Denchubin のコメント

 1942年5月「日本文学報国会」が誕生し、詩部門の部会長は高村光太郎でした(孫崎さんの『日米開戦の正体』p.432)。欧米に留学体験があり近代精神を体得していたはずの光太郎が戦時中は戦争協力していました(ほとんどすべての文学者がそうであったように)が、敗戦後の自己批判の苛烈さで光太郎は際だっています。なぜ自分が戦争協力に導かれたのかを一連の詩(『暗愚小伝』)で解明しようとしたのです。それは一言で言えば、「天皇あやうし」という臣民意識でした。
 そして自己批判の徹底から、戦後の民主主義が与えられたもので、本当に日本人民の手で勝ち取ったものでない軽薄さに気づいていました。
 私は学生時代以来40年ぶりくらいに8・30国会包囲抗議集会に地方から参加しましたが、その時思い出したのが、「結果を思って行動するのは卑しい」という光太郎の詩の一節でした。強行採決されるのはほぼ決まっていたけれども、それでも抗議の声を挙げなければならないという気持ちでした。そしてハンストする学生達やシールズを実際に見て、この国の若い人たちが民主主義を本当に実現するために立ち上がっているという実感をもったのです。「いきいきした新しい世界を命にかけてしんから望んだ さういふ自力」が生まれているという実感。
 冷笑する人も多いだろうと思いますが、私は「そういふ自力」に加担して行きたいと思っています。 

No.1 111ヶ月前

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