名を正す のコメント

今回、自民が提出している安保法案を阻止する上で一番悩ましいのは、これは国内議論だけで阻止できることではないという点にある。最大の障壁は、政府代表として、すでに安倍首相が法案の成立を米国と約束してしまっていることだ。これは非常に重い。国内世論では、先に米国と約束するのはけしからんと言う感情的反発になっているだけで、このこと自身の重大さを問わないでいる。こんなことはありえないだろうが、たとえ政府が自らの誤りに気づいて法案の白紙撤回をしようとしたとしても、米国がそれを認めるかどうかだ。至難の業と言えるだろう。ただし、絶対に不可能ではない。再度現行憲法を盾にして、総辞職も覚悟して、この法案の不当性を米国だけでなく、世界中に訴えるということだ。
もちろん、日米関係は急速に冷えるだろう。しかし、その時こそ、日本がアメリカの属国という鎖から解放されるターニングポイントになる。
しかし、残念ながら現実には、太陽が西から出ても、現政府がそんな自己矛盾の行動をするはずがない。ということは、安倍首相がアメリカで約束した時点で、国内のいかなる反対や混乱や軋轢があろうとも、法案は成立したに等しい。この意味で、彼は見事な確信犯である。アベノミクスがもはや後戻りできないのと同様、安保法制も後戻りできない。昨年末の選挙中、彼が何度も「この道しかない」と連呼したのを思い出す。彼の大好きな「この道」にいやでも付き合わされる。「この道」の意味を見逃したのはマスコミであり、識者であり、国民である。油断していると、ほんのささいなことから破たんが始まる。
次の選挙、次の次の選挙、少なくとも10年間、国民は彼の背信行為を覚えていられるであろうか。世界有数の忘却能力を持つ国民には難しいことかもしれない。また、たとえ新たな政権ができたとしても、安保法制を変更できるかも大いに疑問である。しかし、反対することは決して無駄なことではない。我々は正当な反対の意思表示を出来るだけ多く示し、希望を次世代、次々世代につなげていく義務がある。これしかない。

No.2 114ヶ月前

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