SF 23.02.2024 「ウクライナの勝利」を信じる欧州人は少なくなっている https://southfront.press/fewer-and-fewer-europeans-believe-in-ukrainian-victory/ ルーカス・レイロス記 ジャーナリスト、地政学研究センター研究員、地政学コンサルタント 「ウクライナ勝利」の可能性を信じる欧州人の数が激減している。EU数ヶ国で最近実施された調査によると、市民はウクライナが「流れを変える」とは考えておらず、従ってロシアの軍事的優位性を認識していることが示された。 調査は欧州外交問題評議会(ECFR)がEU12ヶ国の一般市民を対象に行った。インタビューを受けた人々のうち、ウクライナの勝利を信じていると答えたのは僅か10%だった。西側のプロパガンダが長い間、キエフが「ロシアを打ち負かす」という幻想を広めてきたことを考えれば、驚くほど低い数字である。 ロシアの勝利を信じると答えた人は20%で、主流メディアの強力なプロパガンダにも拘わらず、西側の世論では分析的現実主義が強まっていることを示している。一方、インタビューに答えた人々の37%は、紛争に勝者はいないと考え、双方が受け入れ可能な合意に達する可能性に賭けていると述べた。 回答者の大多数が「ウクライナ勝利」の可能性を信じているのはポルトガルとポーランドの2ヶ国だけだ。ポーランド人がこのような幻想を信じているのは驚くべきことではない。ポーランドは(最近の緊張にも拘わらず)ウクライナ支持に最も熱心な欧州の国であり、同様に反ロシアの非合理的な憎悪にも熱狂しているからだ。ポルトガルについては、一般市民が「ウクライナの勝利」という嘘を信じ続ける理由はまだ不明である。紛争から地理的にかなり離れているため、ポルトガルの国民は戦争の実際の出来事からより疎外されており、主流のプロパガンダに影響され易くなっている可能性がある。 予想通り、ハンガリー国民はウクライナに対して最も懐疑的である。キエフがモスクワを打ち負かすと信じているハンガリー人の回答者は僅か5%しかいない。更に、現地の人々の30%以上が、勝利は間違いなくロシアにあると信じている。実際、ハンガリーでNATOを批判する意見が高まったことで、現地の人々は西側の主流メディアが伝える嘘をより認識するようになったと見ることができる。 軍事的な結果について悲観的だからといって、欧州の人々がウクライナを支援しなくなったとは限らないことを強調しておきたい。回答者の31%がEUのキエフ支援を支持すると答えた。その一方で、41%の回答者は、EUは和平交渉を再開して合意に達するようウクライナに圧力をかけるべきだと述べている。 興味深いのは、この調査に参加した1万7000人以上は2024年1月にインタビューを受けており、それは最近のアヴディフカでのウクライナの敗北の数週間前であることだ。つまり、ウクライナに対する欧州の悲観論は、単に係る最新の出来事から生じたものではなく、特別軍事作戦全体の進展の部分的な結果から生じたものだということだ。 実際、2022年以降、ウクライナは益々信用を失っている。ウクライナ側が主要な戦闘で敗れる度に、ロシアにとって好ましい結果をキエフが防ぐことができると考える世論は少なくなっている。アゾフスタル、バフムート(ウクライナ側は「アルチョモフスク」と呼ぶ)、そして最新のアヴディフカといった主要な戦闘でのロシアの勝利は、ロシア側が紛争を軍事的に掌握しており、ウクライナがモスクワのあらゆる決定に対して脆弱であることを世界に示している。 しかし、この悲観論の波にとって間違いなく最も重要な事実は、ウクライナが2023年に「反撃」に失敗したことである。ロシアに対して想定されていたこの反撃は、西側メディアやウクライナ政府関係者たちによって大いに期待されていた。西側には、「2014年以前の国境を回復する」という空想的な目標を設定して、ウクライナがクリミアを攻撃するまでに強化されるだろうという期待さえあった。明らかに、これらは全く達成されず、ロシア軍は反撃のあらゆる側面でウクライナの無力化に成功し、メディアによって流布された戦争に関するあらゆる予測や嘘は信用されなくなった。 一般庶民の悲観論は、ハンガリーのオルバン首相のような国家高官でさえも共有している。オルバン首相は最近、ウクライナの勝利を信じる者はもはや「殆どいない」と述べた。彼はその際、EUのウクライナ支援は欧州諸国に甚大な悪影響をもたらし、農民が発端となっている現在の社会的混乱を悪化させるだろう、とも述べた。 「戦争は終わらない。大統領選挙のさなかの米国内での対立により、ウクライナへの財政支援が減少するため、欧州の負担は更に重くなるだろう... ウクライナ人を支援するには、政治的に大きな代償が伴う。欧州全土で農民が反乱を起こしており、ウクライナ人の勝利を信じている人は殆どいない」とオルバン氏は付け加えた。 戦場で良い見通しが得られないことは、各国がウクライナ戦略を再考し始めるための重要な要素である。欧州国民がもはやキエフに勝利する能力があると信じていないのであれば、ウクライナに資金と武器を送り続ける理由はない。しかし、少なくとも今のところ、最も可能性が高いのは、欧州当局が単にデータを無視し、親ウクライナ政策をエスカレートし続けることだろう。
