座る位置としては、人は真ん中あたりにいた方が重要人物だと思われやすいということもわかっています。
それと同時に、会議においては一番最初に発言した人が最も重要人物だと思われやすいです。
ですから、オンライン会議の場で使うのであれば、まず最初に発言するようにして、その時の話し始めは声のトーンを落とすようにしてみてください。
会話の速度と影響力
早口が影響力の増加をもたらすのかということについてはメリットとデメリットがあります。
相手に対して行う会話の速度と相手に与える影響力に関する研究というものは結構たくさんありますが、はっきりとした結論はあまり出ていないという状況です。
例えば、1976年にサザンカリフォルニア大学が行った実験を見てみると、1分あたり195語という結構なスピードで話した場合と、1分あたりに102語という半分ぐらいの遅めに話した場合の2パターンを比べたところ、早口の方が情報の信頼性が高いような印象が増えて、結果として相手に対する影響力も上がったということが確認されています。
早口で話すことによって、自信や知性、客観性や知識量が多いという印象が増すということです。
ですから、同じ内容であっても早口で話すことによって、自信があるように見えたり頭が良さそうに思われたり、それが客観的な情報であるように思われるということです。
ただ、これは古い研究なので、1990年代になるとこの結果は一度覆っています。
早口のデメリットも出ていて、例えば、1991年にジョージア大学が行った実験を見てみると、学生たちに対して2種類のメッセージを伝えるということを行っています。
学生たちに対して、21歳を超えるまではアルコールを飲んではいけないという発言と、21歳を超えるまでアルコールを飲んではいけないというのはおかしいという正反対の2つの発言を学生たちに伝えました。
その際に学生たちには2種類のスピードでメッセージを伝えています。
1分あたり144語という少し遅い話し方で伝えた場合と、1分あたりに214語というかなりのスピードの早口で伝えた場合で、学生たちがどれだけそのメッセージを受け入れるのかということを調べました。
つまり、基本的には学生たちは早くお酒を飲みたいわけで、どちらの話し方の方が、学生たちがお酒は21歳までは飲んでは駄目だと受け入れる確率が高くなるのかということを調べようとしたわけです。
その結果わかったこととしては、元々の自分の考えと反するメッセージを伝えられた場合には、早口の方が相手に影響力を与えやすかったということです。
一方で、遅い話し方の場合は説得力が低下するということです。
要するに、この実験では、早くお酒を飲みたいと思っている学生に対して、21歳まではお酒を飲むべきではないということをゆっくり話してしまうと、むしろ反対されたということです。
逆に、そんな学生たちに対して同じ内容でも早口で伝えると、それに納得してくれる確率が高くなったということです。
つまり、僕たちが早口で伝えた方がいいことは、その内容を相手が知らない場合や、相手が自分がこれから伝えようとしている内容に反対しているということがわかっている場合で、そのような場合には早口で喋った方が説得力は上がります。
一方で、こちらが伝えようとしている内容を既に相手が知っているという場合や、納得してくれるということが確実だという場合には、ゆっくりと喋った方が相手からの賛同を得る確率が高くなるということです。
要するに、味方にはゆっくりはっきりと喋ってください。敵もしくは新しい相手に対しては早口でよどみなく喋ってください。
自分の考え方に合っているメッセージを伝えられた場合は、遅い話し方の方が相手に対する影響力を与えやすいということです。早口で伝えようとすると説得力は下がります。
逆に、自分の考えとは違う、あるいは新しいメッセージを伝える場合には、早口で伝えた方が影響力を与えやすく、ゆっくりと喋ると説得力は下がります。
なぜこのような効果が起きるのかということについては、自分が気に入らない考えや自分にとって都合が悪い情報をゆっくりとしたスピードでコンコンと伝えられると、その間に自分を正当化する余裕を相手に与えてしまいます。
つまり、喋っている間に相手に反論する余地を与えてしまいます。その結果として影響力が低下するということです。
一方で、早口で喋られるとそれについていくので精一杯になるので、その結果として相手から反論しようという感覚がなくなってしまうということです。
このように考えると、早口の人は敵や知らない人に対しての説得には向いています。
ところが仲間内での会話となるとデメリットが多い場合もありますので、話すスピードは使い分けるようにしたほうがいいです。
このようなことを歴史を動かしたような偉人たちは当たり前のように使っていました。
自分に賛同してくれる信頼できる人たちと、一対多数で民衆に向けて喋る時では、話すスピードも使い分けていたわけです。
ここから先は、さらに相手やオーディエンスを話を聞く気にさせて、説得に応じやすくさせたり心を動かすための方法について解説していきます。
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