あなたが、もっと心の内側に入っていきたい人は誰ですか?
今回は、結婚する予定の彼女がコロナの最前線で疲弊していることについての相談をもとに、相手との信頼関係を築くための傾聴のトレーニングについて解説させてもらいます。
Q. コロナの最前線で頑張っている彼女が疲弊して、最近思考がとてもネガティブで自分の価値を下げるような発言が多く不安定です。結婚する予定ですが彼氏としてどのように立ち回ればいいのでしょうか?
コロナで極限の状態にいて、ずっと仕事を強制されているという状態になれば、忙しすぎてどうしてもメンタルは病んできます。
このような場合には変にこちらから何かを求めるのではなく、相手の気持ちをただ聞き出してその感情にタイトルをつけるというテクニックがいいと思います。
いわゆる傾聴と呼ばれるテクニックですが、これは FBI でテロリストとの交渉にも使われるようなテクニックです。
激高しているテロリストと交渉するネゴシエーターは、交渉する時にまずは相手の話をひたすら聞きます。
例えば、相手が今仕事が大変で、このまま仕事を続けることができるかどうかも不安だし、自分は結婚相手としてふさわしいか、わからなくなってきたというようなことを話したとしたら、そんなことはないと否定するのではなく、その内容に対して同調するのでもなく、相手のその感情を寄り添って一緒に解釈するようにしてください。
一緒になって相手が感じている感情には違う視点もあるのではないのかということを紐解いていきます。
相手の感情を否定するのではなく、一緒になって紐解いていくというスタイルで話を聞いてあげてください。
寄り添って相手が思っている感情を言葉にさせてあげると、人間は自分の感情を言葉にすればするほどメンタルが安定してきます。
できるだけ細かく相手の話に対して質問して、その感情を感じた時のストーリーや理由を聞いてあげてください。
以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。
【傾聴】聞く力は人生を変える力
傾聴のテクニックは、自分の意見を通したり相手の態度を変えたりすることもできますが、今回の相談者の方のように、悩みを抱えている人や苦しい状況にある人、あるいは、トラウマを抱えているような人に対しても使えるものです。
交渉する時にも、相手を理解したり信頼関係を作る時にも、そして、大切な人のメンタルを安定させるためにも、広く使うことができるテクニックが傾聴です。
傾聴にまつわる心理学については、以前に一問一答でも解説させてもらったことがあります。
一問一答「人に誤解されやすくて困っています」〜傾聴の心理学〜
一問一答「あなたは人の行動を変えられると思いますか?!」【聞き上手の力】
相手に態度を変えてもらいたいとか、何かの交渉をしたいとなると、例えば、10の時間があったとしたら、そのうちの8を自分の言いたいことを言うために使ってしまう人が多いと思います。
これは大きな間違いで、まず最初に8は相手の話をじっくりと聞いて信頼関係を築く必要があります。
しっかりと信頼関係がそこまでにできていれば、残りの2で自分の言いたいことはすんなりと通ります。
4つの傾聴の基本的なテクニック
傾聴の基本的なテクニックとしてだけでも4つもあります。
まずはポイントだけをまとめておきます。
その1:口出し・反論・評価は禁止
相手の話に対して、口出しをしたり否定的な意見を言うことも、良いとも悪いともそれを評価することも一切しません。
その2:短く定期的に頷く
相手が同意を求めてきたり息継ぎをしているタイミングに合わせて短く頷くようにします。
その3:相手の発言をコンパクトにまとめる
相手の情報をコンパクトにまとめるわけですが、その際には「要するに・・・」「つまりは・・・」というような言葉でまとめてはいけません。
あくまで相手の発言を自分が正しく理解することができているかという確認をする意味で内容をまとめて伺います。
その4:手短な質問を繰り返す
時々、手短な質問を繰り返して相手に話を聞いているということを伝えるようにします。
相手がそれまで話した内容に対して、自分の素朴な疑問を短い質問で投げかけるような感じです。
ここで質問する内容は自分がわからないことではなく、相手が話したいであろうことにしてください。
相手が何となくもう少し話したそうにしていた部分に触れると話が広がりやすくなります。
聞き上手で人生を変える
聞き上手な人は、それだけで相手のモチベーションを高めることもできますし、色々な情報を周りから教えてもらえるというメリットもあります。
この情報を周りから教えてもらえるというところが結構大切なポイントで、今の世の中では様々な情報が溢れています。
この情報が溢れた世界では、情報というものは、情報の質と鮮度が重要になります。
そんな状況の中で、一番いい情報を手に入れることができる人は聞き上手な人でもあります。
さらに、人間は自分の話を聞いてもらうことで脳が興奮するということもあります。
実際に、人間が相手に話を聞いてもらっている時に脳がどんな反応をするのかチェックした研究があり、それによると、脳の報酬系と呼ばれるところが話を聞いてもらっている時には活性化していたそうです。
報酬系は僕たちがご褒美をもらったりした時に反応する部分で、話を楽しそうに聞いてもらっていた間は、そこが強く反応していたということです。
人間が楽しく話を聞いてもらっている時の脳のその活動は、現金をもらった時やおいしいご飯を食べている時と同じような活動を示しているとされています。
ですから、一生懸命楽しい話をしようとしたり、会話を盛り上げようと努力する人もいるでしょうが、そんな労力をかけなくても、聞き上手になるだけで、相手に現金を渡したり美味しい食事を一緒にした時と同じぐらい脳のレベルでは相手に快感を作り出すことができるわけです。
その結果、話を聞くだけで相手の考え方や意見を変えたり、相手を自分の味方にすることができます。
聞き上手になるためのおすすめ本
聞き上手になるための、おすすめの本を紹介しておきます。
質問することによって、人間の心を動かすこともできますし、読むこともできます。