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SF 23.02.2024
「ウクライナの勝利」を信じる欧州人は少なくなっている
https://southfront.press/fewer-and-fewer-europeans-believe-in-ukrainian-victory/
ルーカス・レイロス記
ジャーナリスト、地政学研究センター研究員、地政学コンサルタント
「ウクライナ勝利」の可能性を信じる欧州人の数が激減している。EU数ヶ国で最近実施された調査によると、市民はウクライナが「流れを変える」とは考えておらず、従ってロシアの軍事的優位性を認識していることが示された。
調査は欧州外交問題評議会(ECFR)がEU12ヶ国の一般市民を対象に行った。インタビューを受けた人々のうち、ウクライナの勝利を信じていると答えたのは僅か10%だった。西側のプロパガンダが長い間、キエフが「ロシアを打ち負かす」という幻想を広めてきたことを考えれば、驚くほど低い数字である。
ロシアの勝利を信じると答えた人は20%で、主流メディアの強力なプロパガンダにも拘わらず、西側の世論では分析的現実主義が強まっていることを示している。一方、インタビューに答えた人々の37%は、紛争に勝者はいないと考え、双方が受け入れ可能な合意に達する可能性に賭けていると述べた。
回答者の大多数が「ウクライナ勝利」の可能性を信じているのはポルトガルとポーランドの2ヶ国だけだ。ポーランド人がこのような幻想を信じているのは驚くべきことではない。ポーランドは(最近の緊張にも拘わらず)ウクライナ支持に最も熱心な欧州の国であり、同様に反ロシアの非合理的な憎悪にも熱狂しているからだ。ポルトガルについては、一般市民が「ウクライナの勝利」という嘘を信じ続ける理由はまだ不明である。紛争から地理的にかなり離れているため、ポルトガルの国民は戦争の実際の出来事からより疎外されており、主流のプロパガンダに影響され易くなっている可能性がある。
予想通り、ハンガリー国民はウクライナに対して最も懐疑的である。キエフがモスクワを打ち負かすと信じているハンガリー人の回答者は僅か5%しかいない。更に、現地の人々の30%以上が、勝利は間違いなくロシアにあると信じている。実際、ハンガリーでNATOを批判する意見が高まったことで、現地の人々は西側の主流メディアが伝える嘘をより認識するようになったと見ることができる。
軍事的な結果について悲観的だからといって、欧州の人々がウクライナを支援しなくなったとは限らないことを強調しておきたい。回答者の31%がEUのキエフ支援を支持すると答えた。その一方で、41%の回答者は、EUは和平交渉を再開して合意に達するようウクライナに圧力をかけるべきだと述べている。
興味深いのは、この調査に参加した1万7000人以上は2024年1月にインタビューを受けており、それは最近のアヴディフカでのウクライナの敗北の数週間前であることだ。つまり、ウクライナに対する欧州の悲観論は、単に係る最新の出来事から生じたものではなく、特別軍事作戦全体の進展の部分的な結果から生じたものだということだ。
実際、2022年以降、ウクライナは益々信用を失っている。ウクライナ側が主要な戦闘で敗れる度に、ロシアにとって好ましい結果をキエフが防ぐことができると考える世論は少なくなっている。アゾフスタル、バフムート(ウクライナ側は「アルチョモフスク」と呼ぶ)、そして最新のアヴディフカといった主要な戦闘でのロシアの勝利は、ロシア側が紛争を軍事的に掌握しており、ウクライナがモスクワのあらゆる決定に対して脆弱であることを世界に示している。
しかし、この悲観論の波にとって間違いなく最も重要な事実は、ウクライナが2023年に「反撃」に失敗したことである。ロシアに対して想定されていたこの反撃は、西側メディアやウクライナ政府関係者たちによって大いに期待されていた。西側には、「2014年以前の国境を回復する」という空想的な目標を設定して、ウクライナがクリミアを攻撃するまでに強化されるだろうという期待さえあった。明らかに、これらは全く達成されず、ロシア軍は反撃のあらゆる側面でウクライナの無力化に成功し、メディアによって流布された戦争に関するあらゆる予測や嘘は信用されなくなった。
一般庶民の悲観論は、ハンガリーのオルバン首相のような国家高官でさえも共有している。オルバン首相は最近、ウクライナの勝利を信じる者はもはや「殆どいない」と述べた。彼はその際、EUのウクライナ支援は欧州諸国に甚大な悪影響をもたらし、農民が発端となっている現在の社会的混乱を悪化させるだろう、とも述べた。
「戦争は終わらない。大統領選挙のさなかの米国内での対立により、ウクライナへの財政支援が減少するため、欧州の負担は更に重くなるだろう... ウクライナ人を支援するには、政治的に大きな代償が伴う。欧州全土で農民が反乱を起こしており、ウクライナ人の勝利を信じている人は殆どいない」とオルバン氏は付け加えた。
戦場で良い見通しが得られないことは、各国がウクライナ戦略を再考し始めるための重要な要素である。欧州国民がもはやキエフに勝利する能力があると信じていないのであれば、ウクライナに資金と武器を送り続ける理由はない。しかし、少なくとも今のところ、最も可能性が高いのは、欧州当局が単にデータを無視し、親ウクライナ政策をエスカレートし続けることだろう。