これを上手に応用すれば、相手の行動を変えるだけではなく人間関係を良好にするためにも役に立ちますし、皆さんが相手に裏切られないかということを予測することもできるようになります。
相手の話を聞くのが苦手だという人も多いと思いますが、相手の話に興味を持って聞くというのはそれだけで瞑想のようなトレーニングにもなります。
マインドフル・リスニングという瞑想のようなスタイルで相手の話に集中するという方法があり、それについて学ぶのであればこちらの本がとても参考になります。
ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] マインドフル・リスニング (ハーバード・ビジネス・レビュー EIシリーズ)
相手の話にマインドフルになるという意味では、こちらも参考になると思います。
マインドフルな男性は仕事ができるようになるしモテるようになるという研究もあります。そんなマインドフルネスの基本について理解できると思います。
人に頼み事をするのが苦手だという人も多いと思います。
聞き上手な人は、相手の話をじっくり聞いて心の中に入ってから提案します。
それによって、相手は素直にその提案を受け入れてくれます。
人間は誰かに頼まれたことをしたりお願いを聞くとその相手に好かれるだろうと思いがちですし、断ると嫌われるのではないかと思いがちですが、実際にはそんなことはありません。
心理学的には誰かの頼みを聞くよりも、誰かに頼みごとをした方が好意を持たれやすいということがわかっています。
人間は助けてくれた人ではなく、助けた相手を好きになる性質があります。ですから、人を上手に動かすためにも、周りの人に助けてもらうということが大切です。
そのための方法はこちらが参考になると思います。
人に提案したりお願い事をするのが苦手だという人には、ぜひ読んでもらいたい本です。
頼み事が上手くなるというのは人間関係が上手くなるということです。
職場の仲間や部下だけでなく、取引先に対しても聞き上手になることで大きなメリットを引き出すこともできます。
自分の意見を押し付けたりするのではなく、相手が自分で答えを出す質問の仕方と話の聞き方としては、こちらの本がとても参考になると思います。
謙虚なコンサルティング ― クライアントにとって「本当の支援」とは何か
傾聴力を高める7つのトレーニング
傾聴のテクニックを使って相手の話を聞くことで、相手のメンタルを安定させたり信頼関係を築くことができるとわかっていても、ついつい自分の言いたいことばかりを言ってしまうことがある人も結構いるのではないでしょうか?
傾聴力を高めるための7つのトレーニングについて解説しておきます。
トレーニングその1 :話を譲る
もし、相手と同時に話をし始めた時には、必ず自分が譲るようにしてください。
相手が譲ってきたとしても、絶対に自分からは話さないでください。
これが重要なポイントで、これを習慣にしておくだけでも、自分から話したいという欲求を抑えるトレーニングにもなります。
さらに、同時に話を始めた時はチャンスです。
相手は譲ってくれたという感覚を持ってくれますし、相手の話が終わった後には必ずこちらの話も聞いてくれるようになります。
話を譲るというのはとても重要なポイントです。
話がかぶった時だけでなく、自分が話している時に誰かが割って入ってくることもあると思いますが、その時も必ず譲ってください。
話したい様子の人がいたり、話に割って入ってきたら全て譲ってください。
常に譲っていれば、必ず最後に皆さんが話す順番になります。
その時には周りの人たちは皆さんの話を聞く姿勢になっていますので、ここで話すと心に刺さります。
人が話したいのを抑えて自分が話すことを貫く人もいますが、自分は話すことができて気分がいいかもしれません。
ですが、相手は自分が話したいわけですから、話の内容は全く入ってこないわけです。
話に割って入ってきたりされるとイラっとくることもあるでしょうが、すべて傾聴のトレーニングだと考えてください。
トレーニングその2 :答えがわかっていても待つ
相手が話していて、途中で話に詰まったり言葉が出なかったりすることもあると思います。
相手が思い出そうと考えている時に、答えを思いついたからとすぐに言ってしまう人が多いですが、この時も、相手の台詞を引き取って終わらせてはいけません。
相手が覚えているかと質問してきた時には答えてもいいですが、聞かれてもいないのに自分が言って話を奪ってはいけないということです。
もし、相手が話に口ごもって会話に緊張感が生まれたり会話が進まなくなった場合には、沈黙を恐れて話したくなることもあるでしょうが、この時も、相手が考えている時の沈黙を自分の言葉で埋めることは絶対にしないでください。
相手が一生懸命考えている時に自分が口を出すと、それは相手の発言ではなく自分の発言になってしまいます。
人間は自分の話をたくさん聞いてもらったと感じるから、返報性の原理で、逆に相手の話も聞く気になります。
相手が一生懸命考えて思い出そうとしている時には相手から注意をそらさず、じっくりと一緒に待ってあげてください。
皆さんが話す時に、言葉に詰まったり思い出せない時もあると思います。
皆さんが先に相手が考えるのをじっくり待つ姿勢を貫いていれば、皆さんが話す場面で言葉に詰まっても相手は待ってくれます。
相手が言葉に詰まった時も、それは傾聴のトレーニングのためのチャンスだと考えてください。
そこでじっくりと慌てず待つことで、相手との信頼関係を築くことにも繋がります。
そして、これによって相手が「この人はじっくりと話を聞いてくれるし、もし言葉に詰まっても待ってくれる人だ」と感じるようになってくれると、それが交渉の場面であっても、会話が敵対的な方向に進むことはまずありません。
それが初対面の人であっても、難しい交渉の相手であっても、最初にじっくりと相手の話を聞いて、「この人は自分の話を聞いてくれる人だ」という印象を与えることができれば、その後からどうとでもなります。
多くの人は序盤から自分の話をして結論を出そうとしますが、信頼関係のためには下地づくりが欠かせません。
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